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9 知らなかったら転生即また転生

 ――ところで、

 この世界には、中世ファンタジーのくせに、どうみても電子音にしか聞こえない“祈りの楽器”がある。

 サイリウムそっくりなマジックアイテムも、何故か再利用不可能な形で大量生産されている。


 不自然すぎる。

 魔術によるクラフトとしては成立するのかもしれない。

 だが、この世界の文化史という文脈で見れば、そこには明らかな“連続性の欠落(ミッシングリンク)”が存在している。


 そう思った私は、神殿書庫の禁書エリア――ダンジョン地下十階までソロで踏破して、この世界の歴史を紐解いた。


 そこで私は“ある叙述詩”を見つけた。


 かつてタッカーシという楽聖ありけり。

 異界の祈りを音に織り、地に響かせし者なり。

 四十八の巫女を娶りて神託を紡ぎしが――

 神の怒り、天より降りて劫火に焼かる。


 いた。

 やっぱりいたよ、タカシが。

 ぜったいどこかに転生者がいると思った。 

 で、ビンゴ。


 新人編集者じゃなかった。

 この世界を歪めていた特異点は。

 ごめん創造主、冤罪だった(てか出戻り実力派作家に2年目の新人編集者なんて付かないし)。


 で、前後の記述と私の推理力とを総合すると、こうだ。


 タカシという平成後期の地下ドルPが、メジャーデビュー直前にセンテンススプリングを食らってトラックで異世界行き。

 エルフの巫女グループをプロデュースしてハーレム構築したら教会の逆鱗に触れて火炙り。


 おそらく、“タカシが構築した偶像崇拝システムを独占するために”教会がタカシを謀殺したのだろう。

 そして、タカシの遺産はそのまま国家システムに組み込まれた。

 世界観が、現地仕様にアップデートされるかたちで。


 ちなみにタカシと四十八人の神殿巫女たちとの間に生まれた子どもの一人は、王家に嫁いでいた。

 現国王の正妻として。

 


 ――つまり、あのアホ王太子の母親の父親が、タカシってコトぉ!?


 この世界の真実を知ったとき、禁書庫で思わず叫んでしまった。


 私、あやうく転生ハーレムの直系三代目と結婚させられるところだったの?

 冗談きっつ。



 ――もはや、一億総異世界転生時代。


 トラックで、教室の魔法陣で、MMOのサ終で、女神のミスで、過労死で、病死で、老衰で。

 いつどこで転生することになるかわからない。

 そんな現代日本に生きる諸君らに声を大にして言いたい。


 目立つな。

 そして、調子に乗るな。


 戦闘チートじゃないやつは、現地人に殺される。

 タカシみたいに。


 そして戦闘チート持ちであっても、安心してはいけない。

 すでに大抵の世界には“先客”がいるからだ。


 想像してみてほしい。

 異世界でハーレム作ってぬくぬくキャッキャしてたら、ある日“新しい転生者”が現れる。

 はい、開戦。


 既得権益を守るための、仁義なき戦いの始まり。

 どこから寝首をかかれるか分からない、チート持ち同士のSAN値直葬の消耗戦。



 ちなみに私は、まだ誰も殺していない。

 今回の転生が“主人格としての初回”だからね。


 ただ、前回の転生(そのときの私は女海賊のサブ人格だった)で知り合った“ある転生者”の言葉を、紹介しておく。


「転生者ってさ、どうせ死んでも次があるかもじゃん?

 それに転生ライフなんてそもそもロスタイムみたいなもんだと思えば、一般人撃つより気軽に引き金引けるんだよね〜」


 ……ゆめゆめ油断なきよう。


 ちなみにコイツは一般人相手にも気軽に引き金を引いていたからね?

 お洒落カフェのバイト店員が誕生日客に向かってクラッカーの紐を引っ張るくらいの気軽さで。

 こんなやつがゴロゴロしてる。


 嘘みたいだろ?

 これが異世界転生の最前線なんだぜ。


 ――たぶん、君の番もそう遠くない。


(ミリエリス・アルフェリード著「知らなかったら転生即また転生!~初心者のための最新異世界転生事情~」より)

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