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饗の器   作者: 鳳龍麒亀
第二章

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器と記憶 ②

土色の器。少し歪な輪郭。

まるで、大地を掬い取って焼いたような土器風の鉢に、

銀杏の黄金色が沈むように並べられていた。


「これは、“記憶の食材”です」と鷹野が語る。


「銀杏、里芋、干し椎茸。

 すべて、保存され、記憶され、

 いったん“眠った”ものばかり。

 でも、時間が経つほど味が深くなる。

 記憶と似ていますよね」


神谷は箸をとった。

ほろりとほどける里芋に、椎茸出汁の陰影。

銀杏は、噛むたびにわずかに苦みが滲む。


懐かしさが、言葉になる前に喉をつまらせた。


「この器は、“土還どかん”という名がついています」

美咲が、そっと補足する。


「信楽の職人が、裏山の崖土を使って焼いたもの。

 ほとんど釉薬は使わず、

 土の“記憶”をそのまま残す焼き方なんです」


神谷は器を裏返す。

ザラついた質感。釉薬のひび。

微かに土の香りすら残っている気がした。


「焼きムラも、変形も、この器では“意図”なんです。

 過去に刻まれた傷や揺らぎを否定しない。

 だからこそ、料理が“物語”になる」


美咲の声は、まるで土の中から語りかけるようだった。



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