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饗の器   作者: 鳳龍麒亀
第二章

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器に宿る余白 ③

美咲が、瑠璃の椀に指を添える。


「この椀は、“空”を写すように作られています。

 京都・修学院の陶工、野見山碧堂の作」


神谷は器をそっと手に取る。底にかけて濃くなる藍の色が、確かに空の深度を感じさせる。


「この瑠璃色には“”があるんです。

 完璧な発色を避け、ほんのわずかに

 鉄分の濁りを残している。

 それが、味を引き立てる“余白”になる」


「器に、余白…?」


「ええ。“完成されたもの”には、誰も触れられません。

 でも、ほんの少しの隙があると、人はそこに自分の感情や記憶を重ねる。

 器が語りかけてくるのは、むしろ沈黙の部分なんです」


神谷は、一瞬、息を呑んだ。

合理性の中にいなかった「余白」という概念が、自分のどこか深いところで響いていた。


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