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器に宿る余白 ②
木の芽が添えられた湯気立つ椀が、そっと置かれる。蓋を取った瞬間、微かに立ち上る蕗の薹の苦みと、白味噌のやわらかな甘み。
「春は、甘みと苦みが出逢う季節です」
そう言って、鷹野が静かに一礼する。
神谷は一口、椀の中身を口に含む。
ふわりと広がる湯葉の淡さの中に、蕗の薹が鋭い輪郭を刻む。百合根は、まるで舌に雪が溶けるようだった。
「これは……」
言葉が続かない。
「“苦み”を、こんなに優しく感じたのは初めてです」
鷹野はわずかに口角を上げた。
「苦味を避ける人は多い。けれど、
春という季節は、寒さの残り香を抱えたまま
次へ向かう“揺らぎ”の中にあります」
「味もまた、季節とともに“移ろい”なんですね…」




