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砂漠の聖都  作者: 神代奈々
第3章 旅立ち
36/37

フドゥマ使い



 カンッ。キンッ。


 

 アリフは毎日のように、レイフに稽古をつけてもらっていた。



「よし。休憩にしよう」


「……はい」



 乱れる息を整え、深呼吸して水を飲んだ。



 祭祀宮の裏庭。

 庭と呼べるほど手入れはされていないが、稽古にはちょうどよかった。




「……ダール様は、また王に謁見を? 」


「ああ。官吏たちとも話し合いをしている」



(大変そうだな……)



 ふと、空を影が横切った。




「あ……鳥。ブーマかな」


「……いや。フドゥマだが、ブーマじゃないな」



 鳥は弧を描き、外れにある塔のてっぺんへ向かっていった。




「……ラスールだ」


「ラスール? 」


「フドゥマ使いだよ。アナ・ラーハ様の弟だ」


「それ、何? 」


「フドゥマを伝書鳥として訓練する人のことだよ。行ってみよう」



 フドゥマは、王城のあちこちで使われている。

 だが、訓練している者は限られている。


 レイフは、アリフを塔へ連れて行った。

 裏庭から入れる入り口があり、螺旋階段を上っていった。



「ラスール、いるかい? 突然すまない。レイフだ」


 コツコツとノックしながらレイフは言った。



 ……ゴツッ、ガサゴソ。

 部屋の中で物音がした。



「え、レイフ……? ほんとに……? 」


 呟き声が聞こえて、ガチャッとドアが開いた。



 クセの強いボサボサ髪をひとつにまとめた、ひょろっと背の高い男だった。

 丸い目をさらに見開いている。



「ああ……レイフだ。あ、そうか。帰ってくるって言ってたっけ」


 

「久しぶりだな。挨拶が遅れて悪かった」



「そんな、いいよ。そんなことは。……えっと、こちらは? 」



「アリフだよ。アナ・ラーハ様から聞いてないか」



「え、ああ。そうだった。そうか、この子が……」



「アリフです」



「ラスールだよ。よろしく」



 にこっと笑いながらラスールは手を差し出した。

 アリフはその手を握った。

 温かい手だった。



「ラスール、もし良ければ、入っていいかい? 

 アリフに、フドゥマのことを教えたいんだ」



「ああ、そうだね。気がつかなくて悪かった。どうぞ入って」



 がらんとした部屋だった。

 窓がいくつかあり、その向こうに外の木々の葉が揺れていた。


 壁際には仕切られた小部屋がいくつもあり、それぞれにフドゥマが一羽ずついた。



(やっぱり、可愛い……)


 アリフはフドゥマを見て、くすぐったい気持ちになった。


  

 見上げると、天井が高い。

 上に、横木が何本も渡してある。




「ここはフドゥマの訓練室だよ。汚くてごめんね」



 床にはフドゥマのフンやエサが散らばっている。




「レイフ。プトは元気? 」


「ああ。問題ない」


「プトって? 」


「レイフのフドゥマだよ」


「え、レイフもフドゥマ飼ってるの? 」


「ああ。旅のときも、一緒にいたぞ」


「ええ? 気づかなかった」


「人見知りするやつだから、いつも隠れてるんだ」


「へえ」


「フドゥマはとても賢いんだ。伝書鳥として飼ってる人は多いよ。

 たまーに、懐かない人もいるけどね」


「ふうん」



 アリフの目は、フドゥマに注がれる。



「この子たちは、まだ訓練中だから、飼い主はいないんだ」


 ラスールが言った。



「へえ……」


「そばに寄ってみてもいいよ。

 柵から指をいれたりしないで。つっつく子もいるから」



 アリフはブーマを思い出した。


「もうつっつかれた」


「え」



 ラスールはきょとんとしたが、レイフは笑った。




(毛がふわふわだ)



 同じフドゥマでも、よく見るとみんな違う。

 顔立ちや体つき。

 この子も、この子も、違う。


 アリフがフドゥマを見ているあいだに、レイフとラスールは何やら話をしていた。



「アリフ。ラスールと相談したんだけど、アリフもフドゥマの世話をしてみないか? 」



「え、俺が? ……できるかな」



 すると、ラスールが言った。


「できるかどうか、じゃないよ。やるか、やらないかじゃないか?」



 ——あ。



「……わかった。やる」




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