塔の仕事
今日からアリフは、朝食を食べたら、塔へ行く。
「おはよう、アリフ。君が来てくれて、助かるよ」
ラスールは人の好さそうな笑みを浮かべた。
「おはようございます。よろしくお願いします」
部屋に入ると、フドゥマがみんな放されていた。
飛びまわったり、上の横木にとまったりしている。
「まずは掃除頼むね」
窓を開けてから、フドゥマの小部屋を、ひとつひとつ掃除していく。
糞や毛が飛び散るから作業服を着て、マスクもつける。
「小部屋の掃除が終わったら、餌と水を補充して」
ひと部屋ずつ、餌と水を容器に補充していく。
すると、部屋を飛び回っていたフドゥマたちが上から戻ってき始めた。
(エサがもらえるのがわかってるのか……)
食べるために、自分から部屋に戻ってくれる。
戻ったら扉を閉める。
「みんな戻ったね。そしたら今度は部屋の掃除をしよう」
長い柄のついた箒のようなもので、壁や窓枠を撫でる。
それから床を掃き、モップで拭く。
プハアッ。
アリフはやっとマスクを取った。
「綺麗になったね。ありがとう」
ラスールはにこっと笑った。
「アリフがいるなら、上のほうも掃除できそうだな」
「上って……あの止まり木とかも? 」
「うん。ほら梯子も用意してあるんだけど、なかなかする気にならなくてね。
アリフなら身軽だろう? 」
そう。
部屋の壁にはやけに長い梯子が立てかけてあるのだ。
フドゥマはその梯子にも止まって、汚したりしている。
「梯子を拭きながら、上がってもらえばいいね」
ラスールは嬉しそうに言った。
「……」
アリフは見るからに大変そうな仕事に、言葉が出なかった。
その時、ドアがコツコツと鳴った。
「はい」
ラスールがドアを開けた。
「ああ、姉さま」
その声に、アリフは振り向いた。
アナ・ラーハがいた。
「こんにちは、アリフ」
アナ・ラーハの言葉に、アリフは頭を下げた。
ふたりはボソボソと話をしている。
「じゃあ、そういうことで……。いざとなったら、あなたも……」
「わかってる。大丈夫」
アリフは掃除用具を片づけ終えた。
「ありがとう、アリフ。もういいよ。夕方くらいに、また来てくれ」
ラスールの言葉にアリフは頷いた。
部屋を出ようとすると、アナ・ラーハが言った。
「そこまで一緒に行きましょう」
サラサラと衣擦れの音を立てながら、アナ・ラーハが隣を歩いている。
「ここでの生活はどう? 」
「……レイフに剣を教えてもらったり、フドゥマの世話をしたり、楽しいです」
「そう、良かったわ。本当に……」
アナ・ラーハはしみじみと言った。
「ずっとこんな暮らしができればいいわね」
「……はい」
「戦争が始まってしまったら、異議を唱えることさえできなくなる。
今のうちなのよ。今ならまだ、言える。できることがある」
「……」
アリフは少し息をのんだ。
「アリフも、今ここでできること、できるだけしてね。
私にしてほしいことあったら、言ってね」
アナ・ラーハは優しく笑った。




