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砂漠の聖都  作者: 神代奈々
第3章 旅立ち
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塔の仕事



 今日からアリフは、朝食を食べたら、塔へ行く。



「おはよう、アリフ。君が来てくれて、助かるよ」


 ラスールは人の好さそうな笑みを浮かべた。



「おはようございます。よろしくお願いします」



 部屋に入ると、フドゥマがみんな放されていた。

 飛びまわったり、上の横木にとまったりしている。



「まずは掃除頼むね」



 窓を開けてから、フドゥマの小部屋を、ひとつひとつ掃除していく。

 糞や毛が飛び散るから作業服を着て、マスクもつける。



「小部屋の掃除が終わったら、餌と水を補充して」



 ひと部屋ずつ、餌と水を容器に補充していく。

 

 すると、部屋を飛び回っていたフドゥマたちが上から戻ってき始めた。



(エサがもらえるのがわかってるのか……)


 

 食べるために、自分から部屋に戻ってくれる。

 戻ったら扉を閉める。



「みんな戻ったね。そしたら今度は部屋の掃除をしよう」



 長い柄のついた箒のようなもので、壁や窓枠を撫でる。

 それから床を掃き、モップで拭く。



 プハアッ。


 アリフはやっとマスクを取った。



「綺麗になったね。ありがとう」


 ラスールはにこっと笑った。



「アリフがいるなら、上のほうも掃除できそうだな」


「上って……あの止まり木とかも? 」


「うん。ほら梯子も用意してあるんだけど、なかなかする気にならなくてね。

 アリフなら身軽だろう? 」



 そう。

 部屋の壁にはやけに長い梯子が立てかけてあるのだ。

 

 フドゥマはその梯子にも止まって、汚したりしている。



「梯子を拭きながら、上がってもらえばいいね」


 ラスールは嬉しそうに言った。



「……」


 アリフは見るからに大変そうな仕事に、言葉が出なかった。





 その時、ドアがコツコツと鳴った。


 

「はい」


 ラスールがドアを開けた。



「ああ、姉さま」


 その声に、アリフは振り向いた。

 アナ・ラーハがいた。



「こんにちは、アリフ」


 アナ・ラーハの言葉に、アリフは頭を下げた。


 

 ふたりはボソボソと話をしている。



「じゃあ、そういうことで……。いざとなったら、あなたも……」


「わかってる。大丈夫」



 アリフは掃除用具を片づけ終えた。



「ありがとう、アリフ。もういいよ。夕方くらいに、また来てくれ」


 ラスールの言葉にアリフは頷いた。



 部屋を出ようとすると、アナ・ラーハが言った。


「そこまで一緒に行きましょう」



 サラサラと衣擦れの音を立てながら、アナ・ラーハが隣を歩いている。



「ここでの生活はどう? 」


「……レイフに剣を教えてもらったり、フドゥマの世話をしたり、楽しいです」


「そう、良かったわ。本当に……」


 アナ・ラーハはしみじみと言った。



「ずっとこんな暮らしができればいいわね」


「……はい」


「戦争が始まってしまったら、異議を唱えることさえできなくなる。

 今のうちなのよ。今ならまだ、言える。できることがある」


「……」


 アリフは少し息をのんだ。



「アリフも、今ここでできること、できるだけしてね。

 私にしてほしいことあったら、言ってね」



 アナ・ラーハは優しく笑った。




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