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砂漠の聖都  作者: 神代奈々
第3章 旅立ち
35/37

歌声



「……あれ。なんか、聞こえる」


「神子たちだよ。行ってみよう」



 レイフについて、建物の中を進む。

 歌声が、だんだん近づいてくる。

 扉の前で、足を止めた。


「聖堂だよ」



 レイフがそっと扉を開けた。



 ——その瞬間、歌声が一気にアリフを包んだ。


 体の奥が、ビリビリと震えた。



 ……なんだこれ。

 聞いたことがない。



 祭壇の前に並んだ神子たちが、歌を歌っている。


 低く、高く。

 途切れなく続いている。



(この歌……)


「レイフ、この歌って……」


 レイフを見上げると、頷いて答えた。



「ダール様が歌っていたものに、似てるだろう。

 祭祀宮の神子たちに伝わる聖歌だよ」



「じゃあ、ダール様の母上は、神子だったのか」


「いや、違う。

 それに、聖歌の中に、ダール様が歌っているようなものはないそうだ。

 ダール様も、不思議がっていた」



 歌声が、やんだ。




「練習が終わったらしいな」


 神子たちが譜面をかかえて、聖堂の出入口のほうへ向かってきた。



 レイフが横にそれて道を譲った。

 アリフもそれに倣った。


 ぺこぺこと、軽く会釈をしながら、次々と通りすぎていく。



「あ……」


 ——バサササッ。

 ひとりが、譜面を落とし、床に散らばった。



「リー・イーラ? 先に行ってるよ」


 通り過ぎた神子のひとりが振り返って言った。



(リー・イーラ……)


 その子は譜面をわたわたと拾っていた。



 すっとレイフが譜面を拾いはじめた。

 アリフも、真似して拾った。



「……ありがとうございます」


 リー・イーラは小さな声でそう言うと、ぺこりとお辞儀をして、行ってしまった。 

 


(鈴みたいに、綺麗な声だ……)


 アリフはそんなふうに感じた。


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