歌声
「……あれ。なんか、聞こえる」
「神子たちだよ。行ってみよう」
レイフについて、建物の中を進む。
歌声が、だんだん近づいてくる。
扉の前で、足を止めた。
「聖堂だよ」
レイフがそっと扉を開けた。
——その瞬間、歌声が一気にアリフを包んだ。
体の奥が、ビリビリと震えた。
……なんだこれ。
聞いたことがない。
祭壇の前に並んだ神子たちが、歌を歌っている。
低く、高く。
途切れなく続いている。
(この歌……)
「レイフ、この歌って……」
レイフを見上げると、頷いて答えた。
「ダール様が歌っていたものに、似てるだろう。
祭祀宮の神子たちに伝わる聖歌だよ」
「じゃあ、ダール様の母上は、神子だったのか」
「いや、違う。
それに、聖歌の中に、ダール様が歌っているようなものはないそうだ。
ダール様も、不思議がっていた」
歌声が、やんだ。
「練習が終わったらしいな」
神子たちが譜面をかかえて、聖堂の出入口のほうへ向かってきた。
レイフが横にそれて道を譲った。
アリフもそれに倣った。
ぺこぺこと、軽く会釈をしながら、次々と通りすぎていく。
「あ……」
——バサササッ。
ひとりが、譜面を落とし、床に散らばった。
「リー・イーラ? 先に行ってるよ」
通り過ぎた神子のひとりが振り返って言った。
(リー・イーラ……)
その子は譜面をわたわたと拾っていた。
すっとレイフが譜面を拾いはじめた。
アリフも、真似して拾った。
「……ありがとうございます」
リー・イーラは小さな声でそう言うと、ぺこりとお辞儀をして、行ってしまった。
(鈴みたいに、綺麗な声だ……)
アリフはそんなふうに感じた。




