旅の途中
「いいぞ、アリフ。その調子だ」
キィンッ。キンッ。
アリフはレイフに剣の稽古をつけてもらっていた。
昨夜ワーフを離れ、半日ほど飛び続けた。
日が高くなったころ、岩山と木々に囲まれた小さなオアシスで、ひと息ついた。
身を清め、簡単な食事をすませる。
ダールは木陰で眠っている。
その懐には、あの鳥がいた。
眠れなかったアリフに、レイフが声をかけた。
「剣は、扱ったことはあるか?」
「少しだけ」
「そうか。じゃあ、やってみよう」
剣を交えながら、ぽつりぽつりと話をした。
「じゃあレイフは、アシュバルより年上なんだな」
「アリフの先輩のナリドか。俺もナリドだったよ」
「そうなんだ」
「ああ。でも、自分の年がいくつかなんて、はっきり覚えてないな」
「……ふ、あぁ、よく眠った」
ダールが体を起こすと、懐の鳥も顔を出した。
「剣の稽古か。若いな」
「ダール様、その鳥、ダール様の鳥なんですね」
「うむ。フドゥマだ。名前はブーマ」
(あれがフドゥマか……。可愛い)
アリフは手を伸ばした。
「いてっ」
「おお、アリフ。大丈夫か。ブーマ、つっついてはダメだ」
「……こいつ、前に俺が、こいつの巣のそばに近寄ったから」
「大聖堂の木の? 」
アリフはこくんと頷いた。
「そうか。それでか」
ダールはポケットからごそごそと袋を取り出した。
「これを使って、気長に仲良くなるんだな」
アリフの手に、フドゥマのエサを乗せた。
日が陰るころ、オアシスを出発した。
なるべく月のない夜を選んで、飛んだ。
「少しは、パギリングに慣れたか」
「うん」
レイフがうしろから声をかけてくれた。
揺られているうちに、眠くなる。
「寝ていいぞ」
「……うん」
星が、近い。
……歌?
風の音だろうか。
不思議な音が聞こえた。
「アリフ。起きたか」
「……うん。何か聞こえない? 」
「ダール様が歌ってるんだ」
「ええ……」
隣を飛ぶダールから、声が聞こえる。
低く、高く。
途切れなく続く。
「なんて歌ってるの? 」
「それがな、わからないんだ」
「別の言葉? 」
「いや。ダール様にもわからない」
「意味もわからないのに? 」
「そう。ダール様の母上が歌っていたそうだ」
……なぜだろう。
意味もわからないのに、心地よい。
アリフのまぶたは再び重くなった。
「レイフ、薪の組み方、これでいい? 」
「うん、いいよ。もう少しこうして……」
レイフもダールも、いろんなことを知っていた。
剣や戦い方だけじゃない。
野宿や獣のさばき方、方角を知る方法。
これも、力なのかもしれない。
アリフはそう感じた。
「明日には王都に着くな」
「はい、ダール様。王都に入ってからも油断なさらぬよう」
「もちろんだ」
「……」
アリフも気を引き締めた。




