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砂漠の聖都  作者: 神代奈々
第3章 旅立ち
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旅の途中

  

 

「いいぞ、アリフ。その調子だ」


 キィンッ。キンッ。



 アリフはレイフに剣の稽古をつけてもらっていた。



 昨夜ワーフを離れ、半日ほど飛び続けた。

 日が高くなったころ、岩山と木々に囲まれた小さなオアシスで、ひと息ついた。


 身を清め、簡単な食事をすませる。



 ダールは木陰で眠っている。

 その懐には、あの鳥がいた。



 眠れなかったアリフに、レイフが声をかけた。



「剣は、扱ったことはあるか?」


「少しだけ」


「そうか。じゃあ、やってみよう」



 剣を交えながら、ぽつりぽつりと話をした。




「じゃあレイフは、アシュバルより年上なんだな」


「アリフの先輩のナリドか。俺もナリドだったよ」


「そうなんだ」


「ああ。でも、自分の年がいくつかなんて、はっきり覚えてないな」




「……ふ、あぁ、よく眠った」


 ダールが体を起こすと、懐の鳥も顔を出した。




「剣の稽古か。若いな」


「ダール様、その鳥、ダール様の鳥なんですね」


「うむ。フドゥマだ。名前はブーマ」



(あれがフドゥマか……。可愛い)


 アリフは手を伸ばした。



「いてっ」


「おお、アリフ。大丈夫か。ブーマ、つっついてはダメだ」


「……こいつ、前に俺が、こいつの巣のそばに近寄ったから」


「大聖堂の木の? 」


 アリフはこくんと頷いた。



「そうか。それでか」


 ダールはポケットからごそごそと袋を取り出した。



「これを使って、気長に仲良くなるんだな」


 アリフの手に、フドゥマのエサを乗せた。



 

 


 日が陰るころ、オアシスを出発した。

 なるべく月のない夜を選んで、飛んだ。



「少しは、パギリングに慣れたか」


「うん」



 レイフがうしろから声をかけてくれた。

 揺られているうちに、眠くなる。



「寝ていいぞ」


「……うん」




 星が、近い。

 


 ……歌?

 風の音だろうか。


 不思議な音が聞こえた。



「アリフ。起きたか」


「……うん。何か聞こえない? 」

 

「ダール様が歌ってるんだ」


「ええ……」



 隣を飛ぶダールから、声が聞こえる。


 低く、高く。

 途切れなく続く。



「なんて歌ってるの? 」


「それがな、わからないんだ」


「別の言葉? 」


「いや。ダール様にもわからない」


「意味もわからないのに? 」


「そう。ダール様の母上が歌っていたそうだ」



 ……なぜだろう。

 意味もわからないのに、心地よい。


 アリフのまぶたは再び重くなった。






「レイフ、薪の組み方、これでいい? 」


「うん、いいよ。もう少しこうして……」



 レイフもダールも、いろんなことを知っていた。



 剣や戦い方だけじゃない。

 野宿や獣のさばき方、方角を知る方法。



 これも、力なのかもしれない。

 アリフはそう感じた。



「明日には王都に着くな」


「はい、ダール様。王都に入ってからも油断なさらぬよう」


「もちろんだ」


「……」


 アリフも気を引き締めた。






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