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砂漠の聖都  作者: 神代奈々
第3章 旅立ち
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夜の旅立ち


 

 ……なんで、夜なんだ?


  

「……実は、私をつけ狙う者がいるんだ」

 


 ——! 

 ……いきなり、きな臭くなった。


 

  

 旅立ちのことは口止めされた。アリフも誰にも言う気はなかった。




 消灯してから、アリフはこっそりダールの部屋へ向かった。

 荷物は前もって置いてある。

 といっても、大したものはないけれど。


 ダールの部屋には、いつも通り灯りがついていた。

 

 

「アリフ、よく来た。では、行こうか」


 奥の部屋の窓へと向かった。

 アリフはこくりと頷いた。



 裏の林に、パギリングと従者が待っている。

 


(ダール様はパギリングが使えるのか……) 

 

 

 

「灯りはつけておく。私はいつも、もう少し遅くまで起きているから…」

 

 

 ダールが窓へ手をかけようとした。


 ——途端。

 窓から黒装束の者が飛び込んできた。

 

 

 ダールはすんでのところで、身をかわした。

 敵は床を転がり、態勢を整え、再びダールへ襲いかかった。 


 

「うわあああッ!! 」

 


 アリフは反射的に敵へ体当たりした。

 その隙に、ダールの短剣が敵をかすめた。



 そのとき、窓から何かが飛び込んできた。 

 


「グッ…! 」 

 

 

 敵はうめき声を出しのけぞった。


 

——小さな鳥。

  

 飛び回り、威嚇している。

 


 


「何者だ。名乗れば相応に扱う」

 

「……」

 

 敵は、応えない。



 身を翻し、反対側の入口から飛び降りた。

 鳥が追った。



「今のうちだ」


 ダールとともに窓から裏の林へ出た。



「走れ」


 木の葉をかき分け、走った。



「ダール様!」


 男の声がした。



 少し拓けた木々のあいだに、パギリング2頭と、従者がひとり待っていた。



「行くぞ」


 ダールと従者は素早く支度をした。

 アリフは命綱をつけられ、ひょいと抱えて乗せられた。


 ダールが先に、パギリングを操り、ふわりと空へ駆けあがった。

 従者は、アリフのうしろに跨ると、ダールのあとを追った。



(……う……わっ)



 なんともいえない浮遊感。

 木々をすり抜け、森がみるみる眼下へ遠ざかった。

 

 

「……はっ」


 アリフはようやく、自分が息をしていることに気づいた。

 胸は強く波打っている。




「アリフ。大丈夫か」


 ダールが聞いてきた。



「あ……」


 うまく答えられない。



「よい。そのままで。レイフ、頼んだぞ」


 アリフのうしろで、従者はこくりと頷いた。




 ピィィィーーーッ。

 

 ダールが口笛を吹いた。



 どこからともなく、飛んできた。

 さっきの鳥だ。



 

この夜、ワーフを離れた。





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