第6話 資源をください
「……おぉ」
頂いたというか、奪ったが正しい王城の謁見の間で、セルマから例のブツを渡される。
「王の仰る通り、あの山の頂上にあったそうです」
これで聖遺物の入手は、無事に完了した。
王国を支配した翌日、俺はセルマの提案を受けて方針を変えた。
――全国民の魅了。
この国に住む全ての人間を、俺の配下にする。
当然、突然国を支配された民は不安を募らせるだろう。
国王の死は、そう長く隠蔽できるものではない。
今回は魅了によって全員を従順な配下にする。魔力は中々貯まらないが、それは妥協。
だからこそ、次は他国を落とす。
領土を広げ、資源を奪い、国そのものを豊かにする。その為には潤沢な魔力が必要で、大罪国家は魔力を国民の負の感情から抽出される。
……まあ、今は何より生産量優先だ。
食料、資材、魔力、金貨。
国を大きく動かすには、いくらあっても足りない。
その内の魔力を捨て、他に全振りする。
その理由は――。
今回手に入れた聖遺物にある。
セルマから手渡されたのは、一つの古びた巻き物。
見た目だけなら、ただの古い紙だ。
けれど――。
「これで、次の英雄を召喚できるな」
「そうですね」
俺は巻き物を見つめる。
セルマを召喚してから、ずっと気になっていた。
ゲームでは見れなかった、英雄の本当の姿。
たった一人で国の未来を変えられるほどの力を持つ、国家の切り札。
そして、この聖遺物があれば――。
「次の英雄が、手に入る」
そう思った瞬間。
俺は思わず、口元を緩めていた。
「……ついに、召喚できる」
俺は巻き物を広げる。
すると、目の前に見慣れたゲーム画面が浮かび上がった。
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【聖遺物:使用可能】
【英雄召喚】
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表示された英雄の一覧を眺めていく。
そして――
「……あ」
思わず声が漏れた。
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【血桜の巫女〈ユイ〉】
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「ユイ……!」
パンソヴに存在する英雄の中でも、数少ない『日本』をイメージした英雄。
巫女服を思わせる衣装に、刀。
そして――血桜という要素。
パンソヴをやっている人間からすれば、この害悪キャラの名前は聞き覚えがあるだろう。
「まさか、こんなに早く召喚できるとは……!」
まじでテンション上がる。
これは欲しい。
絶対に欲しい。
そう思って、召喚画面を開いた。
「…………え?」
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【血桜の巫女〈ユイ〉】
【召喚コスト】
必要魔力:50,000
必要人口:5,000
必要食料:30,000
必要資材:20,000
必要金貨:500,000
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「…………」
画面を、もう一度見る。
「……高くない?」
思わず呟いた。
俺の記憶にあるユイの召喚コストより、明らかに高い気がする。
「王?」
「いや……なんでもない」
出せないわけじゃない。
今のアスモデウスなら、時間をかければ用意できる。
問題は、その後だ。
「これ、召喚したら国の維持が……」
大量に余ってる領土、これを農業やらに使えよ! 開拓するついでに資源もウハウハだろ!
「文句言っても仕方ないか」
「分かりますよ、王。この王国は土地の使い方が下手、ゴミ、宝の持ち腐れ。暇してる国民に仕事を与えるついでに、耕作地くらい広げろというものです」
顔に出てたかな、もっと言ってやれ。
「魅了のバフがあったとしても、時間はかかるよね」
「そうですね……申し訳ありません」
「セルマが謝る事じゃないよ。それに、今は戦争する予定なんてないし、英雄は後回しで良いや」
英雄一人を手に入れるために、国家運営が傾いたら意味がない。
今の俺たちは、ようやく国として動き始めたばかり。
食料も、資材も、魔力も。
余裕があるわけじゃない。
俺は画面を見つめたまま、唸る。
「まぁ欲しい。めちゃくちゃ欲しいんだけど……」
血桜の巫女、ユイ。
知っているよ〜? 軍事性能も高いし、パッシブがめっちゃ強いことも。
なによりビジュが良すぎるッ!
ピンク髪のキャラにはあれ程気を付けてたはずなのに、いつの間にか好きになってる。
しかも育成を工夫すると、かなり化ける英雄だ。大罪系とも相性いいしな。
だからこそ――。
「……まずは、生産だな」
ゲームなら、多少無茶をしてでも召喚するだろうが、もうゲームの画面の向こう側じゃない。
この国には、四百万人以上の人間が生きている。
ゲームを楽しむなら、気楽にだ。
流石に飢饉で人が死にまくるのは、俺の望むところじゃない。
たった一人の英雄のために、国を傾かせるわけにはいかない。
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【国家資源】
・魔力:56,357
・人口:4,832,000
・食料:60,940
(国家に対する必要年間維持量42,873)
・資材:94,760
・金貨:1,284,600
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