第九話 死闘
第9話をお読みいただきありがとうございます!
前話、お婆さんの凶刃に倒れたひな。
そして、村人や黒沢をも飲み込んで完全覚醒してしまった、土地神『どおんけ様』。
最悪の絶望のなか、傷ついたひなを背に、潤が「大幣」の真の姿を解放します。
人間の意地と神職のプライドをかけた最終決戦、開幕です――!
脇腹に熱を感じながら、しゃがんだまま大幣を突き立て天をつくほどの大きさになった“どおんけ様”を潤が見据えている。
私はそれを後ろから見ている。
綺麗だ。なぜかそう思ってしまった。
潤の背中が大きく見える。
それを月明かりが照らす。
どおんけ様は頭上から私たちを見下ろしている。
目は真っ黒で果てが見えない。
胸には赤黒く心臓のようなものが不気味に脈打っている。
そんな身の毛もよだつ怪物相手に潤は神殺しの宣誓をした。
お腹の痛みがだんだん麻痺してきた。
そして眠気が襲い始めてきたがこの戦いだけは見届けよう。
その一点だけでなんとか意識を繋ぎ止めている。
どおんけ様の大木のような腕が振り下ろされる。
それを潤は大幣でいなす。
私たちのそばの地面に手を叩きつけたどおんけ様は怒りの咆哮をあげている。
「このままじゃダメか」
潤はそう言うと怪我を負った左手で大幣を突き立て立ち上がる。
コーーーーーーーン
澄んだ音が響くと同時に真っ直ぐ立ち上がる。
「オォォォォォォォォ」
神下ろしの声をあげる。
キンッ
すると右手を逆手で大幣の先の方を持ち、刀のように引き抜き始めた。
刀身は光を帯びながらスーっと姿を表す。
「きれい・・・」
つい口をついた。
薄く長い刀身が潤の腕の動きに合わせ姿を表していく。
その光を浴びたどおんけ様が苦しそうにうめく。
「――顕れ神錆び、断ち祓え。『神刀・鉄威』」
潤がそう言うと刀身の光は仕込み刀に吸収されるように収束していった。
月光に照らされ刀が光を反射する。
「潤、それ・・・」
刀身の違和感を感じ潤に問いかける。
「よく気がついたな、そう、この刀には刃がない。ただの鉄の板だ」
「そんな・・・」
その時、光の収束を待っていたどおんけ様がまた腕を私たちを目掛けて振り下ろしてきた。
潤は冷静にその腕に持っていた刀を下から切り上げる。
するとなんの抵抗も感じさせずに大幣の刃が腕を両断した。
切られた手首から先は霧のように霧散していく
ウオォォォォォ
どおんけ様が痛みでのけぞった。
潤は得意げに大幣刀を肩に担ぎこちらに振り返る。
「こんな刃じゃ何もきれないが、神は斬れる」
ニッと私に笑顔を向けてくれる。
「後のことは任せろ」
そう言ってどおんけ様目掛けてかけて行く。
体勢を立て直したどおんけ様が切られていない右手を潤目掛けて突き出す。
潤はそれを右下から左上に切り上げることで迎え撃つ。
すると今度は切ったはずの左手が潤に襲いかかり吹き飛ばされてしまう。
「潤!!」
あまりの速さに潤を見失ってしまう。
するとどおんけ様の慟哭が聞こえる。
そちらを見ると左手の手のひらに潤が大幣刀を突き立てぶら下がっている。
どおんけ様はその手を上に振り上げ落とそうと勢いをつけるが、
潤は器用にもその勢いを利用し、どおんけ様の頭部に飛び乗る。
「これで終わりだ!」
そう言うと刃を首に滑らせ頭を落とした。
どおんけ様の頭は地面に落ち切る前に霧散していった。
これでやっと終わると思った次の瞬間、どおんけ様の赤黒い胸の心臓が脈打つ。
ドプッドプッ
すると切り落とした首から泥が吹き出し再生しようとする。
「ちっ、無限再生かよ」
「潤!胸の心臓狙って!」
「心臓?」
潤の距離にいて見えていないわけがない。
そうか、これは私にしか見えていないんだ。
霊が見えた私にしか。
頭部が再生したどおんけ様は背中に反動をつけ潤を私の方へ吹き飛ばす。
ビルの3階くらいの高さまで吹き飛ばされた潤だったが、なんとか受け身をとり大幣刀を構えどおんけ様へ向き直る。
私のそばまで吹き飛ばされた潤が振り返る。
「ひな、見えてるんだな」
「うん!」
そう言った瞬間潤は立てない私の元へ駆け寄り抱き寄せる。
「そこを指さしてくれ」
私は赤黒く脈打つどおんけ様の心臓を真っ直ぐ指差す。
潤の視線が私の指差す方向を見据える。
すると大幣刀についている紙をまた一枚引き抜き祝詞を唱える。
「ーー引き裂き祓え、『切幣・烈風』」
すると風が駆け抜け心臓周りの泥が吹き飛ぶ。
「落ちた!!」
私の掛け声と同時に潤も風のようにどおんけ様から抜け落ちた心臓へ駆けていく。
心臓を拾い上げようとどおんけ様の手が伸びていく。
「行けーーーーーー!!!」
どおんけ様の手が心臓に触れるより一瞬早く潤の大幣刀の刃が心臓に届く。
「此の地に鎮まる荒ぶる神よ――」
潤は両手で大幣刀の柄を握り込み、どおんけ様の心臓の奥深くへと刃を沈める。
「斎主・御影潤が命ずる。その身を解き、往ぬべき場所へ還り給え(かえりたまえ)――ッ!!」
心臓から目も開けていられないくらいの光が放たれたと思うと、黒い霧になり本体と一緒に霧散していった。
静寂が戻る、祠の広場。
「……終わった、な」
潤が肩の力を抜き、神刀を大幣の鞘へと戻しながら振り返る。
だが、私の元へ駆け寄ってきた潤の顔が、一瞬で強張った。
「ひな……!? おい、嘘だろ……血が、止まんねえ……!」
体から完全に熱が失われていく。潤が必死に私の傷口を押さえる手が、ガタガタと震えていた。視界が急速に暗くなっていく。
「目を開けろひな! クソッ、救急車なんか待ってたら間に合わねえ……! おいッ!!」
遠ざかる潤の絶叫を聞きながら、私の意識は深い闇へと落ちていった――。
脇腹に熱を感じながら、しゃがんだまま大幣を突き立て天をつくほどの大きさになった“どおんけ様”を潤が見据えている。
私はそれを後ろから見ている。
綺麗だ。なぜかそう思ってしまった。
潤の背中が大きく見える。
それを月明かりが照らす。
どおんけ様は頭上から私たちを見下ろしている。
目は真っ黒で果てが見えない。
胸には赤黒く心臓のようなものが不気味に脈打っている。
そんな身の毛もよだつ怪物相手に潤は神殺しの宣誓をした。
お腹の痛みがだんだん麻痺してきた。
そして眠気が襲い始めてきたがこの戦いだけは見届けよう。
その一点だけでなんとか意識を繋ぎ止めている。
どおんけ様の大木のような腕が振り下ろされる。
それを潤は大幣でいなす。
私たちのそばの地面に手を叩きつけたどおんけ様は怒りの咆哮をあげている。
「このままじゃダメか」
潤はそう言うと怪我を負った左手で大幣を突き立て立ち上がる。
コーーーーーーーン
澄んだ音が響くと同時に真っ直ぐ立ち上がる。
「オォォォォォォォォ」
神下ろしの声をあげる。
キンッ
すると右手を逆手で大幣の先の方を持ち、刀のように引き抜き始めた。
刀身は光を帯びながらスーっと姿を表す。
「きれい・・・」
つい口をついた。
薄く長い刀身が潤の腕の動きに合わせ姿を表していく。
その光を浴びたどおんけ様が苦しそうにうめく。
「――顕れ神錆び、断ち祓え。『神刀・鉄威』」
潤がそう言うと刀身の光は仕込み刀に吸収されるように収束していった。
月光に照らされ刀が光を反射する。
「潤、それ・・・」
刀身の違和感を感じ潤に問いかける。
「よく気がついたな、そう、この刀には刃がない。ただの鉄の板だ」
「そんな・・・」
その時、光の収束を待っていたどおんけ様がまた腕を私たちを目掛けて振り下ろしてきた。
潤は冷静にその腕に持っていた刀を下から切り上げる。
するとなんの抵抗も感じさせずに大幣の刃が腕を両断した。
切られた手首から先は霧のように霧散していく
ウオォォォォォ
どおんけ様が痛みでのけぞった。
潤は得意げに大幣刀を肩に担ぎこちらに振り返る。
「こんな刃じゃ何もきれないが、神は斬れる」
ニッと私に笑顔を向けてくれる。
「後のことは任せろ」
そう言ってどおんけ様目掛けてかけて行く。
体勢を立て直したどおんけ様が切られていない右手を潤目掛けて突き出す。
潤はそれを右下から左上に切り上げることで迎え撃つ。
すると今度は切ったはずの左手が潤に襲いかかり吹き飛ばされてしまう。
「潤!!」
あまりの速さに潤を見失ってしまう。
するとどおんけ様の慟哭が聞こえる。
そちらを見ると左手の手のひらに潤が大幣刀を突き立てぶら下がっている。
どおんけ様はその手を上に振り上げ落とそうと勢いをつけるが、
潤は器用にもその勢いを利用し、どおんけ様の頭部に飛び乗る。
「これで終わりだ!」
そう言うと刃を首に滑らせ頭を落とした。
どおんけ様の頭は地面に落ち切る前に霧散していった。
これでやっと終わると思った次の瞬間、どおんけ様の赤黒い胸の心臓が脈打つ。
ドプッドプッ
すると切り落とした首から泥が吹き出し再生しようとする。
「ちっ、無限再生かよ」
「潤!胸の心臓狙って!」
「心臓?」
潤の距離にいて見えていないわけがない。
そうか、これは私にしか見えていないんだ。
霊が見えた私にしか。
頭部が再生したどおんけ様は背中に反動をつけ潤を私の方へ吹き飛ばす。
ビルの3階くらいの高さまで吹き飛ばされた潤だったが、なんとか受け身をとり大幣刀を構えどおんけ様へ向き直る。
私のそばまで吹き飛ばされた潤が振り返る。
「ひな、見えてるんだな」
「うん!」
そう言った瞬間潤は立てない私の元へ駆け寄り抱き寄せる。
「そこを指さしてくれ」
私は赤黒く脈打つどおんけ様の心臓を真っ直ぐ指差す。
潤の視線が私の指差す方向を見据える。
すると大幣刀についている紙をまた一枚引き抜き祝詞を唱える。
「ーー引き裂き祓え、『切幣・烈風』」
すると風が駆け抜け心臓周りの泥が吹き飛ぶ。
「落ちた!!」
私の掛け声と同時に潤も風のようにどおんけ様から抜け落ちた心臓へ駆けていく。
心臓を拾い上げようとどおんけ様の手が伸びていく。
「行けーーーーーー!!!」
どおんけ様の手が心臓に触れるより一瞬早く潤の大幣刀の刃が心臓に届く。
「此の地に鎮まる荒ぶる神よ――」
潤は両手で大幣刀の柄を握り込み、どおんけ様の心臓の奥深くへと刃を沈める。
「斎主・御影潤が命ずる。その身を解き、往ぬべき場所へ還り給え(かえりたまえ)――ッ!!」
心臓から目も開けていられないくらいの光が放たれたと思うと、黒い霧になり本体と一緒に霧散していった。
静寂が戻る、祠の広場。
「……終わった、な」
潤が肩の力を抜き、神刀を大幣の鞘へと戻しながら振り返る。
だが、私の元へ駆け寄ってきた潤の顔が、一瞬で強張った。
「ひな……!? おい、嘘だろ……血が、止まんねえ……!」
体から完全に熱が失われていく。潤が必死に私の傷口を押さえる手が、ガタガタと震えていた。視界が急速に暗くなっていく。
「目を開けろひな! クソッ、救急車なんか待ってたら間に合わねえ……! おいッ!!」
遠ざかる潤の絶叫を聞きながら、私の意識は深い闇へと落ちていった――。
第9話、最後までお読みいただきありがとうございました……!
ついに明かされた大幣の真実――刃なき神刀『神刀・鉄威』を引っ提げ、限界を超えて戦う潤。そして、覚醒した霊感でどおんけ様の心臓(核)を見つけ出したひな。
二人の決死の共闘によって、見事『どおんけ様』を往くべき場所へと還し、村の因習を打ち破ることができました!
……しかし、神は滅びたものの、ひなの容態は一刻を争う危機的状況。
救急車も間に合わない山奥で、潤はひなを救うことができるのか――?
次回、第10話(いよいよ最終回・エピローグ編)は【7月19日(日)】の18:10に更新予定です!




