第七話 洞窟からの脱出
第7話をお読みいただきありがとうございます。
地震によって閉じ込められた地下洞窟。
追い打ちをかけるように、足元からは冷たい水が激しく湧き上がり、二人の猶予はあと数分に――。
極限状態のなかで、いつもは無気力な潤がひなに見せる「執念」、そして二人の絆が試されます。
命がけの脱出劇、どうぞお楽しみください!
世界が揺れている。
そう思ってしまうほどの大きな地震。
時間にするとわずかなのだろうが、体感だとずっと揺れているように感じる。
揺れるたびに洞窟のあちこちが崩れ、割れ、本能が危険だと叫んで止まない。
冷静になろうとありったけの言葉を頭に浮かべるけど全然まとまらない。
分かるのは、潤が私のことを必死に守ろうとしてくれていることだけだ。
「やっと止まったか」
「ビックリしたぁ」
「早く出て行かないとやばいな」
あまりの出来事に気がついていなかったが、地面にへたり込んでいた私のお尻の下には水が溜まってきていた。
「わ!」
驚いて立ち上がる。動くたびに水がピチャピチャと跳ねる。
一つしかなかった出口が完全に岩で閉ざされている。
通れる隙間がないか一生懸命探したがそんな隙間は全くなかった。
「どうしよう・・・・・・」
「諦めるな。絶対俺がここから出してやるからな」
そう言いながら潤は私の頭に手を置いた。
水は徐々に水位を増して、今はスネくらいまできている。
ゴゴゴゴゴ
地鳴りがして、洞窟がシェイクされる。
すると今度は壁の高い位置から水が噴き出した。
ゴーーーーーー
ありえないくらいの轟音が響いて一気に水位が上がっていく。
ものの1分ほどで胸の位置まできた。
焦らないといけないのだろうが、私は潤の険しい横顔に不思議と安心感を覚える。
「潤と一緒でよかったよ」
「何いってんだ!出るんだろ!」
「うん。けど出れなくても潤を恨んだりしないよ」
「は?わけわかんねーよ!諦めるな。絶対に」
水位はもう肩を超えている。
潤がなんとかたいまつを掲げて灯りを灯してくれている。
「守ってくれて、ありーーー」
また大きな地震が起きた。
水面は激しく揺れて起こる波のせいで息が上手くできない。
足元が不安定で体勢を崩した。
その瞬間、潤が持っていたたいまつを投げ、両手で強く私を抱きしめた。
「まだカニ食ってないだろ!」
「ふふっ」
「絶対お前だけは守り通すからな!」
「・・・・・・うん!」
次の瞬間、頭上で大きな崩落音がした。
大きな岩が私たちのすぐ横に落ち、潤の左手はひどい擦り傷を負う。
血が水に広がる。
「くっ」
痛みで潤の顔が大きく歪むのが鮮明に見えた。
鮮明に?
灯りが乏しいはずの洞窟で鮮明に見えた?
私は頭上を見上げた。
そこには天井が大きく崩れ、外の景色が窓のように見えた。
「潤!上!天井が開いてる!」
潤は天井を見上げ、安堵した笑みを浮かべる。
「一緒に出るぞ!俺にちゃんと捕まっておけよ」
「うん!」
そう言い私は潤を後ろから抱きしめた。
水位が上がりもう足はつかないが浮力でなんとか浮いていられる。
その間も水がどんどん送りこまれて水面は波立っている。
水は冷たいがそんなことも言っていられない。
天井の裂け目までもう少し。もう少し。
潤は手を伸ばして裂け目に掴まる。
「ひな!俺を乗り越えて上がれ!」
潤の怪我している方の手が紫色に変色して震えている。
早く登らなきゃ。
私はなんとか裂け目の壁を掴み自分の体を上に上げる。
なんとか地面に到着した。
だが安心していられない。
すぐに反転し、潤に手を伸ばす。
潤の差し出された右手を両手で掴み、引っ張り上げる。
「出れたー!」
全身水浸しのまま、なんとか洞窟から脱出た喜びで飛び跳ねたが、周囲の状況が目に入り固まってしまった。
なんとそこは、あの夜詣りをし、地鎮祭で泥人間が発生したあの祠の広場だった。
鳥居の周りはたいまつを持った老人たちがたくさん待機していた。
そのうちの一人がたいまつを掲げ、こちらに近寄ってきた。黒沢だ。
潤は私を腕で制し、後ろに下がらせる。
「おやおや、どおんけ様の胎内から抜け出すなんて」
「お前ら・・・」
「私たちはこうやって生きてきましたので」
「人の命をなんだと思ってるんだ!」
「ははっ。何を今更。私たちが生きる為なんです。来る方が悪い」
「そんなわけないだろ!」
「私たちだって最初は村の者から生贄を出していたんです。」
「・・・・・・」
「ですがこんな限界集落で4年に一度の儀式をしていたら私たちは持ちません」
「だから考えました。登山ルートを開設したり、移住者を募ったり」
「辞めるわけにはいかないんです。やめたらどおんけ様がお怒りになります」
「村を出た者たちは程なくして狂ってしんでいきます」
「私たちはここで生きていくしかないんです」
「だからって、こんな・・・・・・」
「わかってほしいわけではないんです。ただ、死んでください」
そういうと黒沢はあの気味の悪い張り付いたような笑顔で祠の方を見た。
オォォォォォォォォ
潤と同じ神下ろしの声。だけど気持ちが悪い。
全身に鳥肌が一瞬で立ち、私はそこに立ちすくむしかなかった。
ゴポ・・・ゴポゴポ
あいつらが出てくる音がする。
あたりにはカビ臭い水が腐った匂いが漂い始めた。
第7話、お疲れ様でした!
潤の負傷と引き換えに、なんとか水没する洞窟から地上へと這い出た二人。
しかし、たどり着いた先は一番戻りたくなかった「あの祠の広場」……笑顔の村人たちに完全包囲されていました。
黒沢の口から語られる、あまりに胸糞悪い真相。
そして、黒沢の声に呼応して、再び沼から奴らが這い出てきます――。
次回、第8話は【次の更新曜日】の18:10に更新予定です!
ついに逃げ場を失った二人の、村人&怪異を相手にした決死の防衛戦が始まります。そして物語は、本作最大の「衝撃のラスト」へと加速していきます……!




