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第六話 少女の記憶

第6話をお読みいただきありがとうございます。


無数に転がる白骨遺体の前で、いつもはだるそうな潤が冷静な考察を始めます。

そして、ひなが見つけた一際小さな白骨遺体。

遺品である『絵本』に手が触れた瞬間、この村が犯した「最も生々しい罪の記憶」が、ひなの脳内に直接流れ込んできて――。


ここから物語が大きく動き出します。どうぞお楽しみください!

暗くじめじめとした洞窟の中、突然ぽっかりとあいた大きな空間には白骨遺体が無造作に散らばっていた。

天井に穴が開いているのかうっすらと淡い光の筋が差し込んできており、今が夜だということがかろうじてわかる。

その光が、今は逆に残酷で残虐な現実を映し出した。

潤が止まれと言ってくれなかったら今頃私は誰かもわからない骨を踏み砕いていただろう。

骨は全て服を着ている。きっと私たちのように連れてこられ、ここに放置されたんだろう。

松明を持ってぐるりと大きな空間を回ってきた潤が私の所に帰ってきた。

苦しそうな顔をしながら見てきた事を話し始めた。


「女の子はいなかったよ。ここには出口も無いし、見間違えだろう」

「そんな!私絶対見たもん!」

「そうか・・・・・・そうだな」


そういうと私の頭にポンと手を置いて慰めようとする。


「遺体の具合を見ていると、多分何年かおきにこういうことをやってるんだと思う。」

「そっか・・・・・・」

「俺らみたいな外の人間をここに沈めてきたんだろうな・・・・・・」


そういうとくるりと踵を返し元きた道に戻ろうとする。


「ちょっと待って」


私はあの女の子が本当にいなかったのか自分の目で見ないと気が済まなかった。

幸い少し光が漏れているからさっきみたいに歩いてるうちにみんなを踏んでしまうようなことにはならない。

そう思って歩いていると、壁ぎわに一際小さな遺体があった。

ほぼ骨になっているものの、部分的にミイラのようになっている。

そして、あの女の子と同じ服を着ていた。


「あなたがここに連れてきてくれたのね」


そんなことありえないのにそんな気がした。

目からは涙が溢れてきた。

ふとその子の脇に泥とカビに塗られてしまった絵本が落ちていた。

きっと大切にしていたのだろう。拾ってその子に持たせてあげようと手を伸ばした。

絵本に触れた瞬間、強い衝撃と共に意識が混濁してしまった。



********************



「もうすぐ高速乗れるからなぁ。遅くなっちゃってごめんな」

「ホント、事故で通行止めでどうなることかと思ったけど、なんとか抜けて来れてよかったわ」


運転席の男の人と助手席の女の人が話している。

私はぼーっと暗くなった外の景色を眺めている。

ふと窓に映る自分の顔に焦点があった。

あの時の少女だ。私はあの少女になってしまっている。

という事は・・・・・・これは少女の記憶だ。


それに気がついた瞬間、パンという音と共に車がガクガクと縦に揺れた。

慌てて運転席の男の人が車を止める。


「うわぁ、パンクだ」

「修理の業者に連絡するね」

「ごめん、頼む。俺はちょっとパンク見てくるわ」


そう言い車を出るとすぐに後ろから黒い乗用車がきて私たちの横で止まった。

窓を開け話しかけてきた。


「ちょうど後ろ走っとって見えたんやけど、えらいパンクしとるよ」

「そうですよねぇ。参ったな」

「ちょっと、ここ圏外で電話できないわ」

「え!?」

「あぁ、この辺は電波通じんけん。よかったら電話貸してやるよ」

「あ、ありがとうございます!」

「じゃぁ奥さんとお嬢さんも。こんな所で残すわけにもいかんけん」


ダメ。絶対ダメ。ついて行かないで。

私は叫ぶ。だが私の口は動いてくれない。


その後の流れは私たちが辿ってきた道と一緒だ。

祭りがあると言われ、夜詣りに参加。

そしてあの祠の前で、村人たちに殺されてしまった。


運転席の男の人はきっと父だ。助手席はお母さん。

二人は最後まで私を守ろうとギュッと力強く抱きしめる。

だが四方八方から、あの笑顔を浮かべた老人たちに農具で殴られ事切れてしまう。

最後私だけになった時、あの泥人間が祠の後ろから出てきた。

私は恐怖でかたまり、持っていたあの絵本を抱きしめる。

泥人間は私の両肩に手を添える。

そして口を大きく開けた。

真っ黒な泥の中で、歯だけがブツブツと生えている。

人間ではありえないくらいの大口を開け、私を頭から飲み込んだーー




********************


「・・・・・・・おい!ーーーな!ーーーーひな!」


私はどうやら気絶していたらしい。

心配そうな潤が私を揺すり起こしてくれた。


「私、いまーー」

「急に倒れたからビックリしたぞ!」

「あのね、今この子の記憶に入ったみたい」

「ん?」

「この子ね、殺されちゃった。この村おかしいよーー」


ありえない事の連続で私はもう限界だった。

なんでこんなちっちゃい子まで殺されなきゃならないのか。

ありえない、ホントありえなさすぎる。

気がつくと私は涙を流していた。

それをそっと潤はぬぐってくれた。

その顔はとても優しく、頼れる大人の顔つきだった。


「あぁ、命をこんな扱い方していいわけがない」

「うん」

「絶対にこの村、終わらせるぞ」

「うん!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


二人で決意した瞬間、洞窟全体が激しく震え始めた。


「地震だ!」


座っていたのに体全体がバネの上に乗っているように上下に振られる。

大小の岩が落ちる音が重なり反響し、思考がまとまらない。

壁の隙間から水が勢いよく出てきている音もする。

そして入り口に轟音を響かせ大岩が落ちてきた。

私たちは完全に洞窟に閉じ込められてしまった。



第6話、お疲れ様でした!


少女の凄惨な記憶を知り、「絶対にこの村、終わらせるぞ」と静かに、しかし激しく怒りを燃やす潤。主人公として最高に格好いいシーンでしたが……その決意の直後、二人を最悪の地震が襲いました。

大岩に塞がれ、完全に閉じ込められた洞窟。そして不気味に響き始める「水の音」――。


次回、第7話は【7月5日(日)の18:10】に更新予定です!

次回、崩落寸前の水没洞窟から二人は生き延びることができるのか!? 命がけの限界脱出サスペンスが開幕します!


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