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第五話 洞窟

第5話をお読みいただきありがとうございます。


前回の絶望的な監禁状態から、潤の意外な“技術”で物語が動き出します。

そして極限状態の中、ひなにある兆しが――。

どうぞお楽しみください!

「ん・・・・・・」

鈍い体の重さを感じながら目が覚めた。

あれからどのくらい時間が経ったのだろう。

冷たい場所に寝かされている。

意識は戻ったが目の前が真っ暗だった。

そして直前のことを思い出し鳥肌が立った。

そうだ、私は黒沢に後ろから袋を被せられ首を絞められたのだ。

思い出すとあの時の苦しさが蘇り息苦しくなる。

「どおんけ様の生贄だ」その言葉が脳内でリフレインする。

目が覚めたということは死んではいない。

だがきっと殺されるのだろう。

思い出すだけで息がしづらくなる。

だけど私はまだ、死んでいない。

できることをやろう。

手足は縛られていて外れる気配はないがとりあえずなんとか壁を使って体を起こす。

体を捻ると手の紐がピンと張る感覚があるのできっとどこかに繋がれているのだろう。

壁を使って這うように体を起こしたので肩に切ったような痛みを感じた。

これも生きている証拠だ。

頭には分厚い布製の袋を被せられており、噛んで引っ張ってもびくともしない。

地面は硬く表面のぬめりが気持ち悪い。

最初は恐怖で感じていなかったが、カビ臭い匂いが充満しており息苦しさを助長している。

これだけ動いても声をかけられないということは見張りはいないのか。

いや、この様子を見て笑いを噛み殺している可能性もある。

今度はじっとして周囲の音に耳をそばだてる。


ザッ、ザッ

ズズゥ


何かが近くでうごめいている。

人間ほどの大きさの何か。


地鎮祭を思い出し全身の肌が粟立つ。

やばい。

息を殺してなんとかやり過ごそうとするが確実に“それ”が私の方へ近づいている


ズズゥ、ズズゥ

ザッ、ザッ


“それ”は私の前でピタッと止まった。

静寂がその場を支配する。

風の音も何も聞こえない。

自分の心臓の音だけが体の中を通って鼓膜に当たる。


バッ


突然頭の袋が取られた。


「潤!」

「よかった、ひなだ」


暗い中、潤がライターに火を灯し立っていた。

私の顔を照らして安堵した表情を浮かべている。

その表情を見て安心感から涙が出てきてしまった。


「どうした?どこか痛いか?」

「ううん、大丈夫。ちょっと安心しただけ」

「よかった。ちょっと待ってろ」


そういうと私の手足を縛っていた縄を解いていった。

その間、火は消えていたが逆に暗闇に少し目が慣れてきた。

ここは大きな洞窟のようで、どこから入ったのかうっすらと光が入っている。


縄が解かれ、やっと自由に体が動かせる。

つい手首をさすってしまう。


「でもどうやって出たの?」

「あぁ、こういうのはコツがあるんだ」


そう言うと潤は両手首を内側同士でくっつける動作の後、横並びの動作に回転させた。


「あっ、確かにそうしたら隙間できるね」

「だろ?生きる為の知恵だよ」


得意げに自分の頭をトントンと突くが、こんなことが咄嗟に出てしまう知恵とはなんなんだろう。


「ここは結構使われているみたいだな」


潤がそう言いながら私の後ろの壁を蹴った。


バキッ


木が折れた音がして何事かと振り返ると、そこには壁に打ち込まれた手すりがついていた。

その手すりは等間隔で左右に伸びており、先が見えない。

どうやら私の拘束はその手すりについていたらしい。

潤は蹴り折った手すりの手頃な棒を手に取ると、私の頭に被さっていた袋を巻きつけライターで火をつけた。

潤が松明のようにかかげた炎が、周囲の暗闇をなめる様に照らし出す。

そこには、私と同じように頭に袋を被せられた作業員たちの姿があった。

潤は一人ずつ頭の袋を外し、ペシペシと起こしていく。

手慣れた様子で皆の縄を解いていく。


トトトッ


後ろから軽い足音が聞こえてきた。

振り返るとそこにはジーパンにTシャツの小学4年生くらいの少女がこちらを見ていた。


「あなたも捕まったの?もう大丈夫だよ」


怖がらせないように両手を広げ、膝をついて目線の高さを合わせながら話しかける。

反応はない。


「私たちは捕まえたりしないよ。一緒に警察に行こう」


そう笑顔で話しかけると女の子は私たちとは逆方向に走っていってしまった。

こんな所で女の子を一人にさせるわけにはいかない。


「待って!本当に何もしないから!」


トトトトト


「行かないで!」


離れる女の子を追って私も走る。


「おい!ひな!一人で行くな!」


後ろで潤の声が聞こえるが女の子を見失ってしまう。


「女の子がいたの!私は大丈夫だから!」


そう言いながら転ばないように小走りで追いかける。

潤は囚われていた工事の人たちに出たら警察に連絡するように指示を出し私たちを追ってついてきている様だった。


女の子を追いかけているとほどなくして広いドーム型の空間に出た。

その中心に女の子は立っていた。


「危ないから、ね?こっちにおいで」


そう問いかけると、スゥーっと消えてしまった。


「え?」


どう言うことだ。

すると潤が追いついてくる。


「おいひな、女の子ってなんだ」

「あそこで捕まっていたのは俺らだけだぞ」


息を軽く切らせながら言う。

私は今目の前で起きたことが理解できずに潤の顔をみつめている。

すると潤は急に厳しい顔つきになった。


「ひな、動くな」


そう言いながら潤が私の足元に視線を投げている。

視線の先を辿っていくと、そこには人間の白骨死体がボロボロの服を着たまま横たわっていた。


第5話、お疲れ様でした!

潤の鮮やかな縄抜けで脱出が始まるかと思いきや、少女に誘われ行き着いた先は無数の白骨死体が転がる深淵でした……。


囚われた二人の決死の脱出劇をこれからも追いかけたい!と思ってくださった方は、ぜひページ下部にある【ブックマークに追加】や、評価の【☆☆☆☆☆】を★★★★★にして応援していただけると、本当に嬉しいです!

これからもよろしくお願いいたします!

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