第四話 生贄宣言
第4話をお読みいただきありがとうございます。
人骨と泥の怨霊が吹き出す中、いつも無気力な潤がプロとして大幣を振るいます。少年漫画風のバトルと、その後に待ち受ける急転直下の展開をお楽しみください!
忌砂から溢れ出る黒い泥を前に、私は動けなくなっていた。
こんな時に何をしたらいいかがわからずただ震える体を抑え込むことしかできない。
本来地鎮祭なんて正直つまらないただの儀式だ。忌砂に鍬を入れたらほぼ終わり、派手さも面白味も、砂から人骨や泥が溢れることなんて一度も経験したことがない。
頭の中が真っ白なのにグルグルと思考だけ空回りしている様だ。
「ひな!大幣!長い方!」
潤が私の方をまっすぐ見て叫んだ。
必要最低限の単語のみの指示だが今の自分にとってはすごく助かった。
私は儀式の時に間違えて渡しそうになり、そのままお供え物を置いていた台の脇に立てかけていた柄の長い大幣を引っ掴み、潤の方へ投げ渡した。
大幣をがっしりと掴んだ潤はその勢いのまま床にひと突きした。
コーーーーーーーン
澄んだ音が山を駆け抜ける。
そして泥の噴出が止まった。
「ふう」
潤も私も一息ついた。
状況が飲み込めていない外部の工事作業員の人たちはあんぐりと口を開けたまま固まった。
すると潤が現場監督に向かって口を開いた。
「警察に連絡お願いします。人骨出たんで」
「お、おう・・・・・・わかった、すぐ電話するわ」
そう言ってポケットからスマホを取り出しいじり出す。
私はその時違和感を覚えた。
村人たちだ。彼らはなんで誰も動いていない?今も笑顔のままだし・・・・・・
その時現場監督が叫んだ
「あかん!電話繋がらんぞ!」
え?昨日は普通に使えてたのに。
そう思いながら巫女服に隠していた自分のスマホを取り出す。
“圏外”の表示。
なんで、こんな時にーー
「どおんけ様がおいでなすった」
黒沢の発言と同時にもう出るのを止めていた泥がゴポゴポと震え始め、その場で幾つかの盛り上がりを作っていく。
だんだんと大きくなっていく泥の塊が6つ。
するとそれはみるみる人型に形を成していった。
バサッ、バサッ、バサッ、バサッ
コーーーーーーーン
紙の束が左右に振られる音がした。
潤が大幣を振り、最後に地面に突き立てた。
次の瞬間泥人間は大きく弾かれたように吹き飛ばされる。
よく見ると地鎮祭の時に四角く回っていた通りに見えない壁が出来上がっていた。
結界だ。初めて見た。こんな事ができる神職は見た事がない。
「では皆さんはここにいてください。ここから出たら安全は保証できませんので」
そういうと潤は結界を背に大幣を肩に担いで泥人間の方へ駆けて行った。
オォォォォォォォォ
あの神降ろしの声を発しながら泥人間に近づき大幣を振り下ろす。
すると泥人間がパシャっと形を無くし、足元には人骨や生前着ていたであろうカラフルなアウトドアブランドの服の残骸がボタボタと落ちてくる。
1体、2体、3体と走り回りながら払っていく潤。
そこに残りの3体が同時に飛びついてきた。
それぞれが泥の隙間から覗くドス黒い歯を潤の体に突き立て、容赦なく噛み付いている。
潤は「ぐうぅ」と悲鳴を噛み殺し、その分顔が苦痛に歪む。
すると脇腹に噛みついた泥人間の頭を鷲掴みにし、太ももに噛みついたやつにぶち当てた。
ゴシャっと骨が潰れる鈍い音がし、そのまま地面に落下した。
潤は鬼の形相でそのまま重なり合った2体を上から祓い、背中に噛みついていた最後の1体を背負い投げで正面に転がし祓いきった。
泥と血でボロボロの潤がこちらに手を振って終わったと合図を送ってくれたので、私も全力で手を振りかえす。
すると潤の表情が険しくなり何かを叫んでいる。
「う・・・ろ・・・」
「ん?」
すると次の瞬間私は後ろから誰かに馬乗りになられ地面に倒れ込んだ。
振り返ろうとした瞬間袋状のものが被せられそのまま袋の上から紐で首を絞められた。
苦しく意識も遠のく中で、潤の言葉にならない叫び声が聞こえる。
私の横を何人もの人が走って通り過ぎたのが感覚でわかる。
きっと潤を捕まえに行ったのだ。
そして私の意識の最後に、黒沢の声が入り込んでくる。
「どおんけ様の生贄だ」
第4話、お疲れ様でした!
安心した瞬間に後ろから襲われ、地下の洞窟へ監禁されてしまったひなたち。工事の作業員たちも巻き込まれ、絶望的な状況です。
次回、第5話からいよいよ【地下洞窟からの命がけの脱出編】がスタートします!
監禁された暗闇の中、ひなの「ある異能」が目を覚まし、物語はさらに加速していきます。
次回は【金曜日の18:10】に更新予定です。
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