第三話 血塗られた地鎮祭
本日一挙公開の第3話です! いよいよ地鎮祭が始まります。
夜詣りも無事に終わり、旅館に帰ってきた。
温泉に入り直す気持ちにもならず、潤の「しゃべるな」のハンドサインが気になり問いただすことにした。
潤の部屋をノックするとすぐに中に入れてくれた。
「きったな!」
何をどうしたら到着してから数時間でこんなに部屋を汚せるのか。
明日の地鎮祭で使う祭具はなんとか地べたには置いていないものの、カバンや着替えはバッグが爆発したかのように床に飛び散っている。
「別に誰にも迷惑かけてないんだしいいだろ。で、聞きたいことはさっきの夜詣りのことだろ?」
「うん……血をとるとかありえなくない?」
「そうだな。だがあそこで拒否しても無理矢理にでも血を取られていたぞ」
「は?うそでしょ?」
「暗くなった森の中。部外者は俺らだけ。他は全員顔見知りの村の人間だけで誰が俺らの味方になってくれる?」
「確かに……」
「だろ?だからあぁいう時は大人しく従っておいた方が、痛い思いをしなくて済むってわけだ」
「でも痛かったもん・・・・・・」
そう言うと、潤が私の頭に優しく触れる。
「ひなに痛い思いさせてごめんな。俺がもっと早めにわかっておけば」
意外なことに潤が素直に謝ってきた。
私としては潤の言っていることが十分に分かるし、あそこで駄々をこねたとてどうすることもできなかっただろう。
だがなんだか自分のことを大事に思ってくれている様子が妙に嬉しくて口元が少し緩む。
「ふーん。悪かったって思ってるんだ」
「あぁ、ひなを連れていくべきではなかった」
私のカッとなり潤の手を払いのける。
「ちょっと!なんでそうなるわけ!私だって依頼で来てるんだから」
「でも未成年だ。大人は未成年を守らないといけないんだよ」
「そんな子供じゃないし!」
「子供だよ」
まっすぐ私の目を見て言われてドキッとしてしまった。
だがその発言自体には少し寂しさも感じた。いいバディだと思っていたのに。
私はまだ子供だ。その事実がやりどころのない苛立ちに変わってしまった。
「聞きたかったことはそんだけ!じゃぁおやすみ!」
感情を悟られない様に話を切り上げたがどうしても語気が強くなってしまう。
そんな私を優しく見送りながら、潤は「しっかり寝とけよ」と言ってくれた。
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次の日、朝起きたら潤の部屋からバタバタと準備をしている音がした。
あんなに散らかすからだ。どっちが子供なんだか。
そんなことを思いながら自分も手早く身支度をする。
今日は巫女装束を着るから薄めの優等生メイクで仕上げる。
巫女衣装のまま軽トラで昨夜の祠へ行くと言われているので気合を入れて装束に着替え、旅館の玄関口で荷物を持って待っていると、狩衣を着た潤が大きなボストンバックを抱えて小走りで来た。
「遅い」
「いや、時間ぴったりだろ」
「メイクもないのに何をそんなに時間かかるのよ」
「色々あんだよ男にだって」
そんな言い合いをしながら軽トラに揺られ現地に向かった。
到着すると外部の建設会社の責任者らしきおじさんが出迎えてくれた。
「いやぁ御影さんが担当で助かりました。ほらここ、神社本庁の届けない土着の神様だけじゃない?現場が怖がっちゃって工事引き受けてくれなかったのよ」
「皆さんゲンを担ぎますもんね」
「そうなのよぉ。今回祠も移設するって話だから余計に怖がっちゃってさ」
「あるあるですね。その辺もしっかりとやらせてもらいますんで、今日はよろしくお願いしますね」
潤とは初対面ではないらしく、仲良さそうに言葉を交わし自分の仲間たちの方へ戻っていた。
「こういう仕事よくあるんだ」
「まぁ俺はフリーだからな。こういう神社のない地域での出張はそれなりに」
「それにこういうのはちゃんと経費で下りるみたいだから払いもよくて」
そう言いながらまたクックと悪い笑い方をしている。
そんなこんなで私も祭壇の組み立てを手伝ったりしながら慌ただしくしていた。
途中さっき話していたおじさんが神事の終盤でやる砂の山にクワをエイと言いながら入れる穿初用の砂山を作っていた。どうやら土地の砂を混ぜないといけないらしく、コツがいるようだ。
そうこうしていると時間となり、いつの間にか村の老人たちも集まっていた。
厳粛な空気の中地鎮祭が始まった。
私は巫女としてその場その場で必要な神具を渡す役目を担っている。
最初の修祓というお清めの儀式の時、昨日トンネルで使っていた長い大幣を渡したら「ちげーよ」と声に出さずに言われて腹が立ったがそれ以外は滞りなく進んでいた。
修祓が終わり、降神の儀の際また潤の澄んだ「オォォォォ」という声が山に響く。
そしてお供物をした後祝詞という工事の安全と土地の平安を神様に届け
るターンやその場を四角く塩を撒きながら歩いたりと決まった工程を進める。
そして忌砂と呼ばれるさっき工事のおじさんが作った砂山に潤が鍬を振りかぶって力強く入れた。
そして潤が鍬を少し手前に引いた時に目を見開き固まった。
私の喉からも声にならないヒュッという音が鳴る。
砂から人の髪が大量に出てきた。
同時に、昨日トンネルで嗅いだあの生臭い鉄の匂いが鼻腔を突く。
その異変に気がついた工事のおじさんたちも、びっくりして立ち上がる。
ザクッ
潤がもう一度鍬で忌砂をひいた。
すると今度は人の頭蓋骨が転がり落ちてきた。
ゴポゴポ
水が湧き上がる音がし、忌砂から真っ黒な泥がヌタヌタと溢れてきた。
工事の人たちは混乱しその場から逃げ出しているがその横で村人たちはニヤニヤと同じ顔で潤と忌砂から出る黒い泥を見ている
「どおんけ様がおいでなすった」
ボソリと黒沢がつぶやいた。
潤はただじっと泥の発生源をじっと見つめていた。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!
綺麗に整えられた砂山から現れた、大量の髪の毛と頭蓋骨。そしてスマホは圏外……。ここから村の本当の狂気が牙を剥きます。
次回、第4話は【明後日の日曜日の18:10】に更新予定です!
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