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Lords od destrunction  作者: 珠玉の一品
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集合



 ディアブロの背に乗りエスタブリッシュを目指す私の視界に、今朝出掛ける前におっ建ててきた異常な大きさの巨石が映る。

 遠くからでもハッキリ見える私の視力の異常さには今でも呆れるが、そのお陰で今朝の状態と様子が少し違うことを認識し得た。

 逆三角形に立つ巨石の大きさは、最大外径がおよそ一km。設置面からの高さはおよそ百メートル。残りの百メートルは地中に埋められている状態だ。


 その外壁には均等配置された赤紫色に輝く八つの浮遊石が浮かび、更には赤紫の間を縫うかのように浮遊石と同じ大きさの黄色い魔石が並べられる。

 同じ大きさとは即ち直径が三メートルあるということ。遠目には豆粒にしか見えないが、実際の大きさは私二つ分と言っても過言ではない。

 更に赤紫と黄を取り囲むかの様に、半分の大きさの黄色い魔石が多数並べられていた。その魔石は姿勢制御用に設置した丙級の風の魔石であり、乙級の浮遊石と風の魔石の上に十六個、逆となる下側に八つ、更にその下に八つと、計三十二個が均等に並んでいる。

 そして、それらの魔石を押しのけるように、赤い魔石が中央にデンッと鎮座しているのだった。


「魔石の設置は完了しているようだな」


「はい、フルーレティに申し付けておきました」


「ほぉ、手際が良いな。流石は城代、この調子で頼むぞ」


「はい! ウフフ……」


 『取り敢えず褒めておけ』を基本戦術とする私は、昔の癖でついアスタロトをヨイショしてしまう。

 人間は全般的に、ダメ出しをするとすぐに凹み、褒め過ぎると調子に乗る、という非常にやっかいな性質を持つ。いくら魔族といえど、その辺は上位魔族である彼女も変わりはないようだ。

 満更でもなさそうな仕草で微笑むアスタロト。その様子を見ながら、「先ずは褒めろ」と言っていた尊大な態度のバーコードのことを思い出し、毛が乱れぬ程度に空想の中でその頭を撫でてやる。


 いや勘違いして欲しくないのだが、バーコードを否定している訳では決してないのだ。

 潔く丸めてしまうか、往生際悪く禿散らかすかは個人の自由であり、坊さんに見間違えられようと、薄い積載物が横風に靡こうとも、誰にも決して何かを言う権利は無いのだ。

 彼等は己の信じるバーコー道に従い、毅然としたプライドを持ちつつ明日を見つめる。ただそれだけのこと。


「それで、あれだけ風の魔石を配置したら、どれだけの速度が出るんだ?」


「そうですね……風の状態にも依りますが、状況が無風であれば音速に迫ると思われます」


「マッハ!?」


「まっは?」


 予想を遥かに裏切る機動力の余りの高さについ驚き、とある物理学者の名前を大声で叫んでしまう。

 並走しながら首を傾げるアスタロトに詳細を説明してやりたいのだが、"ある空間を振動が伝播する速度"の"ある空間"すら解説するのが面倒になり、マッハの定義についての説明を断念してしまう。


「まぁ……半刻で三百里進むと言いたかっただけだ」


「あぁ、なるほど。確かに、移動能力はその値に匹敵しますね」


「なかなか速いようだが、シャングリラの上にある建造物がその風圧で吹き飛ばされないか?」


「……あ、……飛びます」


「……アンカーを打っておけ」


 はい、と一礼するアスタロトの姿に五十五という数字が重なるが、何故その数字が思い浮かんだのかは今一つ判らない。

 不思議な感覚に包まれながらも、私如きド素人の指示で進む街造りの作業風景に、少しだけ熱いものが込み上げてきた。

 土地代ゼロ、材料費ゼロ、人件費ゼロという幸運なほどの好条件……ん? 人件費? というか、この国の給料体系は一体どうなっているんだろうか?


「アスタロト、一つ聞きたいのだが……」


「はい、どのようなことでしょうか?」


「お前達の給料体系はどうなってるんだ?」


「……きゅうりょう? ですか?」


 小首を傾げたアスタロトが、「本気」と書いて「何言ってんの?」と読めそうな表情をしてくる。

 なんだろう……今更何を当たり前のことを? とか思われているのだろうか?

 聞けば早いのだが、聞くのが怖い。化けの皮とは不意に剥がれてしまうもの。初めての夜に化粧を剥がす女性の心理とは、正にこのような状況なのだろう。


 いや! もしかすると単語が通じていないだけなのかもしれない。

 言い方を変えてもう一度だけ聞いてみるのが、この場におけるベストチョイスだろう。


「給金、だと判るか?」


「あぁ、お給金のことですか。我々は頂いておりませんが?」


「……え?」


「え?」


 見つめ合うこと数瞬、擦れ違うこと今もなお。まるで珍獣でも見るかのように、首を傾げたアスタロトが私を見つめる。

 何かおかしいことでも言ったのだろうか? 働いた分だけ対価を貰う。至極当然のことに思えるのだが……。


「お前達は給金が要らないのか?」


「カミュ様、国のため、主君のため無償で尽くすのは当たり前のことにございます。天から雨が降り、地より草木が生えるが如く、至極当然のこと。それに……意地汚く金銭を要求するのは、下等生物である人間だけでしょう」


 なんだろう……アスタロトが怒っているっぽい。

 給料の話をしたら喜ぶどころか、馬鹿にしないで! と切り返された。

 揺るがぬ忠誠心を無償で提供し続ける、か。ブラック企業を遥かに超える、どこぞの洗脳団体にそっくりだが……本当にそれで良いのか?


「そ、そうか。お前の忠誠心を疑うような言い方になって……すまな――」


「い、いえ! め、滅相もございません! 拙こそ出過ぎた真似をしてしまい、申し訳ございませんでした!!」


 彼女の怒りを鎮める為、謝罪と一礼でこの場を逃げ切ろうとしたが……"すまな"の時点で会話をぶった切られた。

 謝意を伝えようとしたら、すかさず遮られたということは、こちらの謝意が相手に伝わったということ。

 必死に頭を下げる彼女に配慮し、これ以上の謝罪は止めておくことにする。


「だが、感謝の気持ちを伝えられないのは、少なからず心苦しさが滲むな」


「な、なんと有難きお言葉。そのお気持ちだけで十分にございます」


 少しだけ涙ぐんだアスタロトが、手の平を組みながら私を見つめてきた。

 どの辺りで感動したのかよく判らないが、まぁ感謝してくれるというのだから素直に受け取っておこう。

 だが油断は禁物だ。そんな変態的に殊勝な思考をしているのは、このアスタロトだけなのかもしれない。ここは確信を得るためにも更なる確認が必要だろう。


「バチ、お前は給金が要らないのか?」


「え!? なんであたしなんですか!?」


「バチ! 言葉遣い!!」


「あ……も、申し訳ござません。ですが、あたしは……給金なんて欲しくありません!」


 この中で欲望に一番忠実そうな彼女なら、正直に答えるだろうと考え何気なしに尋ねてみたのだが……どうもやっちまったらしい。

 私からあらぬ疑いを掛けられた挙句、アスタロトに疑惑を完全否定する心の叫びを窘められた彼女。

 涙ながらに訴えるその姿に、流石の私も心が痛んできた。


「そ、そうだな。バチならばそう言ってくれるはずだと信じていたからこその質問であり他に意味など決して――」


「はい、存じております。取り乱してしまい申し訳ございませんでした」


 頬へ涙を伝わせながらも懸命に口角を上げて一礼する彼女の笑顔、それはとても眩しく美しいものだった。

 男らしさの欠片もない確認作業や、その場凌ぎの言い訳など簡単に吹き飛ばす、彼女の潔いその態度は密かに見習うべきだろう。

 それにしても……冷静を装いながら必死に語ろうとして、先ほど放った見事な棒読み。そして、それを言いきろうとした情けない私。その醜態を思い出すと羞恥心が今にも大爆発しそうです。


「バチ、これからもよろしくな」


「あ……はい、いえ。あたしこそ、よろしくお願いいたします」


 今度こそ自然に微笑むバチと、笑顔であろう私の視線が交錯する。

 やはり謝罪よりも感謝の方が、気持ちがより相手に伝わるのだろう。

 というよりも、考えなしの発言はもう止めることにしよう。こんなことで彼女達の忠誠心を低下させては、莫迦らしいにも程があるというものだ。


「カミュ様、一つだけよろしいでしょうか?」


「なんだ? アスタロト」


「カミュ様はあまりにもお優しいのです。ですがそのお気遣いが時として誤解を生み兼ねません。我々はその温かいお気持ちだけで充分にございます」


「……気遣い?」


 何言ってんだ……コイツ? 私が優しい? 見え透いたお世辞か? だがアスタロトの顔は真剣そのもの。

 給金について聞いた件が、給金を与えたいに勘違いされ、それが優しいに昇華したのだろうか?

 アスタロトこそ気を遣っているように感じるのだが、余計なことを言うのは今は控えた方が良さそうに思えた。


「配下の者をそれ程まで考えて下さる主君は、カミュ様を措いて他には居られないでしょう」


「アスタロトよ、お前は私を買い被っているぞ?」


「いえ! 拙には判ります。カミュ様の、海よりも深い御心が」


「そ、そうです! あたしにも判ります!」


 アスタロト、それにバチよ……それは空よりも広い勘違いだ。


「お前達は大切だからな……」


「ご厚情、恐悦至極に存じます」

「はい! ありがとうございます!」」


 心にもない虚言を吐くと、心が痛くなるのは私だけでしょうか?

 リンゴを噛むと歯茎から血が出る、そんな切なさで私は今、心を締め付けられています。


 胸に手を当て痛む心を押さえ付けながら、物欲しそうに此方を伺う残り三人にも会釈する。

 只の社交辞令なのだが、私と視線を合わせた三人の口元に笑顔の華が咲いた。

 そうか……笑顔とは伝染(うつ)るものであったか。膨れっ面よりは笑顔の方が平和で楽しいはず。そう思い直した私は、今後も笑顔で過ごすことを心の中で密かに誓った。


「それより、大分シャングリラに近付いたな」


「しゃんぐりら?」


「ん? あぁ、そうか。あそこに逆三角形の大きな岩山が見えるだろう?」


「はい。もの凄く不自然で不安定に見えますが、あれが"しゃんぐりら"なのでしょうか?」


 小首を傾げるバチを見て、シャングリラの説明が未だだったことを思い出す。


「あぁ、あれが今建設中の城だ。名はシャングリラ、意味は神秘主義……ん? 違ったか? まぁ良い。そして麓には街を造ろうと思っている」


「なるほど……シャングリラですか。カミュ様が造られる城に最も相応しい名前かと思います」


「ん? 私は造らないぞ、ラゴ。造るのはアスタロトだ」


「え? あ! いえ、名前が……カミュ様の感性が非常に素晴らしいと……」

 

 私の指摘でしどろもどろになるラゴ。指摘した私が言うのもなんだが、なんだか彼女が可哀相になってきた。


「ありがとう。実は、私も密かに気に入っている」


「そ、そうでしたか! (わたくし)めも実に良い響きだなと思っておりました!」


「ふふ……そう、ですね。その通りです」


 城代であるアスタロトが気持ち悪い笑みで私を見つめる。

 彼女達の相手がもう面倒になった私は、そんな彼女達から視線を外して聳え立つシャングリラを見つめた。

 そしてその麓に、十数人から成る男女の集まりを見つけるのだった。



 

 大きさの揃えられた巨石や巨木が山と積まれる広場に、見知らぬ三名の男性と十名の女性が集まっていた。

 彼等はバディスとレストエス、それにフルーレティの後ろで、畏まりながらも一糸乱れることなく整然と居並んでいる。

 更にその後ろには雲霞の如き無数の魔物、いや、ゴーレム達が整然と跪いているのだが……なんだろうこの絵面。あまりの奇妙さに思わず頬が引き攣ってしまう。

 ふと一人足りないと思い出し視線を巡らせれば、カメオウが何故か変態と痴女から距離を取って安堵の笑顔を見せている。……何故だ?


 それより問題なのはバディスとレストエスの最低コンビだ。

 昨夜、魔石を仕込んだ靴を作れと命じたのに、レストエスは魔石を仕込まないどころか靴の裏に訳の判らない棘を生やす始末。

 どこぞのヘビメタも真っ青な剣山のような金属製の棘を、奴は靴の裏に付けやがったのだ。見方を変えれば新しいシークレットブーツに見えなくもないが、そんな細やかな配慮など絶対に盛り込まれていないだろう。


 ちなみに、レストエスが作ったのはロングブーツだ。裏の剣山を無視すれば見た目だけは、まぁ妥当と言えなくもない。だが一方の変態が作ったのはこともあろうに何故かヒール。しかもエグイほどの高さを誇るピンヒールだ!

 奴は私を女装癖のある異常者だとでも思っているのだろうか? まぁ遺憾ではあるがそこは百万歩譲って堪えたとしよう。だが更に最悪なのは、そのヒールの先端が異常なまでに尖っていること。

 どう考えても歩く度に踵が地面に刺さるよな? 尖っているんだから当たり前だよね? アイツはそんなことも判らないほど脳ミソが腐っているのか?


 自作の靴を見せながらニヤニヤと笑っていた二人を思い出し、思わず眉間と拳に力が入る。

 だがここで愚痴っても仕様がないと悟りを開き、馬鹿二名を思考の外へと追い出して眼前の執事達へと意識を向けた。


「アスタロト、彼等は?」


「アンニバレ、ガスパリス、それにゴルトにございます」


 名前を呼ぶ順番から察するに、アスタロトの執事がゴルト、バディスがアンニバレ、レストエスがガスパリスだろう。

 それにしても……黒の詰襟とは、実に古風な出で立ちだ。鷹の目に白い手袋を付けたその姿は、まるで何処かの暗殺者のようでもある。

 それより気になるのは、彼等の顔がまったく同じであること。もしかして三つ子なのだろうか?


「カミュ様、お久しぶりにございます。御容貌に大きな変化があったようですが……ご壮健そうで安堵いたしました」


 ゴルトと呼ばれた執事が、厳しい表情のまま堂に入った一礼を見せる。

 一見すると敬意の感じられる所作。だがその目は笑っていない。寧ろガンを飛ばされているような気さえしてしまう。


「あぁ、久しぶりだな。ゴルト。お前も健勝そうで何よりだ」


「ありがとうございます」


「ところで、一つ聞きたいのだが……お前達には姉が居たりするか? "よし子"という名前の……」


「我々には、姉はおろか兄弟さえ居りませんが……申し訳ございません。カミュ様の仰りたいことを、私は察することが出来ません」


 物凄く申し訳なさそうに謝罪するゴルトを見て、下らない質問をしてしまったことを激しく後悔する。

 元ネタさえ知っていれば苦笑か失笑を誘えただろうが、それが判らなければバディス級の意味不明さであったことだろう。

 あまりの申し訳なさに思わず謝罪を考えるが、ここで謝っては彼等の期待を裏切るような気がして、此処は一先ず堪えることにした。


「いや、なんでもない。あまり気にするな」


「ありがとうございます」


 深々と一礼するゴルトに、罪悪感が一気に膨らむ。


「アンニバレ、ガスパリスもよく来てくれた。よろしく頼むぞ」


「「ありがとうございます」」


 ゴルト同様に深々と一礼する二名とゴルトを見ながら、先ほど心に誓った通りに作り笑顔を彼等に向ける。

 そしてその笑顔のまま、最後列に並ぶメイド? 達へと視線を移した。


「それで、後ろに控えているのは?」


「はい。パラス、ジュノー、ベスタ、アストラエア、ヘーベ、イリス、フローラ、メティス、ヒギエア、パルテノペの十名にございます」


「メイド……だよな?」


 アスタロトの紹介を聞き、釣り目がちの碧眼を伏せ一礼する女性達。病的なほど透き通った色白の肌に金髪のロングヘアー。見るもの全てが見惚れるほどの美しい顔立ちなのだが、眉一つ動かさないその無表情さに一種の奇妙さが漂っている。

 まぁ無表情については、仕事に対する真摯な態度と思えば左程気にならないのだが……どうしても気になるのはその衣装だ。セーラー服に白いエプロン、何の冗談なのだろうか? コスプレにしてはあまりにも芸と品がない。

 そのことについては百歩譲るとしよう。だがそれよりも気になるのは、彼女達の姿形がまったくの瓜十個なこと。それがまた彼女達の不気味さを一層引き立たせているのだ。


「はい。五百名からなるメイド隊の、名簿一番から十番までの十名です」


「ほぉ……ところで五百番は誰なんだ?」


 小首を傾げながら生真面目に答えるアスタロトへと、つい興味本位の質問を投げ掛けてしまう。

 というか、五百名全員の名前を本当に覚えているのだろうか?


「ゼリヌールにございます」


「三百十二番は?」


「ピエレッタにござます」


「なるほど。なんとなくだが思い出してきた……気がする。二百二十二番!」


「ルーツィアにございます」


 アスタロトは異常なほどの、変態じみた記憶力を有しているようだ。

 暴言を吐こうものなら永遠に記憶されそうで……ちょっと、いや、かなり怖い。やはり発言には特に気を付けるべきだろう。


「ちなみに、メイド長は居るのか?」


「今はエーリューズニルにございますが……(クビ)にしますか?」


「いや、そのまま継続だ。何か失態を犯した訳でもあるまい」


「彼女の存在そのものが失態のような気もしますが……畏まりました」


 何故だか判らないが、アスタロトの発言が辛辣を通り越して激辛になっている。

 エーリューズニルとは一体どのような女性なのだろうか? 少々気にはなるが、あまり気にしたくないのも偽ざる本音だ。

 まぁメイド長のことは後から考えよう。それが良い、そうしよう。


「メイド達よ、よく来てくれた」


 無言で一礼するメイド達を一瞥して、彼女達への説明を続ける。


「お前達にはこれから建設する城で働いて貰う訳だが、残念ながらまだ城は完成していない。それまではこの住宅に住んで欲しい」


 先日接収した家屋をインベントリから取り出し、目の前の空き地へと次々と並べていく。

 質の悪そうな家から爆散……いや解体したので、今残っているのは状態の良さそうな家だけだ。

 インベントリから最後の一棟まで取り出すと、眼前には計十棟の家屋が立ち並んだ。配置は直列に五棟並べての二列。


「アスタロト、カメオウ、レストエス、バディスは好きな家を選んで良いぞ。フルーレティと執事達は主人と一緒の家に。ラゴ達は……すまんなカメオウ、一緒に寝泊りしてくれ。そしてメイド達、お前達は二名で一つの家だ。残る一棟は取り敢えず空けておくように」


「カミュ様はどちらでお休みに?」


 アスタロトとレストエスの目が一瞬光ったように感じた。

 だがそんなことはあるはずがない。私は自分の思い過ごしと結論付けて、先ほどの話を引き継いだ。


「私はログハウスで過ごす」


「そ、そうですか……承知しました」

「えぇ……」


 アスタロトとレストエスに落胆の色が見えるが、間違いなく私の目の錯覚だろう。

 気を取り直して周囲を見回すと、配下全員が一礼していることに改めて気付く。

 それを彼等からの承諾の意と受け止めた私は、更に説明を続けることにした。


「それで職場についてだが、パラス、ジュノー、ベスタ、アストラエアは城に、ヘーベ、イリスはカメオウ宅。フローラ、メティスはバディス宅に、そしてヒギエア、パルテノペはレストエスのところだ」


「「「畏まりました」」」


 見事に揃った一礼を見せるメイド達に笑顔で頷き、アスタロトに作業の続行を指示する。

 そして配下全員が私の言に従い、即座に動き出す。

 アスタロトが全体への指示を出し、フルーレティがゴーレム達へと指示を出すようだ。


「一つ言い忘れたが、ディアブロは執事とメイド、それと馬車、そしてこの家屋を守ってくれ」


 ディアブロ達から熱い視線が注がれる。


「あとはバイコーン、お前達は馬車の横で待機だな」


 バイコーンからの熱い視線を受けて、説明が終わったことを暗に察した。

 一方の配下達は各自協力しながら、百メートル上方の大地へと物資を運び始めている。

 城の完成はまだまだ先になるだろう。だからこそ私は考えなければならなかった。この先、どうやって暇を潰すのか、を。




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