初めての武具製作でございます
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AUTHOR:今日は二本立てで行きます。一人称視点から三人称視点に変える場合は意図的に区切るようにしています。そのため、本来一話に収めるところを分割しました。ご容赦ヲー。
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今いる場所は、前日に購入した屋敷の地下室。光煌魔法の照明だけが頼りの広い空間だ。
その中心で、俺は気合を入れるように大きく息を吐いた。
「よし。やるか!」
目の前には剣や斧、槍などが刺さった樽が大量に置かれている。
他の武具店も見て回った結果、意外に安かったので大量に買い込んでしまったのだ。必要な物だし、量が多い分には問題ない。
武器の重量を合計すると約3000キログラム、つまり三トンほどになった。
今は地下室だから大丈夫だが、上階でやると床が抜けないか少し心配になるな。
「旦那サマー。喉が渇いた時のために、お水を置いておきマスネー」
「ん。ありがとな、レンファ」
声の方向に視線を向けると、地下室に下りるための扉からレンファが顔を出している。
チャイナ服を控えめに盛り上げる胸の前には、水差しとコップの乗ったお盆が見えた。
「……そういえば、この家って水はどうやって調達しているんだ?」
思わず小声で口に出してしまった。
レンファは精神体なので魔力が使えず、代わりに霊力という固有ステータスを所持している。これはサイコキネシスを使う際に少しだけ消費されるものらしく、魔法のように水や火種を作ったりはできないらしい。
なのに何故、彼女は飲み水を持っているのだろうか。
そう考えていると、近くまで来た彼女の顔に呆れが浮かび上がる。
「……普通、そこは屋敷を買った時に確認すると思うのデスケド」
いやまぁ、魔法が使えたら大抵は何とかなるじゃん?
「ならないから、旦那サマも鉄を購入されたのデショウ?」
そう言われてはぐうの音も出ない。
この世界において魔法が便利であることに間違いは無いが、実は魔法で作ったモノは長く持たないという欠点があった。
魔法で生成したお湯を風呂として数時間使う程度なら大丈夫でも、地墜魔法で家を建てたりすれば三日と経たずに崩れ落ちてしまうらしい。
それなら「トランディア王城に使われている浮遊魔法は大丈夫なのか?」とベルンに聞いてみたところ、あれは女王が常に魔力を注ぎ続けているから問題ないのだとか。迷宮も同じ理由で、核が常に魔力を注ぎ続けているからこそ形を維持しているんだとさ。
しかし当然ながら、その二つは例外中の例外であり、魔法による生成物は基本的に短命とのこと。
そういった理由があるため、俺は自前で鉄を生成せず、わざわざ武具店に行って購入してきたのだ。もし魔法が有効利用できるなら、そもそも屋敷を買うことなく自分で建築していただろう。
「まぁ鉄や家屋はともかくだ。水くらいなら俺が魔法で何とかできるし……」
「それは旦那サマだから言えることで、水氷魔法が使えない一般人は無理デスヨ。ワタシが持ってきた水は、屋敷の裏にある井戸から汲んできたものデス」
……そうだったのか。
レンファのインパクトが強すぎて、普通に見落としていたよ。
もしかすると、他にも用具倉庫とか花壇があったりするのだろうか。
「そうデスネ、色々と『存在』していマスヨ。二代前の主人が首吊りしてから夜に蠢く木だとか、庭師が腕を落とされた食人薔薇だとか、あとは……」
「いや、もういい。それ以上言わないでくれ」
レンファは顎に指を当てて列挙していくが、さすがに途中で止めさせた。
そんなものが残っているとは、さすがに予想外だ。
マズい物を残していたことが女性陣に知られると、俺はツバキさん以外から袋叩きにされる可能性がある。
後でこっそり始末しておこう。
「しかし、今は何でもないかのように挙げ連ねていったが、怖くないのか?」
「……? いえ、別に怖くないデスケド?」
首を傾げているところを見るに、本当に怖くないらしい。
自宅の庭にそんな得体の知れないものが存在していたら、俺でも怖いんだがな。
「それはデスネ、ワタシなら霊狂植物を使役できるからデスヨ。叱ったらちゃんと聞いてくれるので、とても良い子達デス!」
まるで我が子を自慢するかのように、レンファが胸を張る。
(意味は大体予想できるけど、霊狂植物って初めて聞く言葉だな)
思うに、一年以上も怨霊の影響を受けたために変種となった植物なのだろう。
その考えを肯定するかのごとく、頭の上からザワザワと木々が揺れる音が聞こえてきた。
……風が吹いただけ、だよな?
「その霊狂植物って、躾れば無害なのか?」
「当然デス! ワタシが言い聞かせてますから、お嬢サマ方に襲い掛かることは絶対に無いデスネ!」
そうだそうだ!と言わんばかりに、再び木々の揺れる音が聞こえてくる。
しかも、先ほどとは違って金属を引っ掻くような音も聞こえてきた。まるで、薔薇の棘が鉄格子を締め上げ、我も我もと自己主張しているかのような……。
うん。これを気のせいで片付けるのには無理があるな。
そしてレンファは今、聞き間違いでも何でもなく『襲い掛かる』と言った。
もうこれだけで、その霊狂植物とやらは見てはいけない、知ってはいけない類の物だと確信できる。
(……地下室にいたことが幸いしたか)
冷や汗をかきつつも、俺は内心で安堵した。
どんな姿形をしているかは知らないが、事前情報無しに霊狂植物とやらを直視した場合、なけなしのSAN値がゴリゴリと削られていただろう。
最悪、そのまま発狂しかねない気がするぞ。
「一応、正面から入ってきた者には襲い掛からないよう言っておいてくれ。客かもしれないからな」
「……ソレは、門を飛び越えてきたりする侵入者には容赦しなくていいということデスカ?」
まぁ明言はしなかったが、そういうことだ。
家人に無害かつ防犯に使えるのであれば、植物(?)は残しておいていいだろう。
俺が袋叩きにされる程度で女性陣の安全が補強されるなら、代償としては安いものだ。不届き者がどうなろうと知ったことではない。
「ただ、俺が気付いていなかったようにアリサ達も気付いていないんだ。皆にも説明だけはしておいてくれ」
そうでないと、特にアリサなんかは瞬時に燃やしてしまうだろう。
炎熱魔法が効くのかという疑問は残るがな。
「ナルホド、分かりマシタ。新しくハーレムのお嬢サマ方を増やされる時は知らせてくだサイ。躾けておきマスネ」
「いや、だからハーレムじゃ……」
ない、と言おうとして、改めて自分の周囲を客観的に振り返ってみる。
(美女が二人、美少女二人、美幼女三人。そして中華幽霊メイドが一人か……)
駄目だ。どう考えてもハーレム以外の何物でもないぞ。
だが、四姉妹に関しても最後の一線は越えておらず、何故か唇へのキスもされていない。それでいて下の口に……いや、思い出すのは止めよう。
ともかく俺自身が手を出しているわけでは無いが、現状でそれを主張しようとも何人が信じるのかという話だ。
おそらく自分が他人側でも「嘘乙」と鼻で笑うに決まっている。
「……何でもない。その時は頼むよ」
口を開けば開くほど、自分の墓穴を掘り進めるだけだ。
この話題は打ち切って武具製作の作業を始めることにしよう。
まずは、使えない武器を使える素材に変換することが必要だ。
そのために、武器が詰まった樽に触れて『等価錬金』のスキルを発動させる。
「きゃっ!?」
「うおっ!?」
激しい光が視界を塗りつぶし、思わず目を閉じてしまう。
数秒ほどして目を開けると、樽の中には大量の柄や革。そして数本のインゴットが残るのみとなった。
「……さすがは凄腕の魔法師デスネ」
「まぁ、こんなに綺麗な玉鋼のインゴットになるとは思っていなかったけどな」
思ったよりも光り輝く延べ棒が出てきたので、俺自身も少しだけ驚いてしまう。
この『等価錬金』は、指定した金属を同等の価値を持った別物質に変化させる錬金術スキルであり、当然ながらランクはSと非常に高い。戦闘に使うとなれば、敵の武器を問答無用で鉄くずに変化させることもできるだろう。
等価錬金が強力なのは、変換可能な物質に制限がないと言うこと。その気になれば金だろうがオリハルコンだろうがミスリルだろうが何にでも変換できるという利点があった。
その代わり……
「……かなり減ったな」
「そうデスネ。一本一キロとしても、百本も無いデス」
玉鋼のインゴットを数えながら、レンファが不思議そうに言った。
粗悪品の鉄をまともな素材に変換するとなれば、価値に関して等価交換というわけにもいかない。元よりも大幅に質量が減った理由は、粗悪な鉄製武器と純粋な玉鋼インゴットの間に、それだけの差異があったからだ。
もしオリハルコンを練成しようとした場合、質の悪い鉄を三トン全部変換したとしても、よくて砂粒サイズにしかならなかっただろう。
「まぁいいか。次の工程に行こう」
いよいよ武器製作の本領だ。
魔法スキルを使って、石の炉と金床を四つずつ、鉄のハンマーを数個、鋏に鏨に水釜など、必要な物を作っていく。鍛冶師スキルがあるため、何が必要なのかは事前に分かっていた。
ちなみに自前で用意したのは、玉鋼インゴットと炉を熱するための石炭だけだ。
最初は炉も買おうと思っていたのだが、今から作るのはとりあえずの試作品に過ぎない。ならば武器はともかく、道具自体は寿命の短い魔法生成品で十分だろう。
「器用デスネー。その手管でお嬢サマ方を落とされたのデショウカ……」
レンファが何か言っているが、俺は集中しているので聞こえない。
断じて「いや向こうが勝手に落ちていたんだよ」とは思っていない。
炉に入れた石炭を炎熱魔法スキル『アフターバーナー』で熱し、そこに玉鋼のインゴットを投入。
赤熱化するまでの間に、今度は別の作業へと取り掛かる。
「ソレは……小型ゴーレム、デスカ?」
後ろから見ていたレンファの問いに、俺は肩を上げて答えた。
魔法スキルと人形師スキルを使って作り上げたのは、灰色の石製ゴーレム。約一メートルほどのそれが八体だ。
角ばった身体で無骨な外見をしているものの、そもそも数日とて持たないのだから拘っても仕方がない。ゴーレム君には悪いが、これで我慢してもらおう。
「こいつらを使えば、ある程度の工程を自動でやってくれるから楽でいいよな」
「そうデスケド……それでもここまで安上がりなのは、旦那サマだからだと思いマスヨ……」
そりゃ人件費ゼロで、なおかつ鍛冶道具は無料だからな。
「いいじゃないか。家計を預かるメイドとしてなら、財布から出て行く金が少ないに越したことはないだろ?」
人形師スキルを使ってゴーレムに動作アルゴリズムを覚えさせながら、俺はそう返す。
「……間違ってはいませんケド、ワタシに家計を任せてもいいのデスカ?」
「元よりそのつもりだよ。将来的には買出しとか行ってもらいたいし、レンファとしても外出してみたいだろ?」
「そう、デスネ。その為には、早めにアレをお願いしたいデス……」
「任せろ。あまり待たせないよ」
そんな他愛もない会話を交わしつつ、数分ほどでゴーレムの設定を終えて一息つく。
すると、八体のゴーレムは即座に仕事を開始し、炉から取り出した玉鋼インゴットをハンマーで叩き始めた。
見たところ心鉄と皮鉄を同時に製作しているようで、最終的には四本の武器が仕上がるように動いている。
「これで良しと。後はゴーレムに任せて、俺は防具と小物を作るかな」
彼らに仕事をさせている間、俺も俺で仕事がある。
作業の邪魔にならないよう、ゴーレムより少し離れてから取り出したのは、二日前の迷宮で倒したボス『アシッド・センティピード』の素材だ。
ギルドに売らず自分達用に取っておいた切れ端を、地下室の床へと並べる。
(硬いムカデの皮は防具に使うとして……爪は小さく削ってナイフにでもするか)
メインアームに加工してもいいのだが、その大きさが取り柄でもあり欠点でもあるのだ。ツバキさんはともかく、チワ達は確実に振り回されるだろうな。
ならば、いっそのこと小型化させ、扱いやすいサブウェポンとして使おう。そうすれば素材自体の耐久力は活きる。
「まぁ、今は先に防具か……」
皮を手に取り、加工を始める。
洋裁に関してはレンファ自身も心得があるようで、二人で相談しながら自作の防具を形作っていく。
「型紙が無いデスケド、どうするのデスカ?」
「それなんだが、俺自身の防具を参考にして作ろうと思ってな。紐でサイズを可変して、多少なら差異があっても着用できるようにするんだ。チワ達なら今からの成長に期待できるだろうし、普通に作ったところで使えなくなるからな」
「ナルホド。では紐の部分にも革を巻く必要がありマスネ。……しかし、結局ある程度の採寸は必要なのデハ?」
「そこは大丈夫だ。昨日の夜、風呂で抱いた時に感覚で測ってたから」
「…………」
何故かレンファが汚物を見るような視線を俺に向ける中で。
ちくちくとなめし革を縫い合わせながら、防具製作は昼過ぎまで続くのだった。
魔法ツリー
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【アフターバーナー(炎熱属性)】
RANK:D
前提スキル:中級炎熱魔法師、炎熱魔法威力2%上昇[+3]、炎熱魔法消費魔力2%軽減[+3]
威力:90
消費魔力:120(Active)
射程:0.40m
掌から超高温の炎を照射する。至近距離でのみ有効である半面、威力は高い。スキルポイントを1追加することにより、アフターバーナーの射程が0.05m増加する。
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錬金術ツリー
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【等価錬金】
RANK:S
前提スキル:神聖級錬金術師、メタルマイスター、黄金練成、神鉄練成、精霊銀練成、エンド・マテリアライズ
消費体力/魔力:4000/20000(Active)
指定した金属を、同等の価値を持つ金属に変換する。同等の価値でない場合も変換は可能だが、等価交換となるまで質量あたりの変換率が減少する。価値の基準は使用者の座標を参照し、その国の公共レートによって算出される。
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