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異世界チートで姫様達と婚前旅行。  作者: 富士ヶ麓久遠
トランディア王国・迷宮都市レガル編
30/42

ツマミ食い(意味深)でございます

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AUTHOR:この小説はノクターン行きにならないギリギリの表現でお送りします。文章量は普段の1.2倍盛りにしてみました。描写はキス止まりにして残りは全カットなので大丈夫のはずですが、運営さんから何か言われたら改稿しますのん。セーフかアウトかといわれれば、個人的には"セウト"あたりだと思いますねん。ちなみに今回のテーマは『シリアスで健全なエロ』です。自分で何言ってるのか理解できないよ。


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 昨日と一昨日は夜中まで予約が混雑していた為に、俺達は風呂へ行くことができなかった。

 ゆえに、女将さんから説明を受けるまで、内心ではあまり期待できないだろうなぁと考えていた。この世界に来てから西洋風の施設や食事しか見ていなかった為、良くてもシャワーくらいで終わらせるのだろう、と。

 しかし予想に反し、紅の夕日亭で供されたのは日本人の誇り、正真正銘の檜風呂であった。ひゃっはー!


「やっぱ日本人はシャワーじゃなくてお湯に浸かるべきなんだよ、うん」


 浴室を覗き見て、思わず感嘆の声を露にしてしまう。

 湯気が充満する中を凝視したところ、焼きレンガの内装と、そこに埋め込まれた十畳ほどの浴槽が見える。レンガの壁には小さな穴が開いており、そこから定期的にお湯が流れてきていた。

 もっと狭い個室シャワールームだと思っていたんだが、予想より格段に広い。数人は同時に入れるようなサイズで、俗に家族風呂といわれるやつだ。

 檜の香りが漂ってくる浴槽のほかには、壁際にかけ水用の小さい水場もある。銭湯のようにシャワーが備えついてたりはしなかったが、これでも十分堪能できるだろう。


 女将さんによると、数十年前までは平民なら井戸水、貴族であってもお湯で汗を流すシャワーの習慣しかなかったらしい。

 しかしながら、そこに異を唱えたのが先々代の勇者。

 大量のお湯に浸かるという日本式の風呂の文化を広め、その贅沢さの虜になった貴族や商人、金持ちが次々と大浴場を作り始めたとのことだ。

 もちろん浴槽だけなら一般市民でも作れないことは無いだろうが、大量の薪や水、それか炎熱と水氷の魔法師。または魔道具を起動する為の魔石が必要となる為に、多くの維持費がかかる。その点で、金が無いと断念せざるを得ないだろう。

 まぁそんな裏話はともかく、今の俺にとっては先々代グッジョブである。


(その勇者って間違いなく日本人だよな……)


 俺は服を脱ぎながら確信した。

 数人が入れる脱衣所にはわらで編まれたかごもあるくらいなのだから、間違いなく日本の文化から継承されたものだろう。異世界式の食事は許せても、風呂を捨てることは我慢できなかったらしい。

 もっとも、味噌や醤油の作り方を知らなかったというだけかもしれないが。


「ま、俺には便利なスキルがあることだし、日本食の再現もやってやるさ」


 そう独り言をつぶやきつつ、服を脱ぎ終わって腰にタオルを巻く。

 ウォシュの実も忘れずに持参すると、いざ鎌倉とばかりに浴室の扉を開けた。

 

「いいね。これだよこれ」


 浴室から出てくる熱気を肌で感じ、うきうきと心が躍る。

 ここが地下である以上窓は無く、その結果良い感じに熱がこもっている。

 天井には湯気を逃がす為の通気口もあるのだが、全部の湯気を逃がしてしまうわけではない。というか、そんなことをしたら速効でお湯が水になるだろう。

 薄い湯気の中を掻き分けながら掛け湯用の水場に近づき、あえて冷たい水を頭から引っかぶる。それを二、三度ほど繰り返してから、浴槽に足を踏み入れた。


「おおおぉぅ……」


 熱いお湯に包み込まれる感触で、思わず口から中年サラリーマンのような声が漏れる。

 この場にオッサンもいたら、間違いなく同じような声を出していただろう。

 ……いや、あの人まだ二十代だったな。まぁ、十七歳の俺ですらこんな声を出しているんだ。オッサンなら酒を持ち込んで一杯やろうとするかもしれない。

 そんなことを考えながら、俺は浴槽のふちに背中を預け、思い切り身体を伸ばす。その際にリラックスしたからか、ふと言葉が漏れた。


「この世界に来て三日目、なのか……」


 タオルを頭に載せながら、つい数日前までのことが脳裏によぎる。

 異世界召喚されて四姉妹と旅することになり、翌日に強敵を倒し、今日は迷宮を二十層まで攻略した。考えてみれば、なかなかに濃密な日々だろう。

 スキルセットがあるからこそ楽しんで歩いて来れたものの、普通の人間なら死地に飛び込むような行為だ。それこそ、ノーライフキングを目にしていたテルケスのように、俺も萎縮して震えていたかもしれない。

 

(スキルセットのおかげだけど、それだけじゃないな。俺だけゲームのようで実感が無いから、か……)


 天井の通気口から湯気が吸いだされていくのを見つめる。

 メニューやステータスウィンドウといったものがあると、どうしてもゲームの世界にしか思えない。

 でも、それでも、


(アリサ達がいる。言葉を交わして、一緒に飯を食った仲間もいる。そうである以上、ここがどんな世界だろうと関係ない)


 自分の力を駆使して、守れる範囲を守る。それが全てだ。

 皆の笑っている時間が一秒でも長くなりますように。それが願いだ。


「……はっ。ガラにも無いこと考えてるな、俺よ」


 どうやら思った以上に感情移入しているらしい。数日前に来たばかりだというのに。

 スキルを使って人を助け、敵を倒して金を稼いだ。そして、パーティーメンバーと言葉を交わした。規定されていない、自分の意志で動く日々。

 日本にいたときよりも生きている実感が強いから、それだけ思い入れもするのだろう。

 学校に行って勉強して友達と喋って、帰って飯食って寝る。そんな繰り返せるような日常ではないから。

 

「だから、これからもアリサ達と……」


 湯の中で胡坐をかいてから、ゆっくりと目を閉じる。

 気を落ち着け、次の言葉を口に出そうとしたときだった。


「あたし達が、どうかしたの?」


 左の真横・・から聞こえた声に、ピキッと身体が凍りつく。

 ベルンの氷結魔法を無効化せずに食らったらこうなるだろうというレベルで、お湯との温度差が如実に感じられた。

 いや、お湯の温度を感じられた理由は氷結した以外にもある。

 俺一人ではありえない動きで水面が揺れ、ざばぁっと音を立てて女の子一人分のお湯が溢れ出したからだ。

 そして、どこかで嗅いだことのある薔薇の香りが、俺の鼻腔をくすぐった。


「…………何故、ここにいる?」

「女将さんから呼ばれたのよ。二時間ほど枠を確保しているから早く行きなさいって言われてね」

 

 未だかつて、これほど「目を閉じていて良かった」と思ったことは無い。

 耳を澄ませてみれば、近くで掛け湯をする音や浴槽へひたひたと歩いてくる音がする。掛け水の冷たさに驚いたらしく、ニャー!とか、なのですー!とか、ふえええぇ!と叫ぶ声も聞こえてきた。

 おいおいおいおいおい。8時じゃないのに全員集合してるぞ。ド○フターズを見倣みならえ。


「俺、入り口に鍵掛けといたはずなんだが」

「掛かってたわね。でも女将さんにスペアキー持たされたの。男と女、裸の付き合いも必要でしょ、って」


 あ、の、オ、カ、ン、め。

 ああああ、ちくしょう。予想しとくべきだったな! こんなに大きい風呂を俺一人で使わせたりするはず無いもんな!

 ていうか同性での裸の付き合いなら風呂だって分かるけど、異性だとまるっきり意味が違うぞオカン!


「ふう~、いいお湯ですね~」


 脳内の女将さんが「頑張りなさいよ!」とウィンクするのを強引に蹴り飛ばしたところで、またお湯が溢れ出る。

 それと同時に、右側から恍惚とした声が漏れ、ついでにとばかりバニラの匂いが漂ってきた。

 うん、ここまでされたら隣に誰がいるのか分かるね。はははは……。


「リュウ、何で目を瞑ってるの?」

「そこは察してくれ。お前らを直視してしまうと色々まずいだろ」

「あー。“ピーッ”が“ピピーッ”しちゃうのね」


 アリサが一寸の恥じらいも無く言い切る。

 そこはオブラートに包んでほしかったな。もしくは、そもそも追求しないでほしかった。

 ていうか、こいつ本当におかしいぞ!? なんで頬にキスは恥ずかしがって報道規制ワードは大丈夫なの!?


「ま、まぁそういうことだ。念のために聞いておくが、水着とかタオルを身体に巻いてたりは……」


 と、そこまで言ったところで、胡坐をかいた膝の上にモチモチとした柔らかい感触が生まれた。

 俺の腰から胸板にかけてすべすべの肌が密着し、ほのかにミントの香りもする。

 アリサ以外で膝の上に座ってくる奴と言えば一人しかいないよなぁ。この小ぶりなオシリの感触からして、間違いなく……。


「……お風呂にタオルは厳禁。リュウさん待望の全裸」


 デスヨネー。あと自分で待望とか言うな。

 すりすりと背中を押しつけてくるな。下半身に尻を押し当てるな。振り返って首筋を舐めるな。

 完全にやりたい放題のベルンに対して、硬直したまま動けない。

 三方から美女に囲まれているんだ。動揺するなというのは、どだい無理な話だと思う。

 小さな舌で首筋をつつーと舐めあげられ、妙な感触で震えるその耳に、

 

「フギャーッ!? 熱いのニャ! し、シャムは水分が苦手なのニャ! 先に言ってからお湯を掛けてほしいニャー!」

「む。すまない、少しずつ流してやろう」

「キキ、これくらいの強さでいいのですか?」

「ふいいぃぃ、極楽なのぉ。あ、そこ、かゆいのねぇ……」


 四者四様の声が聞こえてくる。

 チワ達は浴槽の外で身体を洗っているようで、ツバキさんがその世話をしているらしい。普段の生活が予想できるほど汚れていたため、浴槽へ浸かる前に身体を洗わせているのだろう。

 ツバキさん本人の外見からはお堅い印象を受けるが、意外に面倒見が良くて気遣いのできる性格なんだよな。女将さん曰く女心の理解度ゼロな俺とは、月とスッポンほども大違いだ。


「敵には容赦しないけど、仲間や部下は大切にするのよ。あれも、ツバキが軍に向いている理由の一つね」

「そう、だな……」


 隣からかけられるアリサの小声に、目を瞑ったまま同意を返す。

 

「で、いつまで目を閉じてるの?」

「そうですよ~。リュウ様も目を開けて、わたし達と向かい合ってお話しましょう~」

「……ベルンを見て」


 ぐっ。こっちに話題を戻しやがった。

 しかも声色からして三人ともニヤニヤしてるし……こいつら分かって言ってやがる。


「さっきも言ったけど、俺だって男なんだよ。美女美少女の裸を見て冷静でいられる自信が無い」

「嬉しいことを言ってくれますね~。ですが、我慢は身体に毒ですよ~?」

「……ん。これは据え膳。食べるべき」

「そのお膳、下手に完食してしまうと強制送還されるんだろ? 食あたりで寝込むかもしれないのに、飛びついて食べるような奴はいないよ」


 不満そうな声を、鼻で笑って一蹴する。

 一昨日のベルンとの会話でもあったが、もし旅の途中で四姉妹に子どもができてしまった場合、三年間経過するまでもなく城に連れ戻されてしまう。そして、王女を懐妊させることの出来る存在が一人しかいない以上、父親は俺以外ありえない。

 それを知っておきながら『旅に出て数日で四姉妹を襲っちゃいましたテヘペロ』となってしまえば、国王に会わせる顔が無いだろう。炎熱やき土下座以外の謝罪方法が思いつかないくらいに。

 あと、日本で生きてきた俺にとって十七歳で子どもの親は重すぎるといった理由もある。主に世間体だとか、俺に子どもが育てられるのか不安だとか、そういった意味で。

 避妊薬がない現状では、例え据え膳であろうとも、一時の快楽に身を任せて取り返しのつかないことをするわけにはいかないのだ。

 

「へぇ。意外とあたし達のことも考えてくれているのね」

「意外って何だ、意外って。まぁ、そういうことだから無駄な誘惑は諦め、」




「でも完食が駄目ならツマミ食いをすればいいじゃない」




 ……は? 何そのマリーアントワネット理論。


「どういう意……っ!?」


 俺が疑問を返す前に、両腕を柔らかい物体が包み込む。

 右腕は、ふにょんと沈み込むメロンサイズの柔肌に。左腕は、ぷるんとした不思議な張りを持つ桃サイズの柔肌に。

 こ、この左腕の感触には覚えがある。これは確か、今日の朝に揉みしだいてしまったアリサの……。

 思わぬ衝撃を受けて脳が硬直していると、


「どわああっ!?」


 左右の腕を持って浴槽の外へと放り投げられ、地面に身体を打ちつけ……るということはなく、誰かによって受け止められた。

 さすがに実力行使に来られては危ないので恐る恐る目を開けてみると、真横には俺を覗き込むツバキさんの顔があった。

 ポニーテールを解いて黒髪が後ろに流れているため、いつもより女性らしさが40%上昇している。何かのスキルかな?


「姉上。男の身体は、もっと丁重に扱ってやれ」


 受け止めてくれてありがとうツバキさん。

 でもそのセリフ、普通は男の身体じゃなくて女の身体だと思うのは俺だけかな?


「少しくらい強引な方が、意外に悦ばれるものなのよ。ツバキ、抑えていなさい」

「承知した」


 アリサの言葉に従い、ツバキさんが俺を背後から抱きこむ。

 そのまま無駄に洗練された無駄の無い無駄な体術によって転がされ、優しく床に寝かされてしまった。えー。これやるのも男女が逆じゃないかなー。

 その際に密着してしまった為に分かったのだが……ツバキさん、スレンダーだと思っていたら予想外に大きかった。

 もっちりと沈み込むくせに適度な張りを持っている凶器が、しっかりとついていた。メロンサイズとまでは行かないが、小ぶりなスイカほどはある。

 迂闊だった! 男らしい性格だったから、ある意味一番破壊力が大きい!


「普段はサラシを巻いているからな」


 心を読まないでくだちい。


「うふふ、これで逃げられませんよ~。大人しくしてくださいね~」

「待て待て! お、お前ら処女だろ!? こう、最初は好きな人とベッドの上で優しくとか、そういう無理やりは良くないっていうか!」

「……好きな人の条件は、満たしてる」

「出会って三日だろ!?」

 

 ツバキさんに膝枕をされ、ついでに両腕を抑えられているから逃げることはできない。

 ついでに言えば、衆目に晒されている我が息子を隠すことも出来ない。

 そんな俺の前で、ざばぁっと音を立てて風呂から上がり、女豹のように四つんばいで近寄ってくるアリサとシェリスさん、そしてベルン。三人とも肌が薔薇色に高潮し、獲物を前にした肉食獣の目をしていた。


(――って、何を見ているんだ俺は!)


 色々と丸見えになっている三人から視線を上に逸らせば、今度はスイカのような……いや、俺は見てない。何も見ていない!


「出会って三日でも、女の子が恋するには十分な時間なのですよ~?」

「元々、魔方陣があたし達の好みになるような容姿を選別してくれるのよ。だから、そこは最初からドの付くストライクなの」

「ちなみに~。性格に関して魔方陣は選定してくれませんけれど、後々禍根になるような人格であればわたし達が始末する予定になっています~」

「マジか……」

 

 唐突に告げられた言葉で、自分の頬が引き攣るのを感じた。

 この言い方だと、過去に実際あったことなのだろう。外道に堕ちた勇者が王女に抹殺された、とかで。異世界に拉致られた身でなんと不憫な。

 というか、それ俺に言っていいのだろうか。

 まぁ元よりそんな気はないが、間違っても変な野望とか抱かないように気をつけよう……。


「……ん。リュウさんは違う。昨日のクエストで、自分の能力を隠すことよりも、仲間の命を優先した。後で面倒になると分かっていても、躊躇わなかった。力の使い方を間違えない、良い男」

「うむ。元より私達に選択肢などないが、それでも……相手が貴殿でよかったと心から思っている」

「お、おう。それは……その、どうも」


 皆からの賞賛に、俺は思わず頭を下げてしまう。

 どうにもいつの間にか、風呂場で襲われるほど好感度を稼いでいたらしい。最初から容姿に関しては百発百中コースであり、そこに先日の件がトドメになったのか。

 こ、これじゃあ最初は好きな人と、って言い訳は通じないぞ。むしろ、好きだしヤってもいいよね、と言われるかもしれない。

 どうしようと助けを求めるように左右を見回してみれば、


「は、初めて見るのです……」

「ドキドキなのニャ……」

「ふええぇ。今から交尾? 交尾しちゃうのぉ?」


 少し離れたところにいた獣娘達は、液体石鹸で泡立てられてモコモコの羊状態になりながらも、こちらに興味津々のようだった。両手で顔を覆っているが、指の間からバッチリ見ている。

 だ、駄目だ、この状態では助けてくれそうにない。アリサ達を直接止めるしかなさそうだ。


「俺を好きになってくれたのは分かったけど、これ普通は男女が逆だろ!? 今のままじゃ逆レイ……」

「それどころか“ピーッ”に“ピピーッ”で“ピーガガガッ”しようと思っているのですよ~?」

「……“ピルルルルガカァン”とか“ピーポーパーポー”も」


 だから何でそんなに放送禁止用語を口に出せるのん!? というか、その知識はどこから!?

 あ。いや、こう見えてアリサ達は王族なのだし、事前に教育係とかからそういうコト(知識だけ)を詰め込まれていた可能性はある。

 しかし、知識の代わりに犠牲となっているのか、王女らしい貞淑さが欠片もない。チャームポイント大暴露で恥じらっていたシェリスさんとベルンはどこへ行った!?


「どこへ行ったも何もコレが普通なの。リュウとは会って三日だから知らないでしょうけど、あたし達って有り体に言えば超エロいのよ」

「…………は?」


 それはまぁ、チラッと身体つきを見れば分かるけど。

 左にいるアリサはしなやかなのに出るところが出ている体躯だし、右のシェリスさんはバインバインで肉付きが良いし、頭側から腕を押さえているツバキさんは予想外にボンキュッボンだし、下半身に圧し掛かるベルンは小さいからこそ逆にヤバい。

 だが、今の状況で何故エロさが出てくる?


「そういう意味ではなくて、超絶的に性欲旺盛ってことなのですよ~」

「うむ。先祖代々伝わる体質の一つなのだ。その中には、攻めに回ると興奮のあまり恥じらいが感じられなくなったり、後は……受けに回ると腹の奥が熱くなって非常に恥ずかしくなる、といったものもあるな」

「何そのハイスペック変態ボディ」


 自分の頬が引き攣っているのを感じた。

 なるほど。攻めは強いS体質だが、受けに回ると一転してMになる、と。

 はた迷惑にもほどがある遺伝だ。俺だったら先祖を引っ叩きたくなるかもしれない。

 

「…………要するに、今までキスとかで恥じらっていたのは受けに回っていたから、というわけか?」 

「そ。事情が事情だから、一人の男と子どもを沢山残す為の遺伝的な生理反応ってところね。リュウ以外に性的魅力を感じなくなる代償もあるけど、それはむしろ利点かな。リュウだけに性欲が集中するし、愛の奴隷って感じがしてゾクゾクするじゃない。ね?」

「ね?、じゃねーよ」


 つまりアレか。俺に限り、四姉妹はデフォで『魅了状態』ってことか。

 レオパルト、すまん……。俺のせいじゃないけど、他人のこと言えないわ。

 

 と、思った直後だった――。


「だからリュウのことは心も身体も大好きなんだけど……今朝の件だけは、ちょっと減点ね」


 急に、空気が変わった。


 俺を見ていたアリサの顔が、ほんの少しだけ翳る。

 アリサだけじゃない。四姉妹全員が困ったような顔をしていた。


「今朝の件?」


 俺の訝しげな声にはベルンが反応する。


「……奴隷商人との交渉。ベルン達を賭けた」

「そ、それは絶対に勝てるって保障があったからだぞ? お前達にもトリックは教えたじゃないか」


 さっきまでの淫靡な空気が薄れ……四人の表情から、少しずつ悲しそうな感情が溢れてくる。

 その中で、ツバキさんが少し迷う素振りを見せてから口を開いた。

 

「ああ、確かに聞いた。だがな、普通の男は勝てる可能性が100%であろうと……大切な女を賭けるものではないよ」

「……っ!」


 彼女の言葉を聞いて、俺は思わず息を飲んだ。

 顔から血の気が引き、背筋に冷たいものが流れる。

 お湯が湯船から波打って溢れているのに、その温度がまったくと言っていいほど感じられなかった。

 

 言われてみれば……。賭けるのなら、他に選択肢があったじゃないか。

 アリサ達に一言断ってから虹金貨を賭けることだってできたし、俺自身を賭けてもよかった。いくら相手の喰いつきがよかったからといって、四姉妹を賭けるのは……。万が一がないと分かっていても、それでも疑うべきだった。

 勝負にならないからと、景品台に載せてしまった事を必死に誤魔化していた。

 自分の許婚を賭けるなんて……ただの大馬鹿野郎だろうが……!


「……ベルン達のこと、リュウさんは自分の『モノ』だって、そう思ってる。だから、簡単に賭けた」


 ベルンの言葉が、深く胸を抉る。

 その言葉は、今までの戯れで受けたどの傷よりも痛かった。

 嘘だと言いたくても、それを否定する材料が出てこない。肯定する材料なら……。

 

「ごめん……ごめんな……」


 意識するよりも早く、謝罪の言葉が出ていた。後悔の念が、少しずつ俺の心に広がっていく。

 あの時、四姉妹は怒った振りをしていてくれたのかと思ったが……あれは、本当の怒りだったのかもしれない。

 

 しかし、四人は俺の謝罪を受け取らなかった。


「ううん、あたし達だって同じ。リュウのこと勝手に呼んで、勝手に運命を背負わせようとしているんだもん……。本当はリュウを怒る資格なんて無い。最初にリュウを『モノ』として見ていたのは、あたし達だから……」


 アリサは寝転ぶと俺の左腕に全身を絡みつかせ、瞼を閉じながら囁いた。

 シェリスさんも同じように寝転んで俺の右腕を愛おしそうに抱き締め、ベルンは俺の上に伏せると胸板に身体を預けてくる。ツバキさんは膝枕をしながら、そっと頭を撫でてくれた。

 何故か、変な気持ちにはならなかった。大切な存在がいるという安心感だけが、俺を満たしてくれた。


「本当は、わたし達が悪いのです。リュウ様がわたし達をそう扱うのも当然といえるでしょう。だから、リュウ様のお心を癒して真に信頼しあえる関係を築いていく為に……これから毎日、たくさん気持ちを伝えさせていただきます」


 そう言って、シェリスさんは俺の頬に唇を触れさせた。

 じんわりと熱を帯びたバニラの香りは、ほんの数秒で離れる。

 でも、想いはまだ、残っていた。

 

 本当は気付いていたのだ。

 俺は自分のチートで悦に浸り、四姉妹を自分の『モノ』として扱うことで元の世界を忘れようとしていた。この世界に守る人ができたからといって、目を背けようとしてた。もう親しい人には会えないと、その悲しさを必死になって誤魔化そうとしていた。

 シェリスさんの気持ちには、その贖罪の意味も含まれているのだろう。

 

「ああ。だが、それだけではない。もう一つの気持ちは、紛れもない私達の意志だ。リュウ殿に『大切なモノ』ではなく『大切な人』だと、そう思ってもらう為に……隠す気はない」


 先ほどまでは胸に視線が吸い寄せられたのに、今はそうでもない。

 それよりも、ツバキさんの笑顔を見ていたかった。

 贖罪でマイナスからゼロに戻し、さらに自らの想いでプラスになるよう、彼女は隠さないと言ってくれたのだ。負の『モノ』から、正しく一人の人格として求めてもらえるように、と。

 

「……ん。生まれた時から規定された恋。でも、ここから想いを育むのは、ベルンの意思。だから、隠したくない」


 そう言って、ベルンは俺の胸板に口付けの雨を降らせる。

 やはり変な気持ちにはならず、むしろ小鳥のような愛らしさを感じさせた。

 キスして俺を見て、キスして俺を見て、キスして俺を見て……その繰り返しが、たまらなく心を震わせてくる。


 四人の想いを聞き、俺の口が自然と開いた。


「規定された恋だろうが何だろうが関係ないだろ。出会った以上、一から始まるか百から始まるかの違いでしかない。普通の恋愛が一から百なら、俺達は百から一万になるまで互いを愛しあえば同じ事だ」


 贖罪と恋慕。両方の情愛を受けて、返さないわけにはいかなかった。


「本当に悪かった。結局俺は、宛がわれた女の子を自分の『モノ』だと思い込んでいた。みんなの感情を蔑ろにしていた。……赦してくれとは言わない。俺も、これからの行動で示す」


 四姉妹は自身の罪を告白して、同じ罪を犯した俺を赦してくれた。

 向こうが心を砕いてくれるのなら、俺も信頼で返さないとな。


 俺の言葉に、四姉妹は目を見開く。

 全員揃って少しだけ硬直してから……本当に嬉しそうな顔で、こくりと頷いた。


「よかった。あたし達の心が伝わってくれて」

「ん。まぁ、その、何ていうか……ありがとな」

「いいの。人間が心を制御できる生き物なら、誰だって苦労しないわよ。あたし達も、リュウへの想いが我慢できないし。だから、今から逆“ピピェーッ”するわね」

「そうだな……。俺も、今はまだ不確かだけど、皆のことが好……」


 ……………



 ……………



 ……………



 ……………



 ……………おい。


「ちょっと待て。今、何か不吉な単語が混じっていた気がするんだが?」


 思わず立ち……上がることは押さえつけられているために不可能だったので、寝たまま疑問を呈する。

 さっきまでのシリアスな空気が一瞬にして吹き飛んでいた。


「“ピッユルルルッ”が終わったのです! “ピピルピルピルピピルピー”るのです!」

「“ピチュ”るのニャ!」

「●REC!」


 モコモコ羊の外野がスタンディングオベーションし始めた。

 あれか。ずっと静かだと思ったら凝視していただけだったのか。

 おそらくABC段階でBの最中だと思っていたのだろう。これからCをする気は無いけど。


「だ、だって、もう無理なのよ……。百倍愛してくれるって、リュウが言い切ってくれたんだもん! 好き、好き好き好き好き大好きー!!」

「我慢ができません~! あ、ああぁぁ、リュウ様~!!」

「もがっ!? むぐぐぐうっ!?」


 理性が完全にアウト判定を下しているのか、遠慮の欠片もない。

 がばっ!と抱きついてきた両脇の二名に挟まれて……い、息が……柔らかマシュマロに挟まれて息が出来ない!

 あんたら自分のボディラインを考えてくだおごっ!? いま首が、首がゴキッて!!


(こ、このまま捏ね繰り回されていたら、女体に殺される! つ、ツバキさん、ヘルプミー!)


 や○らか戦車四輌の間から顔を出し、俺はツバキさんに助けを求める。

 幸い、上から覗き込んでいる彼女とはすぐに目が合い――


(……え?)

 

 ――錯覚であってほしかった。

 でも錯覚じゃなかった。

 二人の間から見えたツバキさんの目は、完全に頭のネジが飛んだ人のソレだった。


「フ、フフ、フフフフフ。百倍愛してくれるとは、なんとも嬉しい事を言ってくれるではないか。……さぁ、おいで。遊んでやろう」

  

 あっ。

 これアカン奴や。今日の昼に見た欲求全開ドSモードや。

 お、俺、“ピャー”られる!? あのムカデ野郎みたいに嬲られて“ビャー”られるのか!?

 嫌だ! そんな死に方、絶対に嫌だー!!

 

(ぐっ。正気かもしれないのは、残るベルンだけか!)


 マシュマロアタックに耐えながら、最後の一人へと希望の目を向ける。

 ベルンなら大丈夫だろう。何だかんだで物分りが良い子だ。ちゃんと引き際を分かってくれる。


「……」

 

 予想通り、ベルンはすぐさま俺の上から退いてくれた。

 俺の足の間に立ち、いつもの眠たげな目でジーッと俺を見下ろしてくる。

 よかった。ベルンは正気だ。

 でも早く身体を隠してください。


「…………」

 

 しかし、彼女はその場から動く気配を見せない。

 棒立ちしているベルンの視線が、俺の顔から首筋、胸板、ヘソと下に降りてていき、

 

「……じゅるっ」


 ひいいいいいいぃぃっ!

 ちょ、ベルンさん!? あなたどこ見てるの!?

 絶対、絶対食べるなよ!? いやフリとかじゃなくて!!

 

 やばい……やばいぞ。四姉妹は完全に理性が飛んでる。

 獣のごとき眼光に射抜かれ、『錬鉄の心胆』スキルを貫通して動きを止められてしまった。


 よく考えたら、この四姉妹の有様は不思議な事じゃない。

 俺は「これから一緒に生きる中で常人の百倍愛する」と、もうほとんど告白に近い事を言った。

 同じ内容を、好きな女の子が全裸で告白してくれたとしよう。理性がポンッと消し飛んでしまう自信がある。

 その男女逆バージョンを、四姉妹に対してやってしまったのだ。


「「「「……フフ、フフフフフ」」」」


 あ、あの。赤らめた表情で唇をペロリと舐めあげるのは、なんかこう最高級ステーキを前にしたライオンみたいで、すごく怖いんですけど。

 全員同時にその行動は、ガチで命の危機を感じるんですけど。

 

「ちょ、ま、待ってくれ! その、せめて最初はベッドで!!」

「「「「だ~め♪」」」」


 orz

 終わった……。


「あと二時間もお風呂が使えますし、い~っぱい気持ちを伝えますからね~」

「安心して。赤ちゃんは早いって分かってるから、純潔だけはとっておくわ」

「明日は家を探す予定だったが、明後日に延期してしまうかもな。だがまぁ、簡単に力尽きてくれるなよ?」

「……いただきます」


 その言葉を最後に、眼前へ迫る四人の美少女。


 檻から解き放たれた猛獣を見て……。


 俺は、ゆっくりと瞑目した。


 今の願いは唯一つだけ。

 

 どうか、明日の朝日が拝めますように。

 

 それだけだった。







「アッー!」



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SKILL:ユニークスキル「エンゲージ・シンパシー」がアンロックされました

ENGAGE:エンゲージスキルの有効時間が更新されました。残り23h59m59s59999f

ENGAGE:恋力の最大値が上昇しました。現在の恋力120/120


SYSTEM:回想モード【P-2-1:お風呂でツマミ食い】がアンロックされました


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