お帰りでございます
「んーと、これで全部か?」
「ああ。すまなかった、その、戦っているときは少々興奮してしまってな……」
ボスの足を運びながら、ツバキさんが面目ないと顔を伏せる。
戦闘が終わった後に討伐報酬を剥ぎ取ったり使える素材を集めたりするのは至極当然の話だ。が、今回は非常に面倒な一手間が加わっていた。
なにせツバキさんが巨大ムカデを弄り殺したため、ドームのあちこちに巨大な足が転がっている。一体しか出現しなかったのに、さながら集団戦を行ったような様相となっていた。
うーむ。ツバキさんは定期的に戦場へ出さないと大変な事になるな。戦闘狂の欲求不満とは、かくも恐ろしいものなのか。
(まぁ、戦闘狂って言うよりは、ただのドSって感じもしたけど……)
ボスの足(先が剣のように鋭いため武器になるらしい)をアイテムボックスに収納しながら、次の部位を運んでいるツバキさんを見やる。
興奮で赤く染まっていた頬は普段の色に戻り、三日月に裂けていた口元はキリリと引き締められていた。ポニーテールも汗に濡れた様子は無く、涼しげに動いている。
「あの子もストレスが溜まってたのよ。少し発散したら、最後は正々堂々倒してたでしょ?」
いつの間にか傍にいたアリサが、俺と同じようにツバキさんを見つめる。
その目は妹を慈しむかのような感情を携えていた。
「正々堂々って、一太刀で首を切り落とした時のことか?」
「そうよ。ツバキは『無形の位』スキルを持っているから、構えをとる必要が無いの。あえて構えをとるのは、自分より格上の相手と戦う本気モードの時。それと、敵に対して感謝や尊敬の心を表す時だけね」
アリサの言葉に、俺は「なるへそ」とだけ返した。
つまり、何度斬られても立ち上がったボスに尊敬の念を抱き、手加減で嬲っていたことを謝罪し、戦ってくれたことに感謝の情を示したってところか。
ツバキさんが最後にとった構えは『脇構え』。交叉法に優れる構えではあるのだが、逆に言うと相手の攻撃を喰らってしまう危険もある。本来の力量からすれば、彼女は適当に剣を振るっただけでも倒せたはずだ。
あれは、ムカデ野郎の最期に一矢報いさせる可能性を残すためだったのだろう。
「容赦ないのか礼儀正しいのか分からないな、ツバキさんは……」
「あの子も適度に戦場を歩かせれば、敵を弄ぶことは無いわ。今日はちょっとだけ、欲求不満だったのよ」
「ちょっとだけ、でアレかよ」
今回はモンスターだったからいいものの、相手が人間だと考えたら恐ろしい。自分の手足が一本ずつ削ぎ取られていく光景を想像し、思わず身震いが奔る。
まぁ盗賊とかならともかく、そこらの一般人を手にかけるような女性じゃないから大丈夫だが。
しかし、俺達がレガルで暮らし始めてからまだ二日だ。これで欲求不満になるとか、城にいたときは何をしていたんだろうな……。
「一昨日までは、お母さんの『創造異界』で毎日戦っていたのよ。あたし達は五万の軍勢相手に単騎で戦わされていたけど、ツバキだけは十万のモンスター相手でね」
「………………は?」
アリサから出てきた言葉が信じられず、少しの間呆けてしまう俺。
開いた口の塞がらない光景はさぞかし間抜けなのだろう。しかし誰も俺を笑えないと信じたい。
アリサ達は普通に訓練だったのだろうが、ツバキさんは十万と戦って戦闘欲求を解消してたのか……。そりゃ岩程度じゃ不満にもなるわ。
ムカデの足を運ぼうとして転んだチワを助け起こしているツバキさんからは、とても十万を倒すようには見えないんだけどな。外見だけなら。
「あたし達の中でも一番熱心に戦っていたのがツバキだったわ。あたしは帝王学、シェリスは経済学と法学、ツバキは戦術学、ベルンが魔法学。それぞれの得意分野を生かして国を統べるために、自分達の能力を昇華させていったのよ」
足を運んで胴体と纏めている妹達を見ながら、アリサはそう言った。
えーと、それはつまり、アリサがトップに立って、シェリスさんが政務、ツバキさんが軍務、ベルンが魔法体系全般の業務を執り行う予定になっていると。
ツバキさんの戦闘に積極的な姿勢は、将来の為だったってことか。
「その通りね。ツバキも、自分の二面性に悩んでいたことはあったわ。でも……この国の為に必要だと割り切った」
「まぁ、確かに。あの強さと残虐性は利用できるだろうな」
極端な事を言えば、軍とは敵を殺すことに特化した集団だ。
ドSモードのツバキさんが陣頭に立って一方的に敵を虐殺する光景を見せつければ、敵の士気が下がり、味方の士気は否応になく上がるだろう。
本来なら総大将が矢面に立つようなものだが、彼女はそれを厭わずにやるはずだ。
そうすれば、結果的に自軍の犠牲が少なくなることにも繋がる。
「そういうこと。だから、これから毎日、あの子と戦ってあげてね?」
「そうだな。これから毎日……って、ちょっと待て。話がいきなり飛んだぞ」
アリサの発言に同意し、頭で理解してから慌てて制止する。
「何も飛んでなんかいないわよ。ツバキの『敵にドSな戦闘狂』の一面は軍務で必須。でも普段の生活では必要ない。だから戦闘欲求はリュウが満たしてあげる。ね?」
「ね?、じゃない。何で俺なんだ。アリサが戦えばいいだろ」
面倒そうに言った俺へ、アリサがチッチッチッと人差し指を振る。
地味にイラつくな、その動作。
「あたし達だと勝負がつかないのよ。今のシェリスは全力が出せないし、あたしは斬っても死なないし、ベルンは魔法の嵐と不滅結界で傷をつけられない。逆にツバキを倒そうにも速すぎて攻撃が当たらないし、当たったとしても体力が高すぎて意味が無いの」
おぉう。なんという贅沢な悩みだ。
規格外同士だからこそ戦いにならないのか。
ちなみに、今のツバキさんの体力は【98351000/98351000】と表示されている。初めて見た時はバグかと思ったよ。もう軍隊必要ない気がすると思うのは俺だけかな。
ついでに言うと数値は平常時のものであり、戦闘時は一億五千万を軽く超える。
これを削りきるのはさすがの姉妹でも骨が折れるのだろう。
「その点、リュウなら『すきるせっと』でいろんな戦い方ができるでしょ? 素手主体だったり、武器主体だったり、魔法主体だったり」
「まぁ、確かにそうだが……」
「だからツバキも飽きずに戦えると思うし、負けちゃうことだって考えられるわ。ちょっと間違えればリュウがボッコボコにされるけどね」
「俺はサンドバッグかよ」
頬を引き攣らせながらそう言ったところ、アリサは満面の笑みで親指を立てやがった。
それはそれはもう彼女の後ろに花が舞う幻影を見たくらいの笑顔だった。
こ、この野郎……。
「リュウ様~、こちらは収集終わりました~。アイテムボックスに収納してください~」
「大漁だニャ!」
アリサの尻を叩いてやろうかと思ったところで、離れたところにいるシェリスさん達からお呼びがかかる。
視線を向けてみれば、俺とアリサ以外の全員が集まり、積み上げられたアシッド・センティピードの足を満足そうに眺めていた。
……仕方ない。アリサの尻よ、今だけは見逃してやろう。
「サンドバッグは冗談。でも、さっきの一件……ちゃんと考えてあげてね?」
「模擬戦程度ならな」
「それで十分だと思うわ。ちゃんとお嫁さんの欲求不満を解消させてあげるのも、お婿さんの役目よ」
アリサは俺の肩を叩くと、お先にスタコラさっさと妹達のところまで行ってしまう。
その場に残された俺は溜息をつきながら、目の前にある残り数本の足をアイテムボックスに収納するのだった。
□
一般的な冒険者なら、迷宮から出るには二通りの方法がある。
ひとつはリジェクトクリスタルを砕き割ることによる強制転移。もうひとつは、次の階層へ進んだ際に逆戻りをすることだ。
階層の終わりに設置されているダンジョンゲートは一方通行で、次の層に進むことはできるが、次の層に進んでから戻ることはできない。通ってきたダンジョンゲートを逆走した場合、そのゲートは迷宮入り口の魔方陣に繋がるのだ。
午後二時半。
第二十一層のダンジョンゲートを逆走し、相変わらずヌルッとした空気を潜る。
俺達を待っていたのは、暖かな昼の日差しと、新鮮な森の空気だった。
「俺の『瞬間転移』が使えないってのは面倒だよなぁ」
「……それは今だけ。次からは使える」
入り口の兵士に手続きをしてもらいながら、俺はベルンに向けて小声で愚痴った。
一階層上がり、さらにそこから逆走して外へ出る。転移に慣れてしまうと、この手間ですら面倒だと思ってしまう。便利なのも考えものだな。
本当は逆走なんかせずに直接宿屋へ転移したいところだが、入り口の兵士に俺達の情報を記録されているので、そうもいかないのだ。入った記録があるのに出た記録が無かったら、迷宮内で死亡したと思われただろう。
「転移に頼りきらず、定期的に正面から来ないとダメ……ってことね」
「そうですね~。素材をギルドで売る時にも怪しまれるでしょうから~」
確かにな。いないはずの俺達が迷宮の素材を持ってくるとか、完全にホラーだ。
それに、宿屋に引きこもっていると思われるのも良くない。
「まぁ第二十一層の壁に転移魔方陣は残しておいたんだし、明日と明後日くらいは転移で楽をさせてもらうか」
「うむ。使えるものは使うべきだ」
「すごいのです! 明日からは早起きしなくていいのです!」
「ご主人しゃましゃまニャ!」
「ご主人しゃまは神しゃまだったのねぇ」
獣娘達が、流れ星のようにキラキラした目で俺を見上げていた。
そういえば、普通の冒険者は都市からここまでの約十五キロを歩いて来るんだよな。俺達は転移があるから朝ゆっくりできるけど。
と、そこまで思ったところで、迷宮から出るための手続きが終わったらしい。
「よし、通っていいぞ。気をつけて帰れよ」
入り口の兵士に礼を言って、俺達は洞窟を抜ける。
昼の日差しが降り注ぐ中で、来た時のように屋台は賑わいを見せていた。周囲に肉の焼ける良い匂いが漂い、呼び込みの声は途切れることが無い。
「うちのホットドッグは旨いよ! ひとつ銅貨三枚だ!」
「こっちの具沢山スープはどうだい? 一杯で銅貨四枚だよ」
「俺のところのサンドイッチもいいぞ! ワンセット銅貨五枚だぜ!」
昼は迷宮に潜っている人が多いから繁盛してないのかと思いきや、どうやらそうでもないらしい。
迷宮入りの列もそこそこ並んでいるところを見るに、午前中にクエストを済ませて午後から短時間で迷宮に挑む人も多いのかもしれない。
屋台で軽食を買い、草の地面に腰を下ろして食休みにしている冒険者もいるな。
「……じゅるっ」
分かりやすい食欲をありがとう。
「どれくらいの稼ぎになってるかまだ分からないんだから、銀貨一枚くらいに抑えておけよ」
「……!?」
無表情で目を見開くとか器用な真似をする。
「白金貨を渡していても、ベルンの食欲だとすぐに使い切ってしまうぞ。最初は節約だ」
「…………分かった」
普段の倍くらい押し黙った後、ベルンは近くの屋台へと歩いていく。
買ったのは、木の深皿に入った具沢山のスープとサンドイッチだった。ちゃんと銅貨九枚に抑えているな。お釣りを計算する店員は大変そうだったが。900円の買い物に10万円札出したようなもんだからな。
ちなみに『買ってきた』と表現していない理由は、俺達の元へ戻ってくる前に食物が消え去っていたからである。買った傍から食器を返却するベルンに、店員はハトが豆鉄砲食らったような顔をしてた。危うく吹き出すところだったわ。
「あ、あれだけお昼ご飯を食べたのに、まだ食べているのです……」
「ビーフシチュー二十人前とパン二十個くらい食べてた気がするなぁ……」
「ベルントーラしゃまのお腹は化け物ニャ……」
キキよ、それは記憶違いだ。
俺は給仕をしていたから覚えている。ビーフシチューは二十六杯だ。パンは三十個くらい。
今日の昼食で話をしていて知ったのだが、実はシェリスさんとツバキさん、そしてベルンが大量に飲み食いするのには理由があった。
アリサを除く三姉妹は、多くの体力魔力を消費する戦い方をしているため、有り体に言えば好物を摂取し続けないと身体が持たないのだ。
なんでも、体力や魔力を時間経過で回復させる際、腹具合によって回復量にボーナス倍率がかかるらしい。この世界の人間が体感的に確信したことのようで、ヘルプには書かれていない『隠し効果』ってやつだ。
そのため、朝昼晩の三食だけは多めに食わせてみる予定なのだが……。今日の稼ぎと相殺されないことを祈るのみだな。
そんな家計簿チャッカウーマンであるベルンのつまみ食いが終わると、全員で迷宮から少し離れた森の中に移動し始める。
木々の間を歩き、獣道すら無い場所を進む。
「ニャッ!? くもの巣に引っかかったニャ!」
「こ、こっちは都市とは逆方向の気がするのです。本当に進んでもいいのです?」
藪を掻き分けた際にひっ被ったのか、顔の付近をぺたぺたと押さえるシャム。
それを取り払ってやりながらチワが問いかけてきたので、俺は頷きを返した。
「さっき、俺が転移魔法を使えるって知って結構騒がれただろ? ……ああ、いや別に責めてる訳じゃないんだ。どうせ、使っていけば近いうちにバレるからな」
チワの顔色が曇ったので、慌ててフォローを挟む。
「僥倖だったのは、俺一人で神聖魔法を発動できるとバレなかったことだ。もしそれが暴露されていたら、色々と不味い事になってたと思う」
きょとんと首をかしげる獣娘達に、俺は説明を続ける。
神聖魔法は、多人数で補う前提の莫大な魔力消費量と、それに見合った絶大な効果を持つ。ゆえにある意味バランスが取れているのだが、それを個人で使えるとなれば話は違ってくる。
本来、高ランクの魔法は使えても一人一種類程度なのに、俺だけはスキルセットの恩恵があるため、いくらでも使うことが出来る。その中には『瞬間転移』や『ヴィーナス・ヒール』だけではなく、戦争で使われるような広域殲滅魔法だって含まれているのだ。
そうなれば当然、今までにも増してよからぬことを企む輩が増えるだろう。
「いつかはバレると思うけど、できるだけバレてない期間を長くしたいんだよ。その間に名声を得ておけば、馬鹿な事してくる奴も少なくなるからな」
「なるほどぉ。ご主人しゃまなら全部倒しちゃうのかと思ってましたぁ」
「まぁ出来なくは無いが、面倒だからな」
だからこそ、今日は人目につかない場所でのみ転移魔法を使ってきた。
迷宮の壁を壊す際にも近くに冒険者がいた場合は諦めて遠回りしたし、それは迷宮を出てからも一緒。噂だけで「あいつら神聖魔法使えるらしいよん」と聞くならともかく、目の前で使ってしまうと言い逃れができなくなるだろう。衆人環視の中で転移魔法を使っても問題なかったら、最初からバンバン使っていた。
今こうやって人目につかない場所まで移動しているのも、その一環ってことだ。全員で起動しているならまだしも、さすがに直接見られてしまうと俺一人で発動しているって事が分かってしまうからな。
そうやって進むうちに手ごろな場所、少しだけ開けた空き地を見つけたので、目印となるように小さな石ころを置く。
石の裏には転移魔方陣を刻んであるため、次に正面から迷宮へ入るときはここへ転移することになる。
「周りに気配は?」
「特に無いのです。シャムはどうなのです?」
「んー。捉えてないニャ」
「大丈夫だよぉ」
念のためにと俺もレーダーを見たが、周囲に人影は無い。
シェリスさんとベルンの助言に従って偵察用使い魔の検索をしてみても、人の目は完全に無いようだ。
それを確認してから、宿屋に置いていた転移魔方陣への『瞬間転移』を発動する。
一瞬だけ視界が暗転した後。
俺達の目に入ってきたのは、木のぬくもりが感じられる部屋。
扉の前に『外出中』の札をかけておいたからか、ベッドのシーツが取り替えられており、ピシッとした几帳面さを感じさせるほどに内装が整えられていた。
今までと違うのは、人数が増えて少しだけ狭苦しくなっていることか。
「俺は宿の女将さんに事情を話してくるよ。さすがベッドが足りないからな」
チワ達は、きょろきょろとあたりを興味深げに見回している。
いくらなんでも五人部屋に八人はきついからな。彼女らのことも考えて部屋換えしてもらうことにしよう。
「確かにそうね。でも、シャムを抱き枕にするのも寝心地よさそうなのよね……」
「……分からなくも無い」
「そんなことしたらキキちゃん達の疲れが取れませんよ~」
「そうだろうな。姉上に抱きしめられたまま寝たら、窒息死しかねんよ」
防具を脱ぎながら四姉妹と会話していると、獣娘達の目が白黒し始めた。
目を見開き、信じられない言葉を聴いたかのように慌てている。
「そ、そんな! 大丈夫なのです、チワはお外でも寝られるのです!」
「屋根があればどこでも良いのニャ」
「冬は寒かったけど、今の季節は暖かいからねぇ」
身振りで大丈夫だと主張し始めるチワ達。
今までの生活が予想できるな、ちくしょうめ。
食生活すら、池の水を啜って生きていたくらいなのだ。衣服だって薄い布切れみたいなもんだし、防具だってボロボロ。そんな状態で住居を期待できるはずもない。
まぁ、今は俺の下にいるんだ。俺の好きにやらせてもらうとしよう。
「遠慮するな。暖かいご飯を食べて、暖かいお湯で疲れを癒して、暖かい布団で寝たいだろ」
「そうそう。育ち盛りなんだから、ちゃんと疲れを取らないとね」
「わぅ。そ、それは……」
憧れていた生活を目の前にぶら下げられて戸惑っているのか、言いよどむチワ。
残りの二人も同じような感じなのだが、残り一歩が踏み出せていない。自分達がそんなことをしていいのだろうかと、今までの生活で疑心暗鬼になってしまっているのかもな。
仕方ない。最後は俺が後押ししてやろう。
「じゃあ、これは奴隷への命令な。後で風呂を用意してやるから、そこで汗を落とせ。上がったら夕飯を腹いっぱい食べて、暖かい布団で寝て疲れを癒すんだ。いいな?」
その言葉にポカンとしたチワ達。
だったが、少しして理解したらしく、俯いてから鼻を啜り始めた。
その表情は見えないが、頬から流れ落ちる雫は床に落ちてシミを作っていく。
「ご主人しゃまは……本当に、本当におかしいのです……」
「ふえぇぇ……ありっ、がとう、ございますぅ……」
「シャムみたいな奴隷にそんなことして、天罰が当たっても知らないニャ……」
俺への罵倒にも聞こえるが、さすがに強がりだと分かっているので腹も立たないな。
四姉妹も微笑んで見守っているし、この判断は間違っていなかったのだろう。長女からは「ホント、うちの旦那は女の子に優しいんだから」などと困ったような感情を向けられていたが。
俺が女の子に優しいんじゃなくて、優しくしたのがたまたま女の子だったというだけだ。うん、きっとそうだ、たぶん。
「そ、それじゃ、俺は一階に行ってくるよ」
ついに感極まって泣き崩れてしまったチワ達を四姉妹に任せ、俺は宿屋の女将さんに相談するために部屋を後にした。
ドアを閉める直前、「へたれ!」「へたれですね~」「へたれだな」「……へたれ」などと言われたが、泣いている女の子複数を相手にできるイケメンスキルは残念ながら習得していない。逃げるが勝ちだ。
スタコラさっさと宿屋の階段を下り、一階の受付に歩いていく。
観葉植物などの調度品が置かれた木製のカウンターでは、宿の女将さんが帳簿をつけていた。
「おや、リュウタロウさんじゃないか!」
「こんにちは、女将さん」
恰幅の良い熟年の女性で、某国民的アニメのようなサ○エさんヘアーが特徴的な人だ。外見に寄らず、冒険者が多く泊まる宿で荒事を沈めるほどの腕っ節を持っているらしく、一部の客からは『母さん』と呼ばれているのだとか。
二時半過ぎとなる今の時間帯はチェックインする客もいないようで、俺に気付くと親しみやすい笑顔で話しかけてくる。
「ウチの部屋、使い心地は気に入ってる?」
「ええ。昨日は文句無く熟睡できましたよ。……ただ、ちょっと宿泊人数が増えてしまって、部屋を変えてほしいんです。それと風呂の予約も」
事情を話すと、女将さんは手元の台帳をパラパラとめくりつつ口を開いた。
「いくつか部屋が空いているから、そっちに移しといてあげるよ。あんたの甲斐性に免じて、一泊あたり金貨二枚と銀貨四枚でどうだい?」
「え、ええ。じゃあ、それでお願いします」
なぜそこで甲斐性が出てくるのかは分からないが、割り引いてくれる分にはありがたい。
計算してみると、一人あたり銀貨三枚か。今までと変わらないし、まぁ悪くない値段だろう。
宿に獣人奴隷を泊めるのは忌避されるものかと思ったが、そこはさすがの母さんだ。
「それと、風呂は……そうだね。今の時間帯なら誰もいないし、三時から使いな。ちょっとだけサービスしといてあげるから、あんたは先に湯を浴びてくるといい」
「いえ、ありがたいんですけど、俺も部屋の移動で少しは荷物を運んでやらないと……」
いくらなんでも、女性陣を労働させている間に一番風呂を頂くのはまずいだろう。
そう思って女将さんに反対したのだが、
「はあぁぁ……」
返ってきたのは、それはもう深い深い溜息だった。
マリアナ海溝よりも深かったかもしれない。
「あのねぇ。女の子には、男に見られたくないものがあるの。そこに気を使えないようじゃ、悪いけど割引の話は無かったことにするよ?」
ぐっ。サザ○さんヘアーの母さんに言われるのは癪だが、言っていることは妙な説得力がある。
男の俺に女心やその他もろもろが理解できるはずも無いのだから、ここは素直に頷いておくことにしよう。値引きも惜しいし。
「わ、分かりました。じゃあ、先に風呂を失礼します」
「そうそう、物分りの良い男でないと愛想尽かされちまうよ。あんたは四人も綺麗どころ……いや、新規に泊まる獣人奴隷の子を含めると七人だね。それだけ囲っているんだから、ちゃんと気持ちを汲んであげるんだよ!」
女将さんが笑いながらカウンターから身を乗り出し、バンバンと俺の肩を叩いてくる。
このノリといい、でかい掌といい―――
(あだ名は伊達じゃないな。母さんだ、この人)
俺は母親の顔を見たことが無いのだが、それでも遺伝子に刻み込まれているものがあるのか、この人には絶対に逆らえないと確信できる。
そんな内心を知らない女将さんは、カウンターの下から鍵を一つ取り出して渡してきた。
「個室ナンバーは三番ね。ちゃんと温まってくるんだよ。あんたが湯を浴びている間、部屋に行ってあの子達を移動させておくから」
「ありがとうございます。では、お先にお湯を使わせていただきます」
女将さんは羽ペンを持った手で、一階のある一角を指し示す。俺が下りてきた階段の隣、地下の浴室に続く階段だ。
彼女に促されるままタオルとウォシュの実(潰すと石鹸のような液体が滲み出る小さな木の実。当然食べられない)を合計銅貨六枚で買い、俺は今日の汗を流すべく風呂へと歩き出すのだった。
UPDATED SKILL INFORMATION
===========================================
【壊世武卿】
RANK:UNIQUE
前提スキル:-
消費体力:0(Passive)
武器を握ったとき、世界すら殺せる力を得る絶技。体力を1000倍に増加させる。武器による物理攻撃の威力倍率を任意で1~1000倍に増加させる。敵とwr力&&0にaび、自%act力/)or力がint上d(こstatus!=消falseる)。allの#=^|8d%軽&する。体力を最大値の5%毎秒回復する。3乱n状orうを##する。(^位]yがlstし:`い。&str123を!受けva&rい。所dr=!~~ンダ0^果を)-する(武$pos/\れた際、%yyは,#すr)。
===========================================




