↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BAKE-MONO  作者: 森村征爾
PR
14/21

第3章 第2話 浮かび上がる真実(面影編)

和尚の話に聴き入り鈴はゆっくりと顔を上げた。


「夫婦は、拾った仔犬らを犬として育てとったんじゃ。じゃが、その中の白い仔犬が暴れてのう。夫婦らは切り刻まれたんじゃ…」

和尚はその場で手を合わせた。


「白い犬?」

鈴の声がかすかに揺れる。


「あれは犬ではない、狼の化け物じゃ。三匹のうち一匹は猟師らが退治したが白い狼ではなかったんじゃ」

鈴は言葉を失った。


「おまえさんの親父さんから話は聴いとる。おまえさんが見た獣はソレじゃ」

膝が震え立つことができず、鈴はその場に座り込んだ。


「取り憑かれとったんじゃ、おまえさんは何も悪くない。じゃがの、また会う事だけは止めておけ。アレは化け物じゃ」

顔面蒼白のまま、鈴は唇を噛んだ。膝の上で握った手に、爪が食い込んでいる。


「…わかりました…」

絞り出した声は、自分の耳にも他人のものに聞こえた。


   *


智は昼間、猟師たちが休んでいる場所に出くわした。


「おい、聴いたか?あの取り憑かれた娘の話」

キセルに火を入れる猟師の煙が、智の鼻を突く。


「ああ、昔夫婦を殺した白い狼に取り憑かれた娘じゃろ?」

もう一人は銃の手入れをしながら答えた。


「むごたらしい話よのう。育てた親を殺して逃げとるんやけんのう」


(何の話だ?仲間が居るのか?)

煙に咳き込みそうになるのをこらえ、智は耳を傾けた。


「あの娘は石手寺に預けられたそうじゃぞ。白い狼が生きてる間は家には帰さんと、親父殿は躍起じゃけんな」

キセルを片付ける猟師。


「三匹のうち、残るは白い狼だけか。化け物め」

尻についた葉を払い、猟師は立ち上がる。

二人は山頂に向かい歩き去った。


(鈴は石手寺か。匂いがしないはずだ。あの寺は他の寺より線香を焚いている。……それより、今の話は)


昼間であるため、智は四本足の獣の姿のまま石手寺へ向かって走っていた。


(三匹のうち、白い狼が夫婦を襲った? 捕まっていないのは、白い狼だけだと?)

走る足を止める。


(三匹。仁兄、臨兄、そして――)

そこで考えが途切れた。


(臨兄は、ニンゲンに父さんも母さんも仁兄も殺されたと言っていた)


(父さん母さんを襲った白い狼は俺じゃない。……俺は、何も)

智は四つの足を動かせないまま、石手寺の方角を睨んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。