僕のよふねとじいさんのこと4
短いです。
今日で6日目。一向に死ぬ気配がない。
毎日昼過ぎに来ては近くの客やヨージさん夫婦、それから僕と話したり本を読むだけで変わらない日々を過ごしている。
むしろ、ここの居心地が良くなってきたのかだんだんいきいきとしてきているような気がする。
残り時間は多く見積もっても明日まで。ああ、苦しい。
顔に出てしまったようでじいさんが下から覗き込むように僕を見た。
「おい芦名くん、浮かない顔してどうしたんだい。恋の悩みかな?」
「――違いますよ。浮かない、というか気がかりなことがあるだけです。私事ですが。」
「そうかいそうかい。何かあったら僕の暇つぶしがてら話してみるといいよ。少しは解決に近づけるかも知れない。」
「ありがとうございます、僕はどうも溜め込んでしまう人間みたいでこの性分には困ってますよ。」
そう言うと、少し目が鋭くなり何となく射られるように感じた。
「あ、えとそうだ。いつもお元気そうですけど、病気とかされてないんですよね、きっと。」
どぎまぎしたのをごまかすつもりが裏目に出てしまった。バカだ気がかりの核心を突いている。
「ああ、この通り健康そのものだよ。大きな病気は若い頃にしたきりでそれから今までに病とはお付き合いがないよ。」
うらやましいかい? と笑いながら言ってくる。
この話が本当なら、やっぱり病死の可能性は低い、か。
「ええ、見ての通り僕は虚弱体質なんで羨ましい限りですよ。」
そう返すと何かおもしろいものを見つけたように目を瞠った。
絶対からかってるな、このじいさん。――とりあえず退散しよう。
今日は春陽さんの旦那さんがやって来るということで、いつもより3時間も早く店を閉める。だからゆっくり明日の準備をする暇などないのだ。
僕は少し焦りながらも作業に取り掛かった。じいさんのことは今は全部ひっくるめて忘れ、そそくさと退散し閉店準備を始めた。
7日目。文字通り最終日だ。
今の時間は12時。じいさんが来る時間にはまだ少し早い。
もしかしたら、もう既に事は起きているのかもしれない。
それともいつも通りにやってきて僕たちと別れた後にそれは起きるのかもしれない。何より…目の前で―と考えたら手が震えてしまった。
いつにも増して顔つきがおかしいのでヨージさんにも春美さんにも春陽さんでさえ心配してくれた。だがどうにかなるのもじゃない。
本音を言えば今すぐ逃げ出してしまいたいがいろいろな理由でそんなことできるわけがない。
とにかく、平常心を心がけて仕事にだけは支障がでないようにしなければ。
こんな僕の葛藤をバカにするかのように、じいさんはいつものように来て近くの客やヨージさん夫婦、それから僕と話したり本を読むだけで変わらない一日を過ごし次の日にもやってきた。
その日は言わずもがな、8日目である。
未熟な話を読んでくださりありがとうございました。
ポイント評価だけでもお待ちしております。




