↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢なのに慕われる!?~令嬢たちが放っておいてくれません~  作者: ねぎとろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/92

第26話 公爵令嬢の言葉

 教室の空気は重かった。

 主人公――アリア・フォスターは困ったような笑顔を浮かべている。

 周囲の令嬢たちも笑っている。

 「本当に凄いですわね」

 「平民の方が首席なんて」

 「私には真似できませんわ」

その言葉には棘があるように感じる。

 褒めているようで褒めていない。

 そんな言葉ばかりだった。

アリアは何か言おうとして、結局言葉を飲み込む。

どう答えても正解がない気がしたからだ。

 その時だった、

 「何のお話をされているのですか?」

 静かな声が響いた。

 教室がしんと静まり、令嬢たちが振り返る。

 そこにいたのは、ヴィオレッタ・アルバレスだった。

 銀髪に蒼い瞳。

 アルバレス公爵家の令嬢。

 誰もが知る存在に令嬢たちの表情が僅かに強張る。

 ヴィオレッタはゆっくりと歩み寄った。

 その所作は自然で優雅。そしてアリアの席の近くで足を止める。

 「楽しそうなお話でしたので、少し気になってしまいました」

 不敵な微笑みに、その場にいる誰もが理解した。

 ヴィオレッタは先ほどのやり取りを見ていたのだと。

 令嬢の一人が慌てて口を開く。

 「いえ、私たちはただフォスターさんとお話を――」

 「そうでしたの」

 ヴィオレッタはアリアを見る。

 アリアは困ったような笑みを浮かべていた。

 その表情を見た瞬間、ヴィオレッタの中で何かが決まる。

(主人公イベントだ)

 「ですが少し不思議ですわね」

 ヴィオレッタが静かに言う。

 「首席で入学された方のお話をされているのに」

 一拍、

 「どうして皆様、そんなに驚いていらっしゃるのですか?」

 誰も答えられない。ヴィオレッタは続ける。

 「フォスター様は学院の試験を突破されたのでしょう?」

 「そ、それは……はい」

 アリアが思わず答える。

 「しかも首席で」

 ヴィオレッタは頷いた。

 「ならば、それで十分ではありませんか」

 一人の令嬢が勇気を出した。

 「ですが……平民の方ですわ」

 教室中の視線がヴィオレッタへ集まる。

 ヴィオレッタは静かに首を傾げた。

 「それが何か問題?」

 誰も言葉を返せない。

 ヴィオレッタは本当に分からなかった。

 平民だから何なのだろう。学院が認め、試験を突破した。

 それ以上に必要なものがあるのだろうか。

 「平民であることが、能力の優劣を決めるのでしょうか」

 「そ、それは……」

 「違いますわよね?」

 ヴィオレッタは周囲を見回した。

 蒼い瞳が一人一人を映す。

 「それとも」

 柔らかな声のまま続ける。

 「フィオラ女学院の選考が誤っていたとお考えですか?」

 令嬢たちの顔色が変わる。名門学院の選考を否定するなどあり得ない。

 「私はフォスター様のことをまだ存じません」

 ヴィオレッタは言う。

 「ですが」

 その視線が令嬢たちへ向く。

 「皆様も同じではありませんか」

 誰も口を開かない。

 「知らない方を、知ったつもりで語るべきではないと思いますわ」

 やがて、一人の令嬢が頭を下げる。

 「……失礼いたしました」

 他の令嬢たちも続き、誰も反論しない。

 ヴィオレッタはようやく表情を和らげた。

 「なら良かったです」

 その瞬間。

 教室の空気がようやく動き始めた。

 すると、

 「ありがとうございました!」

 アリアが勢いよく立ち上がった。

 ヴィオレッタがびくっとする。

 「え?」

 「助けてくださったんですよね!」

 真っ直ぐな瞳に眩しいくらいの笑顔。

 さっきまでの公爵令嬢としての威厳が一瞬で吹き飛ぶ。

 ヴィオレッタは思わず後ずさった。

 「べ、別にそんな」

 「助かりました!」

 「いや、その……」

 「本当にありがとうございます!」

 アリアは深々と頭を下げた。

 ヴィオレッタは困った。助けたつもりではある。

(ただ、あんまり関係を持つと…何か良くないことが…)

 「ヴィオレッタ様」

 聞き慣れた声が隣から響く。

 リリアーナだ。いつの間にか近くまで来ている。

 にこり、笑顔だった。とても綺麗な笑顔だ。

 「お昼にいたしましょう」

 「うん?」

 「セレスティア様もお待ちです」

 「そうだった」

 ヴィオレッタは頷く。

 リリアーナはアリアへ視線を向けた。

 「失礼いたします」

 礼儀正しい笑顔だが、ほんの少しだけいつもより距離が近い。

 まるでヴィオレッタを確保するように。

「は、はい!」

 アリアも慌てて頭を下げた。

◇

 教室を出た後、ヴィオレッタは隣を歩くリリアーナを見る。

 「あの、リリ?」

 「……」

 「リリさん…?なんか、怒ってる?」

 「怒っていません」

 ほんの少しだけ頬が膨らんでいる。

 ヴィオレッタは首を傾げて思う。

 主人公イベントより、今のリリの扱いの方が難しいと。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。