↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢なのに慕われる!?~令嬢たちが放っておいてくれません~  作者: ねぎとろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/92

第16話 誕生日会の主役

 カトレアの誕生日会当日。

 アイゼンベルク伯爵家の屋敷は朝から慌ただしかった。

 使用人たちが忙しそうに行き交う。

 庭には来客を迎えるための準備が整えられていた。

 今日は伯爵家の令嬢、カトレアの誕生日会である。

 侍女が差し出した服を見て、カトレアは小さく息を吐いた。

「こちらをご用意いたしました」

 見慣れた正装だ。騎士を思わせる濃紺の衣装。

 似合うと皆がそう言う。

 だからずっと着続けてきた。

(……今年もこれか)

 そう思いながら視線を落とす。

 部屋の隅には小さな箱が置かれている。

 花柄の小物、可愛らしいリボンにお気に入りのハンカチ。

 そしてぬいぐるみたち。誰にも見せていない宝物だった。

(仕方ないな)

 そう思った時だった。コンコン――扉が叩かれる。

「お嬢様」

「どうした?」

「アルバレス公爵家のヴィオレッタ様がお見えになりました」

 カトレアが目を瞬かせた。

「もう来たのか?」

 予定よりかなり早い。

◇

 その頃、ヴィオレッタは屋敷の中を歩いていた。

「ヴィオレッタ様、会場はこちらです」

 使用人が丁寧に案内してくれる。

「うん」

「こちらです」

「ええ」

 返事をしながら別方向へ進もうとしていた。

「そちらではありません!」

「あれ?」

 気付けば迷いかけていた。いつものことである。

 そんな時、廊下の向こうから声が聞こえた。

「本日の正装はこちらになります」

「ありがとう」

 聞き覚えのある声だった。

 ヴィオレッタはそちらを見る。

 少し開いた扉の向こうにカトレアがいた。

 そして手には騎士風の正装。誕生日会の衣装なのだろう。

 カトレアは微笑んでいた。けれど、

「カトレア?」

「ヴィオレッタ?」

 思わぬ来訪にカトレアが驚く。

「その服着るの?」

「ああ」

「今日の正装だからな」

「そうなんだ」

 ヴィオレッタは少し考え、そして――

「着たいの?」

 そう聞くと、カトレアが固まる。

「似合うと思うよ」

 ヴィオレッタは続ける。

「でも」

「でも?」

「本当に着たい服なのかなって」

 静かな声。カトレアは答えられない。

 父や兄たちも褒める。令嬢たちも憧れる。

 だから、ずっとそれで良いと思っていた。

 可愛いものが好きなことも、可愛い服に憧れていることも。

 胸の奥にしまっていた。

「私は……」

 小さく呟く。

「うん」

「一度だけ」

「一度だけでいいから」

 視線を伏せた。

「可愛いドレスを着てみたいと…思ったことはある」

 初めて口にした本音だった。

 少しだけ怖かった。

 笑われるかもしれない、呆れられるかもしれない。

「そうなんだ」

 ヴィオレッタは微笑んだ。

「じゃあ着よう!」

「……え?」

「着たいんでしょ?」

 あまりにも自然だった。まるで当たり前のことのように。

「そんな簡単な話じゃない」

「そう?」

「父上も兄上たちも今の私を気に入っている」

「うん」

「皆が期待している」

「そう」

 ヴィオレッタは静かに頷く。

「でも」

 そう言って笑った。

「今日はカトレアの誕生日だよね?」

「そうだが」

「だったら一番わがまま言っていい日じゃない?」

 カトレアが目を見開く。

 わがまま、そんな発想はなかった。

「主役なんだから、一番やりたいことをしていいんだよ」

 ヴィオレッタは当たり前のように言う。

 その言葉にカトレアは何も言えなかった。

 ただ、胸の奥が少し温かくなるのを感じていた。

 その時だった、勢いよく扉が開く。

「ヴィオレッター!」

 セレスティアだった。

「また迷子になったのかと思ったら何してるの?」

 そして状況を見る。

「……何してるの?」

「ドレス選び」

 ヴィオレッタが答えた。

「は?」

 こうして、カトレアの誕生日会は、少しだけ予定とは違う方向へ進み始めるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。