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『世界一弱いお父ちゃん(ゴブリン)は、世界一あたたかい』 〜ゴブリンに育てられた少女アリスの成長譚〜  作者: クワガタンク
第二章:芽吹きの時代

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第23話:魔法の手順

魔素を練る練習を始めてから5日経ち、練り上げるスピードも少しだけ速くなってきた。


ちなみに畑には、白菜みたいな野菜と、ジャガイモとニンジンを合わせたような野菜が植えられている。

食べてみた感想は、人参の甘さとジャガイモのほくほく感をあわせ持った、いいとこ取りの味だった。


で、この野菜の名前だけども、師匠曰く――


『キャテト、もしくはニンジャガ、なんて呼ばれてるね』


考えるまでも無く名付けたのは、来訪者だろう。


そして今、もっとも気をつけなければならないのが、獲物を狙うような目をしたヤギ達だ。


畑の周りを常にうろついているから、目が離せない。


一応、柵で囲ってはいるのだけれど、いつ突破されるか分からない。

なにより、ヤギたちは柵のすぐ外から、じっとこちらを見ている。

まるで、隙を窺っているみたいに。


何か対策を考えなければと思うのだけれども、それよりも……。


私としては、早く魔法を身につけて、お父ちゃんを手伝いたい。


お父ちゃんも師匠も、焦らなくても良いとは言ってくれるけど……。


本音を言えば、魔法を使い、お父ちゃんを手伝って、驚かせたい。


……ついでに師匠も。



「……何か企んでそうな顔をしてるけど。まぁそれより、そろそろ体の中だけで魔素を練るんじゃなくて、外側――つまり体の周りの魔素も同時に練り上げてみようか」


「まわりも?」


「そうさ。練れる魔素は多いほうがいいからね。まずは、周りの空気を動かすように魔素を練ってみようか」


確かに、魔素を燃料だとすれば、多いに越したことはない。


さて、どうイメージしたものか。


うーん……絵の具が水にゆっくり溶けていくような感じかな?


「いいねぇ、その調子だよ。ゆっくりでいいから、確実にね」


自分の周りの空気を掴んで、回転させるように意識を集中させる。


「うん、やはり筋がいい。それじゃあ、その魔素を魔力に変えてみようか。体の中に、魔素とは違う自分の魔力を感じるかい?」


自分の中にある魔素とは違うもの……あった。

僅かに揺らぐ、不思議な感覚。

空気が、ほんの少しだけ重くなった気がした。


「見つけたみたいだね。その魔力と魔素を混ぜ合わせるんだ。一度に変えようとせず、少しずつゆっくりとね」


ゆっくり、少しずつ、交じり合うように。


「では、その魔力を水に変えてみようか。両手で水を掬うように構えて、そこから湧いてくるように魔力を水に変えるんだ。慌てなくていいよ」


手のひらから水が湧いてくるように……魔力を水に。


「……なぜ、手の甲から水が出てくるんだろうかねぇ」


「……わかんない」


おかしいなぁ。途中で畑の水やりを一瞬想像したのが、悪かったのかな?


気付けば、足元には大きな水たまりが出来ていた。

師匠は、呆れたようにため息をつきながら肩を竦める。


「さ、もう一度構えて。集中、集中。ゆっくりと水が湧き出す様子を思い浮かべてごらん」


水が湧き出すように……。


両手に魔力が集まっていく、それを水に変える。


「……それは、”噴き出す”だねぇ」


勢いよく噴き上がった水が、雨のように私と師匠に降り注いだ。


「……あれぇ?」


「どうにも、雑念が混じったり、集中しすぎたりと、両極端だねぇ」


水に濡れた師匠のじっとりとした視線に、目を逸らす。


「……あめ、ふってたか?」


畑に水を撒きに行こうとしていたお父ちゃんが、首を傾げて聞いてきた。


「……いまやんだとこ」


「……はぁ」


師匠が溜息をつきながら、魔法で風を起こして乾かしてくれた。


「君の飲み込みの良さに、もしかしてと思ったけど……どうやら瞑想は必要なようだね」


そう言うと、師匠はおもむろに洞窟の中へ入って行った。


気になって私も師匠を追い、中に入ると、師匠が部屋を作り始めた。


「うん、まぁこんなものかな。さぁ、瞑想部屋が出来たよ」


その部屋は四メートル四方ほどで、天井がやけに高い。

見た感じ、横幅の倍以上はありそうだった。


「この部屋では、瞑想で心を落ち着かせて、変換した魔力を自分の体の周りで自在に動かし、望む量だけ放出する感覚を掴むんだ。要は魔力操作だね」


師匠を光の玉を出し、体の周りで回してみせる。


「ここで発動するのは光の玉だよ。火は危ないし、水で濡れたくはないだろ?」


……さっきの仕返しか。


「それに、光は結果が分かりやすい。ここなら余計な音も入らないし、瞑想にも向いているからね」


たしかに、ここなら集中して練習ができ――


「……めし、できたぞ」


……そうにない。


「あれ?もうそんな時間かい。では、あまり詰め込み過ぎも良くないし、今日はここまでにしようか」


珍しく師匠が、午前中で修業を終わらせた。


「どうしてきょうは、はやくおわるの?」


「ん? あぁ、そろそろ街に買い出しに行く準備をしようかとね、ギルドで色々と買取もして貰いたいし」


街かぁ。この世界の文明は、どこまで進んでいるんだろうか。

魔道具である程度は便利になってそうな気もするけれど……


それよりも――ギルド!

 

やっぱり魔法ときたら、ギルドで冒険者登録!

丸い水晶かなにかに手を触れて、魔力量を測るのだろうか?

ランク分けはどんな感じなんだろう。

入った瞬間、絡まれるんだろうか?


「……急にブツブツと。何を考えてるのか分からないけど、一応は聞いておこうか。どうしたんだい?」


「ししょうは、らんくいくつ?」


「ランク?」


「そう、ぼうけんしゃの!」


「あぁ、五十年くらい前にBランクになったばかりだね」


「ごじゅ……びーなの?」


時間間隔の違いに思わず驚いてしまったけど、師匠でもBなんだ。

あんなに色んな魔法が使えるのに、意外……


「あれだよ、ランクが上がりすぎると街に縛られがちだからね。私みたいな根無し草は、これでも高いくらいなのさ。

本当はCでもいいんだけど、それだと入れる場所が制限されるしね」


各地の来訪者の伝記や伝承を集めている師匠には、ランクで縛られるのは確かに都合が悪いんだろう。


そう考えると、うーん……私も師匠のようなスタイルが向いてるような気がしてきた。

まぁそんな先のことより――


「わたしもおとうちゃんと、まちにいってみたい!」


「……!?」


「あー、それは……えーと、そうだねぇ。やはり説明しておいたほうがいいかぁ」



驚いたように目を見開くお父ちゃんと、言いづらそうにする師匠。

その様子に、なぜか私は胸騒ぎを覚えた。

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