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『世界一弱いお父ちゃん(ゴブリン)は、世界一あたたかい』 〜ゴブリンに育てられた少女アリスの成長譚〜  作者: クワガタンク
第一章:深き森の出会い

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第13話 :不思議な邂逅

中天に太陽があってなお暗い森の中。

藪や木々の間を慎重に素早く移動する。


帰り道を進みながら、私達の住んでいる森の事を、お父ちゃんが話してくれた。


「このクサくえる……あのみ、あまい……けど、ちょっとすっぱい」


そう言ってお父ちゃんはその実を私に取ってくれた。


「あまいね、お父ちゃん!」


「しー、アリス……こえ、おおきい……ここ、まだあぶない」


慌てて口を塞ぐ私に苦笑いを浮かべながら、頭を一撫でしてくれた。


辺りに気を配りながら歩き、お父ちゃんは森に潜む獣や特に警戒しなければならない魔物を話してくれた。

それから触れてはいけない植物や、美味しそうな匂いのする猛毒の果物を教わる。

色々な知識に胸を躍らせて聞いていると、お父ちゃんがゆっくりと歩みを止めた。

同時に何か言葉では言い表せない不思議な感覚が私の中に湧き出してくる。


お父ちゃんが腰を屈め、藪に身を潜めながら、しきりに鼻を動かし周囲を探り出す。

私も、その違和感のする方向へと視線を向けた。


「アリス……こえ、だすな……なにか、いる」


囁く声に首を縦に振る。

もう一度辺りを見回したその時。


「やれやれ、上手く隠れていたつもりだったんだがねぇ」


上から声が降って来た。


お父ちゃんの背筋がぴんと伸びる。


次の瞬間、樹上から人影が音もなく飛び降りてきた。


お父ちゃんは私を守るように、相手に背を向ける。


「おまえ、このもりに、ないにおい……する」


お父ちゃんの声が低くなる。


「あぁ、なるほどこれは迂闊だったねぇ……まさかこれを嗅ぎ取れるとはねぇ」


懐から小さな袋を出して、彼は感心したように言った。


お父ちゃんはじりじりと後ろに下がりながら彼に尋ねる。


「だれだ……なにか、ようか」


「まぁ、警戒する気持ちは分かるが、落ち着きなよ……って、無理か、普通に怪しいものねぇ」


大きなツバ広の帽子を被った、まるで物語の中の吟遊詩人みたいな姿。

じっと観察するような目、そして特徴的な耳に気が付く。


……エルフだ。


「私はアルヴェイ、しがない旅の冒険者さ」


驚く私に気付いたのか彼の目が僅かに鋭くなる。


「ところで、少し尋ねたいのだが、その子は普人だねぇ……君とは種族が違い過ぎると思うが?」


「おまえ、かんけいない……このこ、おれそだててる」


「ほう?……君が、この子をねぇ……」


このままじゃまずい。


この張り詰めた空気をどうにかしなくては、ぶつかってしまう。


「……お父ちゃん」


私はお父ちゃんの服の肩口をぎゅっと掴む。

ハッとした表情でお父ちゃんは私を抱き寄せる。


「ふむ?……拐かしにしては妙だな、何やら事情がありそうだねぇ、どうだろう、お互いの誤解を解く為にも話してはくれないかい?」


考え込むように黙っていたお父ちゃんは、やがて小さく頷いた。


「ついてこい……アリス、まかされたとこ……あんないする」


暫く歩いて辿り着いたのは、森に飲み込まれかけた、不自然に開けた道のような場所だった。


「ここで、ばしゃ……おそわれて、こわれてた……アリスの、ははに……アリス、まかされた」


そこには、小さな墓標らしき物がいくつか並んでいた。


「なるほど……ここでその子の母親に託された訳か……ふむ、魔物かい?」


「そうだ……おれ、きたとき……ばしゃ、こわれてた」


未だに残る馬車の残骸と思われる場所に彼、アルヴェイはしゃがみ込んで調べ始めた。


「アリス、ここ……おまえの、はは……いる」


そう言ってお父ちゃんは墓標の一つを指差した。


そっと私を地面に降ろし、お父ちゃんは母の墓標の前へ連れて行ってくれた。


「おれ、やくそく……まもってる、アリス……おおきくなった」


お父ちゃんは母の墓標に静かに語り掛ける。


「お母ちゃん、私は元気です」


私もそう言って、目を閉じ手を合わせる。


「見たところ、元は街道だったみたいだが?」


調べ終わったらしいアルヴェイが、近づきながら、そう聞いてきた。


「このさきに、もうひといない……むらだったとこ、ある」


お父ちゃんは森の奥を指差す。


「そこから、ばしゃ……にげてきた、あと……あった」


彼は考え込むように、森の奥を見つめている。


「ここから、その村は遠いのかい?」


「いま、いくと……くらくなる」


「半日程度かねぇ……」


そう呟き、彼は空を見上げた。


その間に、お父ちゃんは私を抱き上げ、帰り支度を始める。


「ところで、君達の家はここから近いのかい?」


きょとんとするお父ちゃんと、満面の笑みを浮かべるアルヴェイ。

悪い人では無さそうだけど、警戒心の強いお父ちゃんはどうだろうか……。


「なぁに、別にタダで泊めろとは言わないさ、治癒魔法は勿論、こう見えて薬師の心得もある多少の薬も持っている……どうだい?」


「……くすり」


……薬。


確かに、この森の暮らしにおいて、それはとても貴重なものだ。


お父ちゃんは悩まし気に考え込み、やがて唸るように顔を上げた。


「……わかった……こんやだけ、ついてこい」


「そうこなくては!」


彼は嬉しそうに声を弾ませた。


……でも、その目はなぜか私を観察してるように見えた。

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