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ロクでなしの魔女  作者: 木介


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幼き罪の代償

【登場人物】

・ハウス

魔女に会うため屋敷を訪れる。

コシネロと話しルルとシャミを守る決意をする。


・ルル

黒いチョークが特徴のメイド。

かつてリリスと契約し自分の両親をいなくならせた。

「ルルはなんで、また屋敷を訪れたんだ?」


「彼女は両親を探しに来たのよ、そして私と再び契約した」


「何の契約?」


「夢を見ない代わりに自らの罪を受けるっていう契約」


「自らの罪って…それってつまり…」


「そういえばそろそろ良い子は眠る時間よ」


「…眠る時間?」


ハウスはハッとなり、急いでルルの部屋に向かった。

契約、自らの罪、時間、確証などないが、リリスの言葉から嫌なものを感じたのだ。

大広間を出ると室内は既に暗く、わずかに差す月明かりを頼りに二階へ進む。


「ルル!」


ノックもせずに部屋へ入った。

そこには誰もおらず、風でカーテンが揺れている。

窓の近くにいくとバタバタと音が聞こえ、揺れる布からチラリと見えるのは足…、宙に浮いた足だった。


「ルル?」


ベランダへ出て見たのは、ルルの首から黒くて太いロープ状の何かが空の闇まで続き、彼女を締め付け苦しめている光景であった。


「なんだこれ…」


今まで見たことがない異様な光景に息を呑む。


「ルル! 今、助けるからな」


そう言って彼女の足を持つが、その分ルルの身体は引っ張られハウスもろとも浮かせようとしてくる。

ハウスも同様に引っ張れば彼女の負担が大きすぎる。

短剣を使いロープ状の何かを切りつけたが傷が付くだけでその意味を成さない。

どうにかしようにも魔女の力で動いているのであれば打つ手がない。


「どうすればいい…」


ハウスは考えた。


(魔女の力? リリスの契約によってこの現象が起きているのだとしたら?)


ハウスは短剣を取り出し切りつけた、ルルの首にある黒のチョークを。

途端、宙に浮いていたルルの身体は落ち、真っ赤な顔のルルはゲホゲホと声をあげる。


「ルル! 部屋の中に逃げるぞ!」


そう言ってハウスはルルの肩を持ち室内へ逃げ込んだ。

ハウスは再びあれが襲ってこないかルルを背にして短剣を見ながら警戒する。


「大丈夫だからな、俺が守ってやるから」


「いいえ、大丈夫、もういいの…」


「えっ?」


振り返るとそこには悲しみに満ちた顔のルルがいた。

首には大量の引っ掻き傷、それに絞め痕。

先程切った黒のチョークかと思う程に濃い絞め痕があったのだ。


「これは私が選んだ事だから…」


「選んだ事って、君は一体リリスとどんな契約をしたんだ?」


「…あんたは色々と知ってそうね、でも話してる時間はないわ」


そう言ってルルは窓へと指を指す。

その先から入ってきたのはロープではなく、四本の手で、ロープに見えたのは捻れて重なっていた為であったのだ。

そしてその手は再びルルの首を掴もうとしてくる。

いくら未来が見えても四本全ての動きを見ることは出来ない。


(このままでは守りきれない、ルルを抱えて逃げるか?)


そんな事を考えている横でルルは小さく呟いている。


「お母さん、お父さん、ごめんなさい、ごめんなさい…」


ハウスはルルと一緒に扉の近くまでいき、開けようとしたが扉は外から押さえつけられているように開かない。


(なんで開かないんだ? 蹴り破るか? でもこの後何があるかわからない…どうする?)


ハウスは自問自答を繰り返す。

そんな中ルルは再び魔女の屋敷を訪れた時の事を思い出していた。


ーーー


「お母さんとお父さんを元に戻して!」


「元に戻して?」


「…元に戻して下さい」


ルルはそう言って頭を下げた。


「貴女、夢を見なかったの?」


「…見ました、何度も何度も…あんな夢を見続けるなんて耐えられない…」


「夢を見たって事はそうゆう事よ、私の力でもどうしようもないわ」


遺体を見ていない事からもしかしたらと期待していたが【どうしようもない】この言葉を聞き諦めざる終えなかった。


そしてルルは自分のした事を後悔し再び口にする。


「もうあんな夢見たくない…」


「そう、じゃあ今度は夢を見ない契約でもする?」


「夢を見ない契約…、でも代償は?」


「代償? そうね、じゃあ自らの罪をその身に受けるっていうのはどうかしら?」


「それって…死になさいって事?」


「同じ事を二度言わせないで、そんな意味の無い事する訳ないじゃない」

「この屋敷に住みなさい、そうすれば意味を理解出来るから」


ルルは意味などどうでもよく、辛い現実から逃れられるならと再び魔女と契約を交わした。

その晩、彼女の元に四本の手が現れる、その手にかつての母と父の面影を感じそれを受け入れた。


(これが自らの罪を受けるって事なのね…)


この時の彼女は両親の手によって死をもたらされ人生の最期を迎えるものだと思っていたのだ。

魔女の屋敷では死ぬ事など無い。これは最期ではなく最初の死であった。

これから毎日死を経験し、自らの罪が軽くなる事を願う日々が始まるのだった。


ーーー


「ルル!!」


一人謝り続ける彼女にハウスの言葉は届かない。

ハウスは自らのジャケットを脱ぎ、ルルに被せて抱きついた。

手を全てを払う事が出来ないのであってもその行く先は同じである為だ。

手は覆い被さるハウスを引き離そうと凄い力で引っ張ってくる。


「ごめんなさい、ごめんなさい」


こんな状況でもひたすらに謝る事をやめないルルにハウスは言う。


「これはご両親じゃない! 君のご両親は君を苦しませるような事はしない! 夢をよく思い出すんだ!」


(夢?……私が殺した両親の夢…?)


このままでは引き剥がされると考えたハウスは「飛ぶぞ!」とだけルルに伝えて窓の方へと飛躍した。

ガシャンッ! と窓ガラスは大きな音をあげて割れ、ジャケットに包まれたルルを強く抱き締めながら落ちる。


そしてルルには走馬灯のように想い出が流れる。


魔女の森から帰ってきた時の両親を。


幼少期、泣いているルルを謝りながら抱き締めてくれた母親を。


『君のご両親は君を苦しませるような事はしない!』ハウスの言葉を思い出す。


そして自らの罪を思い出したのだ。


その時、地面へと二人は叩きつけられた。

運良く植栽に落ちた為、二人とも打撲程度で済んだのは幸いであるが、ハウスは暫く動けない。


手はルルを掴もうと追ってくる。

だがルルは逃げずに受け入れた。今度は罪を軽くするためではないその罪を背負う為に、想い出を悪夢へとしない為に。


覚悟を決めたルルにその手が触れると彼女の頭をそっと撫でて消えるのだった。


「お母さん、お父さん、ごめんなさい、ありがとう…」


ルルが物思いに耽っていると「ぐっ…ルル大丈夫か?」と声が聞こえる。


「それはこっちの台詞よ」


そう言って手を取りハウスの身体を起こした。


「あの手は?」


「わかんない、消えちゃったわ」


「…そうか」


何か話したそうなルルの言葉を待っていると瞬間、屋敷で爆発が起こった。


「一体今度はなに!?」


そう戸惑うルルにハウスは告げる。


「ルル、屋敷から出ていくんだ」


「はぁ!? 急になんで?」


「もうこの屋敷は安全じゃないから」


「ちゃんと説明してよ!」


「ルル! 頼む…」


ルルにはまだ言いたい事があったが我慢して話を進める事にした。


「一人でこんな夜中にあの森を抜けるの? これから何が起きるか分からないのに?」


「大丈夫、これとこれを渡しておくから」


ハウスは自らのジャケットと短剣を差し出した。


「このジャケットは君を守ってくれる、それにこの短剣はこう刀身を見れば少し先の未来が見える」


ハウスは分かりやすく実演しながら使い方を教える。


「これがあれば君は大丈夫」


「そんな大事な物もらってあんたはどうするのよ? 屋敷の中は危険なんでしょ?」


「あぁ、でも必要ないよ」


「でも…」


ルルは言いかけた言葉を飲み込み、その二つを受け取った。

全てを察しながら彼女は最後に伝える。


「ありがとうハウス」

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