その影が消える時
【登場人物】
・ハウス
レアルタに暗殺されかかったが機転を効かせて危機を脱する。
その後レアルタに決闘を挑まれ勝利する。
・レアルタ
アークに拾われ陰ながら彼を支援する。
ある日ソテリアの護衛を頼まれ半年間彼女と共にした。
亡くなったソテリアの子供の教育係を任させる。
・ソテリア
アークの妹、半年間レアルタと共に過ごした。
クライ家に嫁ぎ子供を産んで亡くなる。
レアルタの首が落ち、それを見ていたルルはあまりの衝撃に気を失い、窓から見ていたコシネロは早々に姿を消した。
ボンドはルルを部屋まで運ぶようにシャミヘ指示を出し、今度はハウスへ聞いた。
「で、これからどうするんだ?屋敷の外へ投げ捨てるのか?」
確かにハウスはこの後どうするかなど考えてもいなかった。ボンドがそうであるようにこの屋敷にいる限り死ぬ事はなく、首が落ちたレアルタは意識を失っているだけで死んではいないという奇妙な状況なのだ。
するとリリスが近寄ってきて一枚の紙を渡してくる。
「これは?」
「勝者への景品よ」
それだけ言って彼女は立ち去った。
ーーー
首を落としたレアルタは夢を見ていた。
魔女を屋敷に呼んでからの夢を…。
あの時のフィリア家は自分の事しか考えない愚かな一族となっており、アークが死んだと聞いて最初にしたのは誰が跡を継ぐのかという話だ。
誰もアークの死など気にも止めなかった。
レアルタにとって唯一の希望はソテリアの孫である【フィリア・メラキ】の存在だ。
今年十歳になったこの子をレアルタは亡くなった両親の代わりに育てている。
跡目争いはアークの三人の息子によって引き起こされた、順当にいけば長男が跡を継ぐが周りがそうはさせない。
何より死ぬ気がなかったアークは遺書を残さなかった。故に三兄弟の派閥争いが始まるのは必然であり、ある意味でそれが彼の遺言であった。
当時のレアルタは魔女から得た力でこの争いからメラキを守る事に必死だった。
結論から話すと跡目は魔女を味方につけた長男の息子【フィリア・プロテス】が継ぐ事になる。プロテスは当時十八歳の若者であり、彼の思考はアークに酷似していた。
彼は自分の地位を脅かす存在を許さなかったのだ。
自らの兄弟や叔父、自分の派閥にいなかった全ての者達が対象でメラキもその一人である。
レアルタはメラキを逃がす為に魔女と交渉をする、メラキを逃がしてくれたら代わりにある情報を渡すと。
この情報によりフィリア家は滅ぶ事になる。
彼らの屋敷は突然森に包まれ、その場にいた者達のほとんどが殺された、森へ逃げた者達は抜けられない闇を彷徨い続けやがて飢えて死んだ。
「レアルタも一緒に逃げよう」
そう言って泣きつくメラキを
「私が教えられる事は全て教えました、これからは一人で生きていきなさい」とレアルタは突き放し彼を一人森へと送る。
その十歳の小さな背中に希望を抱きながら。
ーーー
「ここか…着いたぞ」
最早息はなく朽ちた頭蓋骨のみとなった彼にハウスは話しかける。
あの後ハウスがリリスから渡された一枚の紙には住所が書いてあり、意識を戻したレアルタに頼まれたのだ「ハウス様、負けた私の願いを聞いて頂けませんか?その場所へ連れていって下さい」とその行動は彼にとって死を意味するものであったがハウスはその願いを聞き入れ現在に至る。
そして彼らが着いた場所は教会であった。
「どういったご用でしょうか?」
背中に大きな荷物を持った旅人が迷って道でも訪ねてきたのかと年老いたシスターが顔を出す。
「知り合いからここの住所を案内されて来ました」
「ではこの場所にご用ですか?」
この質問にハウスは黙ってしまう「魔女から紙を渡されたから来ました」と正直に答える訳にもいかずその場に固まっていた。
「ここでは何ですから中へどうぞ」
見知らぬ自分を優しく招き入れ、教会の中にあるベンチに二人で腰を下ろした。
この状況でもハウスは何を言えばいいのか分からず黙っていると何かを察した彼女は話を始める。
「ここは私の曾祖父が百年程前に建てた教会です、隣には墓地があり毎日色々な方が祈りを捧げにやってきます」
「様々な事情で会う事が出来なかった、その方に合わせる顔がない、あなたもそんな誰かに祈りを捧げる為に来られたのではないですか?」
まるで的外れな意見であったが、ハウスは否定せず、リリスが話してくれたレアルタの過去を頼りにある人物の名前を上げる事にした。
(レアルタの人生において重要な人物それは…)
「ソテリアさんのお墓はありますか?」
「…あなた一体何者です?」
「ソテリアは私の曾祖父の祖母にあたる人物ですよ」
「私の知り合い…というか友…でもない。
その説明は難しいのですが、私と縁があったレアルタという者が最近亡くなりました。
彼は生前ソテリアさんと深い仲にあった人物です。
彼の為にもソテリアさんのお墓があるのでしたら案内して頂けないでしょうか?お願いします!」
「今、何て言いました?その…亡くなった方の名前は?」
「レアルタという者です」
するとシスターは「まさか本当にそんな事が…」と一人で呟いたかと思えば「付いてきて下さい」と半ば強引に道案内をされる。
案内された場所はレアルタの墓である。
「これは…」
「これは私の曾祖父の墓です」
「えっ!?」
「私の曾祖父はレアルタと言います、私が幼き頃に言い聞かされました、昔お世話になった方も同じ名前であると…」
「いつか彼が来たなら家族として迎えてあげてほしいと」
「…」
「レアルタさんは最近お亡くなりになられたと仰いましたね?」
「えぇ」
「曾祖父の話では自分が子供の頃に六十を過ぎた方だったと聞いてます、そうであればその方は現在一体いくつになるのでしょうか?」
「いや、それには事情があって…」
シスターはハウスの話を手で遮り自らの話を続ける。
「あなたが嘘をついてるとは思いません、もちろん曾祖父の話も嘘だとは思ってません」
「ただ話したかったんです、曾祖父がこの教会を建てたのはレアルタさんが思っての事だと、いつかまた会える日を信じていたのだと」
ハウスは彼を家族の元に帰して役目を終えた。
その場所は温かく、陽のよく当たる場所であった。
これまで読んで頂きありがとうございます!
これにてレアルタ編は終了となります。
最初レアルタはハウスの事をよく思っていません。
ドアのノックを二回にしたり、ハウス殿と呼んでみたりと彼は敢えてそのような行動をしています。
暗殺が失敗してからはきちんと敬意をもって接している為、その行動も変化しています。
心情の変化としてハウスに決闘を挑ませグローブを投げさせました。
そして決闘を挑んだ理由はもう一つあり、レアルタの話では【忠義】がテーマになっています。
十歳の時にアークに仕え、その後はソテリア、その後はその子供、その後はその子供の子供…と長い人生を他人に費やしていたレアルタにとって最後の個としての主張をさせるべく決闘を舞台にしました。
最後にリリスを頼ったアークと相反する形となっています。
次にレアルタはリリスが屋敷に来た時からいた人物ですので、リリスとも深く関わってしまいどこまで過去を振り返るべきかと頭を悩ませ、リリスとレアルタ二人に語らせて場面を飛ばす書き方を選びました。
最後にレアルタを家族として迎えるようにと子孫に言い残して墓を残したのは屋敷から逃がしたメラキです。
メラキは屋敷を出た後にレアルタと名を偽り、彼を待っていました。自分が死んだ後も困らないよう子孫に言い伝えながら。
誰かを陰から支える人生であったレアルタには幸せになってほしいので、やっと影《陰》から解放されて家族の元に帰るというエンディングにしました。
後書きも長くなってしまいましたが、レアルタ編も無事に完結させる事が出来ました。
これも拝読して頂いてる方々のおかげです。
改めて感謝申し上げます。
この後の展開など興味を持って頂けるのであれば最後までお付き合いの程よろしくお願い致します。




