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ボストンバッグはやがて地面に落下する

作者:り(PN)
「飼えないから殺すのよ。他に理由はないわ」
 そう言って母は、わたしが見ている前で、わたしにも良くわかるようにゲージに入れた子猫をゲージごと川に沈めた。
 子猫は最初必死にニャイニャイと鳴き喚いていたが、やがてゲホッと咳き込んで、その後は声が聞こえなくなった。
 わたしが三歳くらいのときのことだ。
「やってみると結構大変なのね。手が痺れたわ」
 母は子猫の入ったゲージを回収する気はないようで、あらかじめ用意しておいた大きめの石をいくつかゲージの上に載せて、それが浮かび上がらないように細工をした。
 次に大雨が降って水位や水の流れが変わるまで、重石を載せられたゲージはその場に沈み続けているかもしれない。
 子猫の腐乱死体とともに……
 何が起こったのかよくわからず、びっくりしているわたしの手を取ると母は帰路に着いた。
 川から歩いて五分ほどの安アパートまでの比較的良く歩く道だった。
2022/07/23 16:29
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