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木星の雨音  作者: ぴいちゃん


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第90章ーーチヒロのうっかりーー

「えっ……こんな時間?」


チヒロは慌てて自分の端末を取り出し、何かを調べ始めた。


「ちょっと待って……」


画面を確認したチヒロの顔が、さらに曇る。


「どうしよう。NOAHの検疫ゲートが、もう閉じてる……」


ヘスペリア-3では、トラムによる区画間の移動も、区画間の通行も二十四時間可能になっている。


しかしへスペリア3とドッキングするまで


200年以上使われていなかったNOAHの検疫設備は古く、


二十三時から朝四時まで専門の職員が不在のため通行不能になる。


つまり――今は、門限を過ぎてしまっていた。


「私としたことが……」


「いや、それよりも……この二人。」


「特にナナコちゃんを、どうしよう」


カクンカクンと寝てしまっているナナコを見る。


チヒロは一度深呼吸をした。


チヒロは考え込んだ。


「どこかに連絡して……誰かに……」


しかし、すぐに首を振る。


「いや、連絡先もそんな人も知らない……」


「ていうか、強いて言えばそれ私じゃん」



「まずNOAHの学校のスケジュールを調べてみよう」


しばらく画面を確認する。


「ああ……明日は休みなんだ」


少しの沈黙。


チヒロは二人を見た。


そして、小さく息を吐いた。


「私の責任だもの。」


「ごめんなさい、ナナコちゃん。モーブくん。」


「私が気がつかなくて、NOAHのゲートの門限を過ぎてしまいました。」


つまり、二人は今日はNOAHには帰れません。」


「本当にごめんなさい」


「あ、本当だ。僕もなんかタブレットに夢中になっちゃってて。」


モーブが言う。


「NOAHにあるような緊急退避所みたいなのって、ヘスペリア-3にはあるんですか?」


「少なくとも近くには無いわ。」


ナナコが言う


「私、そこらへんの通路でいいですよ。慣れてますし。」


「ナナコちゃんモウブくん、今日はうちに泊まって。」


「えいいんですか?」


「えっ、はいありがとうございます。」


チヒロは二人に笑いかけた。


「明日は」


「ハル主任の工房はちょっと複雑なところにあるからモウブくんを送るわ。」


「えっ、いいんですか」


モウブが少し驚きながら答える。


「ええ、そのあとナナコちゃんにヘスペリア-3の学校も見せてあげるわ」


「わぁ。見たかったんです。」


「じゃあ、モウブくんは一番奥の部屋を使って」


チヒロは家の奥を指差した。


「私の部屋はベッドが二つあるから、ナナコちゃんは私と一緒に寝ましょう」


「はい」


ナナコはにっこりと頷いた。


「朝になったら起こすから、食堂で朝ごはんを食べて」


「それから3人でハル主任の工房に行きましょう」


「その後、私とナナコちゃんは学校の見学ね。」


「はい」


モウブが答えた。


「それじゃ、モウブくん。おやすみ」


「はい。おやすみなさい。なんか、申し訳ないです」


「いいのよ」


チヒロは自分の部屋のベッドへナナコを案内する。


「ナナコちゃんは、ここで休んでいてね」


「はい」


「今日は二人とも、大浴場に入ってるのよね?」


「入りました」


「じゃあ、私はシャワーだけ浴びて戻ってくるから。先に寝てていいわよ」


「うん……分かりました」


ナナコはベッドに入る。


「ありがとう。おやすみなさい」


「おやすみなさい」


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