第85章ーー帰路ーー
トラムの車内で、ヘスペリア-3の管制長とNOAHの船長が並んで座っていた。
「いやあ、今日はいいところに出くわしたな」
「ああ、本当だな。午前中のチヒロさんの案内も良かったし、充実した一日になったなぁ」
「そうだね」
船長はそう答えると、少し考えるように窓の外へ目を向けた。
「あと……思ったんだけど、さぎりちゃんとミオちゃんとチヒロさんユノちゃん」
「……?」
管制長が振り向く。
「ごそごそ、ごそごそ……」
船長は何やら小声で話しながら、管制長の耳元へ顔を寄せた。
しばらくして、管制長が小さく頷く。
「ああ……悪くないな」
「だろ?」
「検討してみようぜ」
二人は顔を見合わせると、何事もなかったように再びトラムの窓の外へ目を向けた。
◇
ジェットとカアは、NOAHの部屋に戻っていた。
「今日は、いろいろいいもの見れたな」
「ああ、そうだね。飯も食ったし、風呂も入ったし」
「うん。もうやることないね」
「寝るか」
「寝よう」
二人はそう言うと、寝た。
◇
シノは、少し後のトラムに乗っていた。
「今日は、婚姻の儀をやって、指輪の交換をやって、食堂でお祝いして……こんなフルコース、初めてだったわ」
シノは小さく息を吐いた。
「さすがに疲れたなぁ」
ふと、モウブとカアのことを思い出す。
「そういえば、モウブ君とカア君は? どうしてるかな……」
そう呟いたところで、シノの瞼が重くなる。
トラムの揺れに身を任せるように、シノはそのまま座席で居眠りを始めていた。
農業リング駅から乗ってきた数名の男女は、車内に入ると、いつもとは少し違う空気に気づいた。
「……あれ? 今日はなんだか、車内の空気がすっきりしてる感じね」
そんな会話を交わしながら、空いた車内を見渡した女性の一人が、ふと視線を止める。
「あ、しのさんだ」
いつも穏やかで凛としている彼女だったが、今日は珍しく座席にもたれ、深い眠りについている。
「今日はかなり忙しかったみたいだから……居眠りしちゃったのね」
その姿を見た女性は、少し微笑んだ。
疲れて眠っているシノを起こすこともなく、そっと自分が持っていた薄緑色のひざ掛けを取り出す。
そして、冷えないように優しく彼女の膝元へかけてあげた。
誰かの優しさに包まれながら、シノは安心したような表情で眠り続けていた。
何往復も




