第82章ーーいただきますーー
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さぎりとミオ、そして一行は、少し恐縮しながら、
リンの案内に従ってそのままテーブルの方へ向かった。
行列に並んでいた人たちから拍手が起こる。
「おめでとうー!」
「お幸せにー!」
「おめでとうございます!」
あちこちから、祝福の声が飛んでくる。
さぎりとミオは、何度も振り返りながら頭を下げた。
「ありがとうございます」
そんな二人を見送りながら、列の中から別の声も聞こえてきた。
「やったな、俺たちラッキーだな」
「こんなスペシャルな食堂に来られるとはな」
「うん。今日は当たりだな」
人々は笑いながら、拍手を続け配膳を待っていた。
◇
チズルとリンに案内される形で、食堂へ入る
同時に2000人収容の食堂の半分近くが埋まっていた。
さぎりとミオの一行は、大きな拍手で迎えられた。
食堂の中央。神棚の前のテーブル。
普段は他のテーブルと変わらず使用されている長テーブルには、いつものトレーに載った、いつもの食事がすでに並べられている。
そして神棚の下には、日の丸が掲げられていた。
チズルが先に一行をテーブルへ案内する。
さぎりとミオは、神棚を背にする形のお誕生日席に座った。
その末席には、先ほどの年配の男性たちもいる。
◇
シノが神棚の前に立つと、食堂がが少し静かになった。
シノは神棚に向かい、
二礼。
二拍手。
そして一礼。
静かに頭を下げる。
それから振り向き、さぎりとミオに声をかけた。
「さぎりさん、ミオさん。こちらへ」
並んで立ってもらうように二人を促し、
シノは、食堂を見渡した。
「まず、お忙しい方は、どうぞお食事を続けていてください」
「今、立ってくださっている方は、どうぞお座りください」
「お席をお探しの皆さんは、立ち止まらないでくださいね」
シノがそう言っている間にも、食事を受け取った人々が、空いている席を探して流れるように座っていく。
調理場では、調理員たちが慌ただしく動いていた。
一人前でも多く。
一人でも早く食事を受けとってさぎりとミオを祝えるように。
今日のいつもの夕食を、いつも通りに届けようと懸命に働いている。
そんな慌ただしい食堂全体を見渡すと、シノがにっこりと微笑んだ。
そして、
すぅ……。
静かに息を吸った。
その瞬間だった。
食堂の慌ただしさが、すっと収まった。
速足だった人は、自然と歩みを緩める。
食事をしていた人は、顔を上げる。
席を探していた人も、足を止めることなく、けれど穏やかにその場を整えていく。
調理員たちも、ほんの一呼吸だけ動きを止め、神棚の方へ顔を向けた。
シノが口を開く。
「皆様、こんばんは」
「私は、紫神社の宮司、シノでございます」
食堂の隅々まで届く、穏やかな声だった。
「本日、ここにいるさぎりさん、そしてミオさんは、紫神社にて婚姻の儀を執り行いました」
「そして、つい先ほど商店街の宝飾店の前で、ユノちゃんも交え、指輪交換の儀を執り行いました」
シノは、二人を見ながら微笑む。
「ヘスペリア3とNOAH、初めての婚姻となります」
食堂のあちこちから、静かなざわめきが起こった。
シノは続ける。
「そして、こうしてご縁があり、今、この場で皆さまと」
「さぎりさん、ミオさんにゆかりのある方々と一緒に、食事をいただくことになりました」
さぎりとミオが、並んで一礼する。
さぎりの胸には、小さな花束。
ミオとユノの手にも、それぞれ花束がある。
チヒロが、そっと二人に近づいた。
「預かるわね」
チヒロは、ミオとユノから花束を受け取った。
食堂には、再び静かな空気が満ちていた。
◇
シノが、さぎりとミオ、そしてユノに何かを小さくささやいた。
さぎりは、にこりと微笑む。
ミオは笑顔で頷いた。
リンがさぎりの肩に乗ってきた。
ユノは、親指を立てた。
シノが4人を見て、微笑む。
「それでは」
そう言って、手を合わせる。
さぎりも、ミオも、ユノもリンも手を合わせた。
それを見た食堂の人々も、手を合わせる。
テーブルに座っていた人も。
調理場にいた人も。
いつの間にか、食堂にいるほとんどすべての人が、手を合わせていた。
壇上の5人が、声を揃える。
「いただきます!」
続いて。
食堂にいる全員が、声を合わせた。
「いただきます!」
およそ1000人の声が、第一食堂いっぱいに響いた。




