第80章ーー食堂へーー
遅くなりごめんなざい!!
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「さてと。」
「みんな、夕飯食べに行こうか。」
店主の姉が笑う。
「そうね。私もお腹空いてきたわ。」
妹も頷く。
「私も行きます。」
おばあちゃんも、
「じゃあ、私も一緒に行こうかねぇ」
と立ち上がった。
シノも、
「では、皆さんご一緒に行きましょうかー」
と笑う。
さぎり、ミオ、ユノもそれに続いた。
宝飾店を出る。
外に出ると、先ほどまでの賑わいが嘘のように、商店街は少し落ち着きを取り戻していた。
それでも、人は行き来している。
一行は、第一食堂へ向かう道を歩き始めた。
少し早足だった。
すると、前方に白い制服を着た一団が見えた。
紫区画で一緒だったNOAHのみんな。
さぎりが気づいた。
「あ。」
そして、白い制服の一団を見ながら、
「今日の……」
と呟く。
さらに、その中にチヒロの姿も見つける。
「あ、チヒロさんもいる。」
ちょうどその声が聞こえたのか、前を歩いていた一団の中から声が返ってきた。
「あ、さぎりさん、ミオさん、シノさん!」
「お疲れ様でした!」
シノが答える。
「あらあらー。皆さん、お疲れ様でしたー。」
その声をきっかけに、一団は足を止めた。
さぎりたちも追いつく。
こうして、宝飾店から出てきた一行と、先に食堂へ向かっていたNOAHの一団が合流した。
「さぎりさん、ミオさん。あらためてめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
さぎりとミオが笑顔で答える。
そのまま、皆で第一食堂へ向かって歩き始める。
先ほどまで商店街を埋め尽くしていた人々も、それぞれの目的地へ散っていく。
その中でも、食堂へ向かう人の数は、明らかに多かった。
一行は、そんな人の流れの中を、少し足早に食堂に向かい歩いていった。
◇
エスペリア3、第一居住区。
その中心にある第一食堂は、朝・昼・夕の三食で、およそ一万二千食を提供する巨大な食堂である。
食材の多くは、ある程度加工された状態で紫区画から運ばれてくる。
第一食堂では、それらに必要な加工と調理を加え、住民たちへ提供している。
そして今。
ちょうど夕食の開店時間を迎えた第一食堂の玄関前には、日の丸と、日本連合の国々の万国旗が掲げられていた。
それらはライトアップされ、夕食を待つ人々の列を照らしている。
いつもより、少し長い行列だった。
最後尾近くでは、並んでいる人たちが前方を眺めながら話していた。
「なんか今日、並んでるな」
「ほんとだ。いつもなら、この時間ならもう中に入れてるのに」
「何かあったのかね?」
「ほら、あれじゃない?」
「ん?」
「あそこ。旗が出てる」
「ああ、本当だ」
「日の丸に日本連合万国旗」
「何のお祝いかしら?」
「さあ……」
そんな話をしているところへも列が少し延びていく。
「やっぱ結構並んでるね」
「さすがに今日は人が多いな」
その声を聞いていた、前に並んでいた男性が振り返る。
「何かあったんですか?」
商店街から来た女性が答えた。
「ああ、それなら、さっき商店街で指輪の交換があったのよ」
「指輪の交換?」
「そう。さぎりさんとミオちゃんの」
「えっ?」
「今日?」
「そうそう」
「宝飾店の前でね。シノさんも来て、皆交換式をやったのよ」
「へえー!」
「そんなのあったの?」
「私、見たかったなぁ」
「すごかったよ。人もいっぱい集まってね」
「じゃあ、ちょっと混んでるのってそれが理由かあ」
「そういうこと」
「なるほど。それで、この旗ね」
「そうそう」
「じゃあ、今日の食堂もお祝いってこと?」
「多分。旗立ってるし。」
「いいじゃない」
「せっかくだもの。今日はお祝いしながら並ぼうよ」
「そうだな」
「めでたい日なんだから、喜んで並ぶさ」
「そうそう!」
人々は笑いながら、そのまま列に並んでいた。
ライトアップされた日の丸と万国旗が、その頭上で静かに揺れていた。
◇
ヘスペリア3の紺色のつなぎを着た老人と、NOAHの白いつなぎを着た年配の男性が、並んで歩いていた。
二人とも、楽しそうに笑っている。
この年代の二人が、こうして並んで歩いている姿は、ヘスペリア3でも珍しい。
二人は、第一食堂へ向っていた。
食堂の前まで来ると、いつもより長い行列が目に入る。
紺色のつなぎの老人が、列を眺めながら言った。
「うん。少し待つかもしれないが、大丈夫かい?」
白いつなぎの男性は笑った。
「ああ、大丈夫ですよ」
「暇なんだな」
「お互い様ですよ」
二人は顔を見合わせ、また笑った。
しばらくして、白いつなぎの男性が言った。
「それにしても、今日は楽しかったな」
「ええ」
「チヒロさんが案内してくれた場所とか……」
「いろいろと、考えさせられました」
「そうだな」
「あなたの私室とかも」
「今度はそっちが招待してくれよ。」
「もちろん。」
二人は、また笑った。
そのまま、ゆっくりと列の最後尾へ向かった。




