第78章ーー余韻ーー
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指輪交換が終わり。
さぎり、ミオ、ユノは、
宝飾店の玄関でもう一度、皆に向かってお辞儀をし。
最後にシノがお辞儀をすると、拍手が止まり。
参列者もお辞儀をし、解散となった。
宝飾店の店主とその姉、そして母親であるおばあちゃんに招き入れられ、
皆、店内へ戻った。
「お二人とも、おめでとう」
姉妹と母親が拍手をしながら、四人を迎え入れる。
「ありがとうございます。なんか、こんな……」
さぎりは、まだ少し照れくさそうに答えた。
宝飾店の店主が、つぶやくように話し始めた。
「さぎりさん、ミオさん。そして、ユノちゃん。
今日は本当におめでとう」
そう言って、店の外へ目を向ける。
「まさか、こんなに人が集まるとは思わなくって……」
「いつもは私が司会みたいなことをするんだけど、シノさんはさすがというか」
「私だったら、こんな大勢の人の前で、シノさんみたいにうまく立ち回れる気がしないわ」
シノは、微笑んで答えた。
「私の仕事は、ヘスペリア3の、すべての人たちが幸せで、健康で安心であることを祈ることだもの」
少し間を置いて、シノが続ける。
「特に婚姻の関係の儀式は、大好きなんですよー」
皆が小さく笑う。
姉が。
「そういえばシノさんが居住区に来るのって珍しいですよね。」
シノは真顔になり、何かを考えるように首を傾げた。
そして
「きっと何かの巡り合わせです。」
と微笑んだ。
その言葉に、おばあちゃんが深々と頭を下げた。
「神社でも、こちらでも……今日はありがとうございます。」
そして顔を上げると、嬉しそうに笑った。
「長生きはするもんだねぇ」
◇
そこへ、向かいの花屋の店主が店内へ入ってきた。
「良い指輪交換だったね!」
「さぎりちゃん、ミオちゃん。ユノちゃん。おめでとう!」
「言い忘れててね。この花ね。水もいらないし、手入れもしなくていいよ」
「本物の花は、ヘスペリア3だと栽培が厳しいからね。」
「私が花びらや葉っぱの一枚一枚、一本一本、手作りで作って。」
「普段から、そういうのを店に揃えてるんだよ。」
「ええっ……」
「え?」
さぎりがミオとユノの花束を見つめる。
さぎりが顔を上げた。
「これ、本物じゃないんですか?」
「うん。見ても触っても、本物と区別つかないと思うよ。」
笑いながら続ける。
「今日は雑貨屋が飛び込んできてね。」
「花自体は揃っていたんだけど、花束が間に合ってよかったよ。」
「あと。」
「シノさん。こちらを紫神社に奉納させてください。」
シノが少し驚いて、
「私に……ですか?」
花屋は笑って、
「いいえ。神社にね」
「でも、シノさんをイメージして作ったので。」
「シノさんが使ってくれたら嬉しいな。」
スミレの髪飾りだった。
そしてシノがそれを受け取り、
「……では、今日はこちらに挿させていただきます。」
と髪に挿す。
「やっぱりだ、良く似合う。」
花屋の店主が、満足げに店を出ようとしたとき。
振り返り言った。
「嬉しそうな二人とユノちゃんの顔が見られてよかったよ。」
「みんなに幸せになって貰うのが花屋の仕事だからね!」
「また、うちのお店にも遊びにおいで」
花屋の店主は笑顔でそう言い店を出て行った。
◇
チヒロ、そしてNOAHから来た。
モウブ、ジェトとカーの兄弟、そしてナナコの五人もさぎりとミオ、ユノ、店へ戻っていくのを、拍手で見送っていた。
最後にシノがお辞儀をすると、すっと拍手が消え、参列者もお辞儀をした。
兄のジェトが、チヒロに尋ねる。
「これって別に、集合とかで、呼んだわけでもなく、ただ通りがかった人や、周りのお店の人が自然に集まったんですよね?」
「うん。もしかしたら、連絡をもらって来た人とかもいるかもしれないけどね」
チヒロは、店の前に集まった人々を見ながら続ける。
「だいたい、そんなところですよ」
「いい習慣ですね」
ナナコが、ぽつりとつぶやいた。
「ええ、いい習慣ね」
チヒロも頷く。
「私も時々こういう場に出くわすけど……」
少し間を置いて、チヒロは続けた。
「さぎりに、ミオちゃん。そしてユノちゃんの分まで…三つのリング」
「ヘスペリア3とNOAHでの、初めての婚姻を、皆さんに紹介できたこと」
「それに、飛び入りとはいえ、シノさんまで参加して、取り仕切ってくれたこと」
チヒロは、閉まった玄関を見つめながら
「こんなすごいの、初めて見ました」
「これが普通だと思っちゃいけませんよ。」
笑いながら言った。
「皆さんジュネス行きますか?」
「なんか…今日は俺たちちょっと暇を持て余した感じで,
なんとなくジュネスにでも行こうかって感じだったんですけど、どうする?カア」
「先に、へスペリア3の食堂に行こうか。兄貴」
ナナコも続ける。
「私もおなかすいちゃいました。」
「モウブ君は?」
「実は僕もお腹空いちゃって…。ジュネスは食後でも良いかなと」
チヒロは、思わずぷっと噴き出した。
「実は私もなんです。みんなで第一食堂行きましょうか。」
一同は笑いながら第一食堂に向かう。
「モウブ君」
「はい。」
「あの店の店主が私の彫金の師匠ね」
「今度、紹介してください。」
「ええ。もちろん!」
◇
そんな話をして歩きながら
チヒロはシノの事を考えていた。
「シノさん……。」
「普段はパタパタと賑やかで愛嬌のある人なんだけど。」
「さっきの進行はさすがだったわ。」
「まあ、そういうのは勉強や経験で何とかなるのかもしれない。」
「何よりも。」
「シノさんが壇上で挨拶を始めた時。」
「いいえ…挨拶をしようと息を吸った時。」
「それだけであの場の空気が変わった。」
「スッと拍手が止み、みんなの背筋が自然に伸び。」
「穏やかな笑顔になってた。」
「そして最後にシノさんがお辞儀をしたら。」
「自然と拍手が止み、自然にお辞儀してた。」
「私も、ここのNOAHの4人もそうだった。」
「厳かな神社でだったら理解できるけど。」
「今日みたいな状況でも…。」
「すごいわね。」
「やはり神職は何かの特殊な才能が有るとしか思えないわ。」
「これでショタ好きの特殊な性癖が無ければ良いのになぁ。」




