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木星の雨音  作者: ぴいちゃん


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70/91

第70章ーー長生きしようーー

幸運で贅沢なひと時です。


https://x.com/pochidayo

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「ぐふぇっ」


後ろでシノが変な声をだした。


「みなさん、くつろいでいてください!ちょっと支度してきまーす」


と静々と拝殿をあとにする。


裏から、ドタドタ、ガシャガシャと慌ただしい物音が聞こえてきた。


「おまたせしましたー!!」

挿絵(By みてみん)

と式の服装から、袴姿に着替えたシノが持ってきた盆には盃が重ねられていた。


「みなさんお一つづつどうぞー。」


といいシノは再び奥に。


ドタドタと戻ってきたシノの手には一升瓶が抱えられている。

挿絵(By みてみん)

「さあ、地球産の本物のお酒です!」


「日本連合の日本の静岡の酒だそうですよ。」


「400年以上続いてる酒造会社ですって。」


「さぎりさんとミオさんの門出を祝って乾杯しましょう!!」


皆がどよめく。


「せっかくだからさぎりさんとミオさんで、皆さんに注いで回ってくださいな」


地球の日本産の日本酒。


ミオも、モウブも、NOAHから見学に来ていた兄妹も、


もちろん女の子もその名を聞くのさえ今日が初めてだった。


紫区画の案内のおばあさんがぽつりと言う。


「私はかれこれ40年ぶりだよ」


「長生きはするもんだねぇ」


皆が軽くあははと笑った。


ハルとおばちゃんがヒソヒソ話をする。


「私たちの式の時は日本酒だったかねぇ。」


「いや多分果実酒だったと思う。」


「ハル主任、おばちゃん。ありがとう!!」


さぎりとミオは二人で一升瓶を抱え、ハルの盃に並々と日本酒を注ぐ。

挿絵(By みてみん)

「おお!うれしいじゃねえか。」


おばちゃんにも同様にたっぷりと。


最後に自分たちの盃に注いだ。


その時後ろから


「わ”だじのぶんーーー!!」


シノが慌てた声で言った。


さぎりとミオははっとして、シノの盃にそそぐ。

挿絵(By みてみん)

皆が笑う。


全員にお酒がいきわたり、皆を見回してからシノが言う。


杯を両手で持ったシノは、さぎりとミオ、参列者たち、そしてユノをゆっくりと見渡した。


柔らかな笑みを浮かべると、静かに口を開く。

挿絵(By みてみん)

「さぎりさん、ミオさん。本日は本当におめでとうございます。」


「実は、この紫区画の神社で執り行われた結婚式は、百年以上の歴史の中で、今回が二回目なんです。」


拝殿内がどよめく。


「過去に一度だけ行われました。その時に結婚したのは、私の父――前の宮司と母でした。」


「それから五十年以上、この神社では一度も結婚式が行われることはありませんでした。」


「ヘスペリア3全体を見渡しても、神前結婚式は年間一件あるかどうか。ゼロ件の年も珍しくありません。」


「そして今日は、なんと地球産の本物の日本酒まであります。」


「こんなにめでたい日は、なかなかありませんね。」


拝殿に集まった人々の顔に、穏やかな笑みが広がっていく。


シノは杯を少し掲げた。


「それでは。」


「地球人類の、ヘスペリア3の、NOAHの、エウロパ基地の安全と健康と繁栄を願って。」


「そして何より、さぎりさんとミオさん、お二人の末永い幸せと輝かしい前途を祝して――」


シノは満面の笑みを浮かべ、力強く言った。


「乾杯!」


「「「乾杯!」」」


皆が一斉に杯を口元へ運ぶ。


その瞬間、拝殿のあちこちから驚きの声が漏れた。


「なんだ、これ……」


「おいしい。」


「こんなものがあったんですね。」


「うまい……。」


「地球には、こんな飲み物があるんですね。」


ほとんどの人が初めて味わう地球の酒。


その芳醇な香りとやわらかな甘みは、誰の想像をも超えていた。


皆は口々に日本酒を褒め、その小さな一杯を名残惜しそうに味わっていた。

挿絵(By みてみん)

「こんなに晴れやかな日に、こんな美味しいお酒をいただけるなんて」


「さぎりさんとミオさんのおかげだねぇ」


「長生きはするもんだねぇ」


小さな神社の小さな拝殿は、祝いの声と笑顔に包まれた。

挿絵(By みてみん)

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