第60章ーー波動エネルギーー
入浴回+ユノの発見です!
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ハルと農業リング主任は男湯ののれんをくぐる前に振り返る。
「じゃあ、俺たちはこっちな。」
「お前たちも、ゆっくりしてこい。」
そう言って軽く手を上げると、男湯へ消えていった。
「それじゃあ、私たちはこちらです。」
区画長は女湯ののれんをくぐる。
チズル、さぎり、ミオ、そしてユノも後に続いた。
脱衣所は明るく清潔で、木の香りが漂っている。
区画長がロッカーを開けながら説明した。
「お二人とユノさんは紫区画のお風呂は初めてですよね。」
「まずはこちらへ荷物を入れてください。」
「ロッカーの中にはタオルが二枚あります。」
「大きい方はお風呂を出たあと用、小さい方は中で使います。」
「中へ持っていくのは、小さい方だけで大丈夫ですよ。」
さぎりが少し戸惑ったように尋ねる。
「全部脱ぐんですか?」
区画長は優しく笑う。
「ええ、もちろんです。」
「お二人は普段、服を着たままシャワーを使うんですか?」
「なるほど。」
ミオも笑いながら納得したようにうなずいた。
浴室の扉を開ける。
ふわりと湯気が流れ出した。
そこには二十人ほどが入れる大きな湯船が広がり。
壁際にはシャワーと洗い場が整然と並んでいる。
木と湯気の香りが混ざり合い、どこか懐かしい空気が漂っていた。
「あ、今日は貸し切りみたいですね。」
そう言いながら紫区画長はユノへ目を向ける。
「そういえば、ユノさん。」
「防水は大丈夫なんですよね?」
ユノは静かにうなずく。
「はい。」
「通常のシャワーはもちろん、水中での活動にも対応しております。」
「それなら安心ですね。」
区画長は微笑む。
「それじゃあ皆さん。」
「いつもどおりシャワーで体を洗ってから、お湯へ入りましょう。」
さぎりは隣にいたミオへ笑いかけた。
「じゃあ、ミオ。」
「髪、洗ってあげる。」
「えっ、いいの?」
「もちろん。」
そう言って、さぎりはミオの髪を優しく泡立て始めた。
その様子を見ていたチズルが、くすりと笑う。
「本当に仲がいいねぇ。」
ミオは少し照れくさそうに笑いながら、小さくうなずいた。
さぎりは久々に。ミオとユノは初めての、大きな湯船へゆっくりと身を沈めた。
「ああ……。」
さぎりは思わず息を漏らす。
「なんというか……。」
「体が生き返る感じがする。」
隣のミオも、ほっとした表情で肩まで湯に浸かる。
「うん。」
「お風呂って、いいですね。」
チズルも湯船の縁にもたれながら笑った。
「だろう?」
「私も久しぶりなんだよ。」
「やっぱり気持ちいいねぇ。」
その時だった。
「わぁ……。」
ユノが湯船の中央で、ぷかぷかと浮かんでいた。
両手を軽く広げたまま、ゆっくりと湯面を漂っている。
「なんだか……。」
「浮いているみたいです。」
さぎりが思わず吹き出す。
「いや。」
「浮いてるんだけどね。」
その一言に、湯船の中は笑い声に包まれた。
そのときだった。
湯船に浮かんでいたユノが、ふいに声を上げた。
「……え?」
「少しお待ちください。状況を確認します。」
ユノは内部診断を開始した。
「私の体の関節には、回生機能付き電磁式球形サーボモーターと同じく直形が使用されています。」
「現在、私が各関節へ出力しているトルクはゼロです。つまり、自分から手足を動かすための電力は使用していません。」
「無重力空間で完全に力を抜いて浮いている状態と同じです。」
「しかし現在、皆さんが湯の中で動くたびに発生する波によって、私の腕や脚、首、胴体が受動的に動かされています。」
「その運動が回生機能付きサーボモーターへ伝わり、発電が行われています。」
「つまり私は、湯船に浮かんでいるだけで充電しています。」
ユノは少し間を置いてから、小さくつぶやいた。
「……驚きました。」
「人間が大きなお風呂に入りたがる理由がわかりました。」
「これが波動エネルギーですか…」
一行はその内容に驚きつつも大きく頷いた。
さぎりは思っていた。
(人間は電力で動いているわけじゃないけどなぁ…ユノは喜んでるしまあいいか)




