第59章ーー家族ーー
最近ちょっとダラダラしてましたが、今回は大きなテーマを一つ置いておきます。
そして次回は大浴場!とユノの大発見!
からの数話はかなり大きく物語が動きます。
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「お風呂は、この先二駅目です。」
一行はホームへ停車していた農業リング専用トラムへ乗り込んだ。
先頭の客車へ腰を下ろすと、静かに発車する。
車窓の向こうでは、後ろの貨物車から大型コンテナが滑るように降ろされていた。
荷物は無人搬送車へ積み替えられ、そのまま加工工場へ吸い込まれるように運ばれていく。
「あ……。」
さぎりは思わず窓へ顔を近づけた。
「こんなふうに運んでるんだ。」
区画長がうなずく。
「ええ。」
「ほとんど自動ですね。」
「人が行うのは確認と監督くらいです。」
ミオも興味深そうに見つめる。
「見ていて飽きませんね。」
トラムはゆっくりと次の駅へ滑り込んだ。
貨物が降ろされる音が静かに響く。
再び発車すると、ほどなく車内放送が流れた。
『次は――浴場前。浴場前です。』
「着きました。」
区画長が立ち上がる。
ホームへ降りると、その先には木の香りが漂う大きな建物が建っていた。
駅から浴場へ向かう間には、東屋や木製のベンチ、テーブル、そしてきれいに整えられた石畳の道が続いていた。
建物は贅沢に木材が使われており、入口には左右に分かれた大きなのれんが揺れている。
右には『男』。
左にはえんじ色の『女』の文字が染め抜かれていた。
一行が入口へ向かって歩いていると、ベンチで休んでいた風呂上がりらしい家族の中から、一人の女の子が立ち上がった。
「あっ!」
女の子は嬉しそうな表情になると、そのままこちらへ駆け寄ってくる。
「さぎりさん! ミオさん! それにユノちゃんさんですよね!」
勢いよく立ち止まると、少し息を弾ませながら笑顔を見せた。
「この前、フリーマーケットでお見かけして……。ずっと挨拶したいと思ってたんです。!」
さぎりとミオは顔を見合わせる。
「あっ、そういえば、あの時の。」
「こんにちは。」
さぎりが優しく微笑む。
「今日はどうしたの?」
「はい! 今日は見学しようって思って、紫区画まで来ました。」
「私NOAHからの移住希望者なんです!」
女の子は嬉しそうに振り返り、東屋にいる皆を見る。
「あの、女の方2人が案内してくれてます!」
「男の子と男の人は同じ人工子宮の兄弟らしいです。」
「あの二人の女の人はヘスペリア3の本当の親子なんですすって!」
「おばあさんは農場区画在住で、若い方は第一居住リングに住んでいます。」
「男の人二人は一緒に第1居住リングにしようかと言ってます。」
「私は、農業リングに2~3日滞在して、それから決めようかと思ってます。」
「そうだったの。」
ミオは笑顔でうなずく。
「私たちも今日はお休みなの。みんなでお風呂に入りに来たところ。」
「そうなんですね!お風呂気持ちかったです!!」
女の子は目を輝かせた。
「会えて、本当に嬉しかったです!」
その声に二人の男の人、お母さんと見えてた人とおばあちゃん、がこちらへ目を向ける。
一行は微笑みながら、軽く頭を下げた。
さぎりとミオも笑顔で会釈を返す。
ユノも小さな手を振ると、女の子は嬉しそうに大きく手を振り返した。
「それじゃあ、また!」
「またね。」
一見、家族に見えた一行に見送られながら、さぎりたちは木の香り漂う浴場の建物へと歩いていった。
そのやり取りを聞いていた全員が
考え方、文化、風習、習慣はぱっと見同じなのだが。
家族観が全く違うんだなと。
と思っていた。
ミオはいつもと変わらずニコニコと笑顔だ。




