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木星の雨音  作者: ぴいちゃん


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51/62

第51章ーー新しい仲間ーー

ようやくリンの起動です。内容も挿絵もたっぷりな内容のエピソードになります!!


https://x.com/pochidayo

更新時には更新情報流しています!

よかったらフォローいただければフォロバします。


リンの起動の為にハルはさぎりに指示を出す。


「さぎり。」


「そこをもう一回きれいに拭いてから。」


「消毒してからドックを置いてくれ。」


「はい。」


さぎりは布と消毒液を持って手早く作業を始めた。


その間にハルは壁際の配電盤を開ける。


「ええっと……。」


「こっちが交流、こっちが直流」


「これが百。」


「これが二百。」


「これが千。」


「こっちが二千。」


「アンペア数は……。」


「ここが六十アンペアか。」


「安全を考えると、百ボルト五アンペアの直流だな。」


独り言をつぶやきながら配線を確認していく。


「一応サーキットブレーカーを付けておくか。」


やがてケーブルに端子を圧着していく。


さぎりが言う。


「ハル主任。こっちは出来たよ。」

挿絵(By みてみん)


「おう。上出来だ。」


出来上がったケーブルをドック設置場所から壁に這わせ。


配電盤の近くに持っていく。


「ちょっとの間、電気消えるぞ。」


厨房の照明が一斉に消える。


真っ暗になる厨房。


ハルのヘッドライトの光が配電盤を照らしている。

挿絵(By みてみん)

一本一本、丁寧に結線していった。


数分後。


「よし。」


ハルが最後の端子を締める。


照明が再び点灯した。


「ひとまずこれでいい。」


「まずはドックの電源を入れる。」


スイッチを入れる。


診断画面には朝調整した後と同じように。


異常を示す数値は一つもなく、各項目にはゼロが並んだ。


ハルは小さく息を吐く。


「さて。」


「いよいよだ。」


そう言って、ハルは箱からユノ15-2の本体を両手で丁寧に持ち上げた。


まるで眠る少女を抱き上げるように。


その姿をチズルへ見せる。

挿絵(By みてみん)

「あれ?」


チズルが首をかしげる。


「この子。」


「ユノちゃんじゃないわね。」


「ツインテールだし。」


「食堂の制服を着てるし。」


「何、この子?」


ハルが答える。


「食堂管理支援端末。」


「正式名称はユノ15-2。」


「えええ。」


「この子が食堂の管理を手伝ってくれるってこと?」


「ああ。」


「そうだ。」


チズルはしばらく小さな顔を見つめていた。


「可愛いわね。すごく。」


「それで。」


「名前は?」


「もう決まってるの?」


ハルは少しだけ照れくさそうに笑う。


「ああ。」


「まあな。」


チズルも少し笑った。


「そうかい。」


「実はね。」


「もし私に子どもができたら。」


「付けたいと思っていた名前があるんだ。」


「この子を見て思い出しちゃった。」


「何て名前だ?」


「リン。」


「ここって木星圏でしょう。」


「輪っかの世界。」


「それに。」


「この食堂には、人の輪がある。」


「だから。」


「もし子どもができたら。」


「リンって名前にしようと思ってた。」


その言葉に。


ハルとユノは同時に大きく目を見開いた。


「……え?」


ハルが思わず声を漏らす。


「いや。」


「実は。」


「ユノが…ユノと俺が付けた名前も。」


「リンなんだ。」


「えっ?」


今度はチズルが固まる。


しばらく二人は、お互いの顔を見つめ合った。


さぎりとミオも顔を見合わせる。


そして。


ミオの肩の上のユノは。


ただただ、唖然としていた。


食堂のカウンター上流側に設置されたリン用のドックは。


およそ四十五センチ四方の大きさだった。


その範囲内であれば。


リンはどこにいても非接触で充電できるようになっている。


ハルは、自分が作った小さな椅子へリンを静かに座らせた。

挿絵(By みてみん)

厨房にいる全員が、息をのんで見守る。


数十秒後。


リンのまぶたがゆっくりと開いた。


青い瞳が左右を見回す。


厨房。


カウンター。


調理員たち。


チズル。


さぎり。


ミオ。


そして、ミオの肩の上に立つユノ。


全員の姿を確認すると、リンはにっこりと微笑んだ。

挿絵(By みてみん)

「初めまして。」


「ハル主任。」


「チズルさん。」


「調理員の皆さん。」


「さぎりさん。」


「ミオさん。」


「そして、ユノ。」


「私はユノ15-2。」


「リンです。」


「よろしくお願いします。」


そう言って頭を下げた瞬間だった。


頭の重さに引っ張られるように、そのまま前へ倒れ込む。


「わっ。」


ごつん。

挿絵(By みてみん)

顔から床へ突っ伏した。


「あれ?」


その瞬間。


ユノ15-1がすぐに駆け寄る。


ユノはリンの体を起こしながら説明した。


「リンは、私の行動データ。」


「バランスデータ。」


「身体データなどを基に設計されています。」


「ですが。」


「リンは私より多くの機能を搭載しているため、重量が増加しています。」


「そのため。」


「重心の位置。」


「体重のかけ方。」


「立ち上がり方。」


「座り方。」


「すべてが私とは異なります。」


「今から、その補正を行います。」

挿絵(By みてみん)

ユノはリンの両手を取り、ゆっくり立ち上がらせた。


リンは少しふらつきながらも、まっすぐ立っている。


「では。」


「もう一度座ります。」


ユノがリンの手を引き、一歩、二歩と後ろへ下がらせる。


「ここです。」


リンはそのまま椅子へ腰を下ろした。


どすん。


勢いよく座ってしまう。


「今度は。」


「椅子からの立ち上がり方です。」


ユノはリンの両手を握る。


「足へ少し体重を移させます。」


リンは言われるままに重心を前へ移し、立ち上がる。


「もう一度。」


再び座る。


今度は。


すとん。


静かに腰を下ろすことができた。


ユノが皆へ説明する。


「現在行っているのは。」


「身体データの微調整です。」


「なるほど。」


さぎりが納得したようにうなずく。


「だからユノを付き添わせろって言ったのね。」


「ユノは歩けるようになるまで一週間くらいかかっちゃったもんね。」


「はい。」


「私の手にかかる重量などからバランスのブレを確認しています。」


ユノは微笑んだ。


それからしばらくの間。


二人は椅子から立ったり。


座ったり。


床へ寝転んでから起き上がったり。


同じ動作を何度も繰り返した。


少しずつ。


少しずつ。


リンの動きは滑らかになっていく。


「では。」


「少し歩いてみます。」


リンはユノの両手を握り、一歩踏み出した。


ゆっくり。


慎重に。


また一歩。


「バランスは問題ありません。」


ユノが歩き方を見ながら言う。


「ですが。」


「重量が増えた分。」


「関節へかけるトルクが私とは大きく異なります。」


リンはうなずきながら歩き続ける。


一歩。


また一歩。

挿絵(By みてみん)

五メートルほど歩いたころには、その足取りは目に見えて安定していた。


「では。」


「ドックまで歩いて戻ります。」


今度はユノは手を離す。


リンは一人で歩き始めた。


一歩。


また一歩。


歩くたびに重心の取り方を学び。


歩くたびに姿勢が自然になっていく。


その成長を見守る全員の表情には、いつしか笑みが浮かんでいた。


ユノは続けた。


「次は。」


「斜めに歩いてみます。」


リンは斜め前へ。


続いて斜め後ろへ。


ゆっくりと歩いていく。


ユノはその動きをじっと観察する。


「うん。」


「こちらは、ほぼ問題ありません。」


「次は。」


「横歩きです。」


リンは体の向きを変えず、横へ一歩ずつ移動する。


右。


左。


右。


左。


「こちらも。」


「大きな問題はなさそうです。」


「では。」


「斜め後ろ。」


「後ろ。」


「斜め前。」


ユノが指示を出すたびに、リンはその通りに動いていく。


どの動作も、ほとんど違和感は見られなかった。


ユノは小さくうなずく。


「ここまでは。」


「問題ありません。」


少し間を置いて。


「次は。」


「ジャンプします。」


ユノは軽く膝を曲げると。


ぴょん。


五センチほど跳び上がる。


続いてリンも跳ぶ。


ぴょん。


しかし、跳べた高さは二センチほど。


着地した瞬間。


つるっ。


「あっ。」


そのまま滑って転んでしまった。


「大丈夫です。」


ユノはすぐにリンを起こす。


「まずは。」


「ほんの少し浮く程度から始めます。」


ぴょん。


ぴょん。


ぴょん。


ほんの少し床から浮く程度のジャンプを何度も繰り返す。


少しずつ。


少しずつ。


高さを上げていく。


ぴょん。


ぴょん。


ぴょん。


「うん。」


「いいですね。」


ユノは満足そうに言った。


「では。」


「今度はしゃがんで。」


「大きく跳んでみましょう。」


まずユノが見本を見せる。


十五センチほど。


自分の身長と同じくらいの高さまで軽やかに跳び上がり、静かに着地した。


続いてリン。


軽くしゃがみ込み。


勢いよく床を蹴る。


ふわり。


三十センチほど跳び上がる。


そのまま姿勢を崩すことなく。


見事に着地を決めた。


「おお。」


厨房から小さなどよめきが上がる。


ユノが皆へ説明する。


「私は。」


「最大で2メートル程度まで跳躍できます。」


「ですが。」


「それ以上は難しいです。」


リンを見つめながら続ける。


「リンなら。」


「おそらく3メートル程度まで跳躍できるでしょう。」


「関節のトルクと瞬発力が私より大きく強化されていますので。」


リンは自分の足を見つめ、小さくうなずいた。


新しい体の力を、少しずつ理解し始めていた。


ユノがハルへ声を掛けた。


「ハル主任。」


「私たちは、しばらくここでリンの調整を続けます。」


「その間に。」


「リンの使用方法を皆さんへ説明してください。」


「ああ。」


「分かった。」


「頼むぞ。」


「はい。」


ハルは調理員たちを見回した。


「立ったままってのも何だから。」


「テーブルの方へ行くか。」


「コーヒー入れるかい?」


チズルが笑う。


「ああ。」


「頼む。」


「みんなの分もな。」


「はいよ。」


チズルと女性の調理長は厨房の奥へ向かった。


やがて全員の前にコーヒーが並ぶ。


ハルは一口飲んでから話し始めた。


「急な話で悪かったな。」


「だが、この計画はちゃんと管制の許可を取って進めていた。」


「ユノ15-2。」


「呼称は『リン』だ。」


「まず第一に。」


「リンは食堂から絶対に持ち出せない。」


「持ち出した時点で機能停止する。」


「その状態が長時間続けば。」


「安全装置が働き、自らスクラップになる。」


厨房に小さなどよめきが広がる。


「なんでそんな極端な……。」


一人の調理員が思わずつぶやく。


ハルは肩をすくめた。


「まあ。」


「アーカイブのユノのポリシーだそうだ。」


「とはいえ。」


「誰かがいたずらでもしない限り。」


「問題にはならん。」


「そうですね。」


「そんな人、このヘスペリア3にはいませんし。」


調理長たちもうなずいた。


「じゃあ。」


「大まかな機能を説明する。」


ハルはリンの方を見ながら続ける。


「この図面を見てくれ。」


挿絵(By みてみん)


「リンの一番の仕事は。」


「ヘスペリア住民の栄養管理だ。」


「リンには。」


「咀嚼機能。」


「ユノより大幅に性能を上げた味覚センサー。」


「嗅覚センサー。」


「温度センサー。」


「喉越しを評価する食道センサー。」


「さらに。」


「胃に相当する分析部で。」


「腹持ち。」


「摂取カロリー。」


「消化のしやすさ。」


「栄養バランス。」


「そういったものを数値化できる。」


「もちろん。」


「おいしい。」


「まずい。」


「そういった評価も行う。」


調理長たちが感心したように聞き入る。


「そのための補助装置が。」


「さっき設置したドックだ。」


ハルはカウンターの上を指差した。


「あそこへ。」


「今日の料理や食材を種類ごとに一人前ずつ入れる。」


「すると。」


「ドックが十分の一サイズへ加工し。」


「リン用のトレイへ盛り付ける。」


「残った食材は。」


「全部そのまま元へ戻してくれ。」


「リンはそれを食べ。」


「味。」


「香り。」


「食感。」


「喉越し。」


「腹持ち。」


「栄養価。」


「その他いろいろな項目を分析する。」


「すごいな……。」


「ちょっとびっくりだわ。」


調理長たちから感嘆の声が漏れる。


「だから。」


「夕食の献立が全部そろった段階で。」


「料理をドックへ入れてくれ。」


「その日の出来栄えが。」


「数値として確認できる。」


ハルは少しだけ苦笑した。


「ただな。」


「最初は。」


「味の構成。」


「歯ごたえ。」


「香り。」


「喉越し。」


「腹持ち。」


「そういった感覚の基準データを、まだ十分持っていない。」


「だから。」


「しばらくは調理員の皆が。」


「その日の食事の感想をリンに伝えてやってくれ。」


「今日は。」


「チズル。」


「俺。」


「さぎり。」


「ミオ。」


「調理長5人。」


「が担当する。」


「アーカイブのユノによれば。」


「2週間もあれば。」


「味覚の校正は終わるそうだ。」


ハルはコーヒーを一口飲み、話を続けた。


「そして。」


「続いての機能だが。」


「これは、リン次第の部分もある。」


調理長たちが耳を傾ける。


「リンは。」


「完全にランダムで。」


「乗員たちと一緒に食事をすることが増えると思う。」


「え?」


一人の調理長が首をかしげる。


「食べるだけじゃない。」


「一緒に話をして。」


「顔と名前を覚える。」


「顔色が悪そうな人がいたら。」


「体調を聞いてみる。」


「簡単な問診や。」


「体温測定くらいならできる。」


「もちろん。」


「必要なら医療区画へ行くよう勧めることもできる。」


ハルはリンの方へ視線を向けた。


厨房のカウンター越しには時々ユノとリンの頭が飛び出して見える。


「それだけじゃない。」


「リン自身。」


「みんなの輪の中へ入って。」


「一緒に食事をする風景を楽しみたいそうだ。」


調理長たちの表情が少し和らぐ。


「まずは。」


「食堂になじむことから始める。」


「それがリンの仕事だ。」


ハルは再び説明を続ける。


「その後は。」


「第一食堂への来場者数の予測。」


「翌日の献立を基にした。」


「食材在庫の過不足の予測。」


「必要食材の算出。」


「そういったことも行えるようになる。」


「これはまだ、シミュレート段階の画面イメージだが。こんな感じだ。」


挿絵(By みてみん)


チズルも調理長達もその内容に目を丸くした。


「食材を発注するときは。」


「リンが出した予測値を参考にして手配してくれ。」


「もちろん。」


「最終的な判断は。」


「皆の経験を優先して構わない。」


「リンは。」


「判断材料を増やすための補助だ。」


「皆の仕事を奪うための端末じゃない。」


「支えるための端末だ。」


調理長たちは顔を見合わせ、小さくうなずいた。


その言葉に、一番ほっとしたのは、長年厨房を守ってきたチズルだった。


「分かったよ。」


ハルはコーヒーを飲み干すと、軽く息をついた。


「さて。」


「説明は、だいたいこんなところだ。」


そう言って、持ってきた小型のサブモニターを取り出す。


「本当なら。」


「食堂のモニターへリンの状態を表示したいところだが。」


「その設定は、あとでやる。」


「ひとまずしばらくは。」


「このサブモニターで十分だろう。」


そのモニターには先程のハルが表示した内容が表示されていた。


「リンの状態は、この画面を見ればすぐ分かる。」


「誰か一人。」


「気に掛けてやってくれ。」


すると、チズルが手を挙げた。


「私がやるよ。」


「持ち場も近いしね。」


「ああ。」


ハルは安心したようにうなずく。


「頼む。」


「もし何か異常があったら。」


「すぐ俺へ連絡してくれ。」


「分かったよ。」


説明を終えたハルたちが厨房へ戻ると。


そこでは、ユノとリンがまだ調整を続けていた。


テーブルの上を走り回り。


ぴょん。


ぴょん。


とジャンプしては、隣のテーブルへ飛び移る。


また走って。


また跳ぶ。


二人はまるで遊んでいるようにも見えた。


挿絵(By みてみん)


だが、その一つひとつが、リンの身体制御を学習させるための大切な調整だった。


そして、その様子は。


誰の目にも、もう十分な調整が終わったように見えた。


「すげえ。さっきまでお辞儀で転んでたのに。」


厨房へ戻った皆に気がつくと、リンは姿勢を正した。


そして、改めて頭を下げる。


リンは隣で付き添っている。


「先ほどは。」


「転んでしまい、申し訳ありませんでした。」


「私は。」


「ユノ15-2。」


「通称、リンです。」

挿絵(By みてみん)

「これから皆さんにはお世話になります。」


「どうぞよろしくお願いします。」


今度のお辞儀は、とてもきれいだった。


ユノとの調整を重ねた成果が、もう現れている。


チズルがにっこりと笑う。


「うん。」


「リンちゃん。」


「よろしくね。」


「厨房は忙しいわよ。」


その言葉に、調理長たちからも温かい拍手が起こった。


「よろしく。」


「よろしくね。」


「かわいい声だな。」


「髪型も決まってる。」


「それに。」


「服装も私たちと同じじゃないか。」


リンは少しうれしそうに微笑んだ。


「ありがとうございます。」


「今日からしばらくは。」


「調整と試運転を続ける予定です。」


「皆さんには、ご迷惑やお手数をお掛けすることもあると思います。」


「ですが。」


「どうぞよろしくお願いいたします。」


明るく、はきはきとした声が厨房に響く。


その返事に、調理長たちは再び笑顔でうなずいた。


厨房に、新しい仲間が加わった瞬間だった。


休憩へ出ていた調理員たちも、次々と厨房へ戻ってきた。


そして。


見慣れない小さな少女の姿に、足を止める。


「え?」


「何、この子。」


「かわいい。」


「初めて見た。」


そのたびに、リンは姿勢を正し、丁寧に頭を下げた。


「初めまして。」


「リンです。」


「厨房の栄養管理を、お手伝いすることになりました。」


「どうぞよろしくお願いします。」


その明るくはきはきとした声に、調理員たちも自然と笑顔になる。


「よろしく。」


「かわいいね。」


「ああ。」


「これからよろしく。」


その様子を見ていたチズルと、各部門の調理長たちが声を掛けた。


「みんな。」


「この子は絶対に食堂の外へ持ち出さないこと。」


「持ち出すと。」


「自動的に機能停止する。」


「長時間その状態が続けば、自らスクラップになる。」


「いいな。」


厨房のあちこちから返事が上がる。


「はい。」


「分かりました。」


「今日からしばらくははまだ試運転です。」


「みなさん、よろしくお願いします。」


リンはもう一度、小さく頭を下げた。


パンっ!


チズルが手をたたいた。


「じゃあ。」


「まずは今夜の夕飯を。」


「献立どおりに作るよ。」


「はい。」


厨房の調理員たちが一斉に返事をする。


それぞれが持ち場へ散り、夕食の仕込みが始まった。


チズルがリンとユノへ目を向ける。


「ユノちゃんとリンちゃんは。」


「どうするんだい?」


リンが答えた。


「少し休ませていただきます。」


「今日は起動直後ですので。」


「休憩モードへ入ります。」


ユノも


「今日は消費電力が多かったので、私もここで休ませてください。」


「分かったよ。」


二人はリンのドックへ向かう。


ドックの中には、小さなテーブルと椅子が置かれている。


ユノが椅子へ腰掛けたとき、小さく声を上げた。


「あ。」


「ここ。」


「私も充電できるんですね。」


「ユノ15シリーズ共通の充電規格。」


ユノがチズルへ声を掛ける。


「チズルさん。」


「はい?」


「夕食の献立がすべてそろいましたら。」


「起こしてください。」


「それと。」


「ハル主任にも、ご連絡をお願いします。」


「ああ。」


「分かったよ。」


チズルはにっこっりと笑った


二人は椅子に腰掛けると、そのまま休憩モードへ入った。

挿絵(By みてみん)



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