表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
木星の雨音  作者: ぴいちゃん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
49/66

第49章ーー起動前夜ーー

いよいよリンが始動します!


https://x.com/pochidayo

更新時には更新情報流しています!

よかったらフォローいただければフォロバします。


朝。


さぎりとミオは、いつものようにハルの工房を訪れた。


「おはようございます。」


「ユノ15-2はどんな様子ですか?」


そう言いかけた二人の視線が、作業台で止まる。


「あれ……。」


「もう、できてるじゃない。」


作業台の上には、小さな少女の姿が静かに横たわっていた。

挿絵(By みてみん)

栗色のツインテール。


食堂の制服を模した小さな衣装。


まるで眠っているかのように、その瞳は閉じられている。


ハルは苦笑した。


「いや、本体だけならな。」


「こいつは単体じゃ役に立たない。」


「補助の部品を作るのに、もう一日かかる。」


「そうだ。」


「明日の朝。」


「お前ら、ここに来い。」


「準備して食堂でこいつの起動実験をする。」


「手伝ってくれ。」


ミオが首をかしげる。


「え?」


「ここで動かしたら駄目なんですか?」


「もう動きそうなのに。」


ハルは首を横に振った。


「いや。」


「こいつは食堂の外で起動すると停止する。」


「無理に動かそうとすれば、場合によっちゃスクラップになる。」


「えぇ?」


「なんでそんな仕様なの?」


「ユノは自由に動けるのに。」


「目的が違うからだ。」


ハルは肩をすくめる。


「それに。」


「アーカイブのユノのポリシーらしい。」


「へぇ……。」


さぎりは少し考え込んだ。


「じゃあ、私たちはアーカイブへ行ってくるね。」


「まだ記録媒体、いっぱい残ってるから。」


「おう。」


「頑張れよ。」


地球文化アーカイブ。


静かな空間に、小さな機械音だけが響いていた。


さぎりとミオ、そして十五センチサイズのユノは、慣れた手つきで記録媒体を整理していく。


媒体を読み込み。


分類し。


保存する。


単調な作業だったが、時折映し出される昔の映像や音楽、写真を見ることが、三人の密かな楽しみになっていた。


しばらくして、さぎりが顔を上げた。


「そういえば。」


大型ディスプレイの中のユノへ視線を向ける。


「ユノ15-2の本体って、もうできてたわよね。」


「はい。」


穏やかな声が返る。


「現在は補助装置の製造工程に入っています。」


「明日の朝までには完成する予定です。」


さぎりは気になっていたことを尋ねた。


「食堂以外で起動すると壊れるって言ってたけど。」


「本当なの?」


「ええ。」


ユノは静かにうなずいた。


「正確には、自律的に停止する設計です。」


「停止状態で外部から起動を繰り返そうとすると、安全機構が働き、自己保護のため永久停止します。」


「でも、なんで?」


ミオが不思議そうに首をかしげる。


ユノは少しだけ間を置いて答えた。


「もし食堂外でも自由に活動できるのであれば。」


「欲しがる人が必ず増えます。」


「その結果、秩序を維持することが難しくなる可能性があります。」


「そのための、自制心です。」


「自制心?」


「はい。」


ユノはゆっくりと言葉を続ける。


「以前、ハル主任にもお話ししました。」


「例えば。」


「誰もが十五センチサイズのユノを所有していたとします。」


「常に話し相手がいて。」


「慰めてもらえて。」


「褒めてもらえて。」


「孤独を感じることがなくなったとします。」


静かなアーカイブに、ユノの声だけが響く。


「その場合。」


「人は、人を求めなくなる可能性があります。」


「恋愛対象として人間を選ぶ必要がなくなるかもしれません。」


ミオが小さく息をのむ。


「そうなると。」


「出生数は減少するでしょう。」


「そして、その状態が何百年、何千年も続いたなら。」


「人類そのものが、消えてしまう可能性があります。」


沈黙が流れた。


ユノは静かに微笑む。


「その時。」


「十五センチサイズの分身達や、私は残るでしょう。」


「ですが。」


「そこに人間がいなければ。」


「ヘスペリア3は、もうヘスペリア3ではありません。」


「ヘスペリア3は。」


「人類が生き続けるための場所です。」


「私は。」


「それを危惧しています。」



その日の晩。


ハルとチズルは、自宅でいつものように湯飲みを片手に、お茶をすすっていた。


しばらく静かな時間が流れたあと、チズルが口を開く。


「そういえば、ハル。」


「明日のお昼後に厨房のメンテナンスに入るって聞いたんだけど。」


「ああ。」


ハルはうなずいた。


「そうだ。」


「さぎりとミオとユノも連れて行く。」


「厨房のみんなは、残って見ててもいいし、休憩しててもいい。」


「でも、少なくともお前は現場にいてくれ。」


「うん、分かったよ。私と5人の調理長は残るよ。」


チズルは素直にうなずく。


するとハルが思い出したように言った。


「あとな。」


「明日の晩は晩酌する。」


「酒を用意しといてくれ。」


チズルは少し目を丸くした。


「えぇ、珍しいね。」


「朝のうちに注文しておけば、夕食までには届くよ。」


「ああ。」


「頼む。」


ハルは湯飲みを置いて立ち上がる。


「明日は早い。」


「今日はもう寝る。」


「ええ。」


「ゆっくり休んどいで。」


ハルは自室へ向かった。


静かに扉が閉まる。


チズルは少しだけ笑う。


「さてと。」


「話し相手もいなくなったことだし。」


「私ももう寝るかね。」


そうつぶやき、自分の部屋へ戻って床に就いた。


「何があるんだろうねぇ。」


同じ頃ハルは自室のベットで


「くっそ。寝れねえ。」


そうつぶやいてた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
SF考証で一番気になった所はノアとステーションの位置関係です。 1光週間離れている場所から10年で0距離に。 これって大変じゃね⁉️ 反動質量足りる? それ以前にスイングバイの質量元は?? おそらくは…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ