第46章ーーユノのパニックーー
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翌日から。
さぎりたちの一日は、少しだけ変わった。
朝食を終えたら、さぎりとミオ、それにユノは、まず整備区画のハルの工房へ向かう。
「おはようございます。」
「おう、おはよう。」
ハルは作業台に向かい、製造中のユノ15-2の調整を続けていた。
昨日よりも増えた配線。
新しく取り付けられた小さな部品。
少しずつ形になっていく身体。
「完成が楽しみだね。」
ミオが笑う。
「うん。」
さぎりもうれしそうにうなずいた。
三人は工房を後にすると、そのまま地球記憶アーカイブへ向かった。
昨日運び込まれた大量の記憶媒体が、机いっぱいに広げられている。
モニターの中のユノが口を開いた。
「まずは、形ごとに分類しましょう。」
「内容はあとから調べられます。わかる範囲で十分です。」
「了解。」
机の上には、さまざまな形をした記憶媒体が並んでいた。
丸いディスク。
小さなカード。
中にテープが入っているような四角いケース。
薄い板のようなもの。
名前も用途もわからない。
それでも、形や大きさが似ているものを集めていくと、少しずつ種類ごとの山ができていく。
「これ、同じ種類かな。」
「たぶん、こっちも。」
ミオが見つけるたびに、さぎりが隣へ並べる。
机の上では、小さなユノが記憶媒体を抱えて歩き回っていた。
「これは、こちらですね。」
「ありがとう。」
そんな作業が、一日中続いた。
そして夕方。
最初は雑然と積み上げられていた記憶媒体は、いつの間にか種類ごとにきれいに分類されていた。
「ふぅ……。」
さぎりが息をつく。
「思ったより多かったね。」
「はい。」
アーカイブのユノもうなずく。
「これで明日からは、それぞれの規格を調べられます。」
◇
翌日。
いつものようにハルの工房へ立ち寄り、ユノ15-2の進み具合を見届けた三人は、再び地球記憶アーカイブを訪れた。
机には、昨日分類した記憶媒体が整然と並べられている。
「それでは、今日はこのカード型の記憶媒体から始めましょう。」
「対応する読み取り装置は……。」
ユノは少し考える。
「保管庫第二収納区画。」
「棚の上から三段目、奥から三つ目。」
「そこにあると思います。」
三人は保管庫へ向かった。
長い年月眠り続けていた装置が、静かに並んでいる。
「まずは電源だね。」
「あ、私が入れます。」
ユノが手をあげる。
「配電盤から電源をつなぎます。」
カチッ。
青い表示灯がゆっくりと点灯した。
「起動しました。」
「では、入れてみましょう。」
さぎりがカードを差し込む。
「あれ?」
途中で止まった。
「引っかかるね。」
「裏返してみてください。」
向きを変えてみる。
それでも入らない。
「違う装置ですね。」
その瞬間。
隣の装置に青いランプが灯った。
「こちらを試します。」
「うん。」
カチッ。
今度は最後まで吸い込まれた。
「あ、入った。」
「当たりですね。」
アーカイブのユノが静かに説明する。
「まず私の一時バッファで内容を確認します。」
「問題がなければ、地球記憶アーカイブへ登録します。」
「お二人が飽きないようにアーカイブ登録の際にざっと内容を表示しますね。」
「そして。」
「私が『次をお願いします』と言ったら、媒体に通し番号を書いて次を入れてください。」
「了解。」
読み込みが始まった。
一枚目は工場の風景が流れる。
「はい。次2番ををお願いします。」
「少しお待ちください。」
二枚目はNOAH内部らしき映像
「はい。次をお願いします。」
古い文書。
写真。
音楽。
映像。
さまざまな記録が、一つずつ読み出されていく。
そして十五枚目。
「はい、それでは――」
ユノの動きが止まった。
机の上のユノも固まる。
「……。」
「え?」
次の瞬間。
「いいいやああああああああっ!」
アーカイブ中に声が響いた。
保管庫内の警告灯が一斉に点滅する。
「こ、これダメです!」
「見てはいけません!」
「破廉恥です!」
「えっ!?」
ミオが思わず身を乗り出す。
「何が映ってるの!?」
「見ちゃダメです!」
アーカイブのユノは、即座に記録を隔離した。
机の上のユノも真っ赤になって目を押さえている。
「は、破廉恥です……。」
しばらく沈黙が流れる。
やがてユノが、小さく咳払いをした。
「その媒体は、そこのドリルで破壊してください。」
「なんでドリル? ハンマーとかじゃダメなの?」
「はい。このような記憶媒体は、ドリルで破壊することになっています。」
「なお、ドリルで記憶媒体を破壊することを『ゆーこ』といいます。」
「『ゆーこ』はよくわからないけど……わかった。」
さぎりはドリルを手に取り、カードに穴を開けた。
小さな破砕音とともに、記憶媒体は完全に破壊された。
「……今日はここまでにしましょう。」
「また明日、続きをお願いします。」
何が入っていたのか。
ユノが聴こえないほど小さな声でつぶやく。
「あのNOAHの老人…お達者なんですね。」
結局、最後まで教えてくれなかった。




