第45章ーーかくしごとーー
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NOAHのおじいさんに荷物運びを手伝ってもらい。
いったん、さぎりの部屋へ戻った。さぎりとミオとユノは。
フリーマーケットで手に入れた物は。
思っていたより多かった。
欠けたカップ。
古い布。
壊れた玩具。
識別札。
歪んだ容器。
そのほか。
何に使っていたのか分からない物まで。
「これ、どこに置くの?」
ミオが聞いた。
さぎりは。
部屋の中を見回した。
「……とりあえず、そこ。」
「そこ?」
「うん。」
「さっきも、そこって言ったよ。」
「じゃあ、その隣。」
「増えただけじゃない?」
「あはは。そうだね。」
結局。
ひとまず、それらは部屋の隅にまとめて置かれた。
ただし。
ユノが欲しがった物は別だった。
古い端末。
そして。
いろいろな種類の古い記憶媒体。
形も。
大きさも。
規格も違う。
それらを箱に詰め直し。
三人は。
地球記録保管庫へ向かった。
ユノが言う
「ひとりごとですが。」
「まず、一度ハル主任の工房に行きましょう。」
「なんで?」
「面白いものが見られます。」
「ふうん。」
重い荷物を運び。
工業リングのハル主任の工房へ着く。
扉が開く。
「おじゃましまーす。」
さぎりが言った。
返事はなかった。
代わりに。
奥の方に。
人影が見えた。
ハルだった。
椅子に座り。
何やら木材を削っている。
その机の上には。
小さな椅子とテーブル。
ミオが思わず言う。
「なんですかそれ!かわいい」
思わず作業台へ駆け寄る。
ハルは気づかなかった。
それらを前に。
ニヤニヤした顔をしていた。
「ハル主任?」
さぎりが呼ぶ。
「あ。」
ハルは慌てて
奥にある立体造型機を見た。
そして。
その立体造形機の台の上の。
骨格の中には。
小さな人工臓器が組み込まれ始めていた。
いくつもの小さな器官。
ハルが顔を上げた。
そして。
さぎり。
ミオ。
ユノ。
三人を見る。
ハルは。
少しだけ黙った。
別に。
隠していたわけではない。
ただ。
そういえば。
さぎりたちに、リンのことを話していなかった。
ハルは。
立体造形機を見る。
それから。
もう一度。
三人を見る。
まずいな。
そう思った。
さぎりが。
立体造形機の台の上を指した。
「……何、それ。」
「いや。」
ハルは言った。
「これはだな。」
「ユノのサイズよね」
ミオが近づく。
「まあ。」
「誰の?」
「それは。」
ハルが言葉を探していると。
ユノが答えた。
「YUNO-15-2です。」
ハルが。
ユノを見る。
さぎりも。
ミオも。
ユノを見る。
「……何?」
さぎりが聞いた。
ユノは。
いつもの調子で答えた。
「YUNO-15-2。」
そして。
造形機の中の骨格と人工臓器を見る。
「食堂管理小型端末です。」
「食堂管理?」
「はい。」
「聞いてない。」
「言っていません。」
「なんで?」
ユノは。
ハルを見た。
ハルも。
ユノを見る。
ユノが言った。
「おばちゃんを驚かせたいので、言えなかったのでしょう。」
沈黙。
さぎりが。
ハルを見る。
ミオも。
ハルを見る。
ハルは。
しばらく黙っていたが。
やがて。
頭を掻いた。
「ああ。」
そして。
少し困ったように笑った。
「だから、お前らも。」
三人を見る。
「ちょっと内緒にしておいてくれな。」
さぎりが。
もう一度。
立体造形機を見る。
「……これ、誰になるの?」
ハルは答えなかった。
ユノも。
何も言わなかった。
さぎりが。
二人を見る。
「そこも内緒?」
「ああ。」
「ふうん。」
「頼む。」
「まあ、いいけど。」
ミオも頷いた。
「私も。」
ユノが言う。
「私は知っています。」
「お前は黙ってろ。」
「はい。」
ハルは。
そこでようやく。
三人が持っている箱に気づいた。
「で。」
箱を見る。
「今日はなんだ?」
「あ。」
さぎりが言った。
「うん。」
ミオと二人で。
箱を持ち上げる。
「ユノに頼まれたもの、持ってきた。」
そして。
作業台の空いている場所へ。
どさっ。
箱を置いた。
ハルが眉を上げる。
その時。
工房の端末から。
声がした。
『ありがとうございます。』
三人が振り返る。
地球記録保管庫を管理する。
アーカイブのユノ。
『お疲れ様でした。』
さぎりが。
箱の蓋を開ける。
中には。
古い端末。
そして。
いろいろな種類の古い記憶媒体。
「この後、私のところ…地球記憶保管庫へ持ってきていただけますか?」
「あと。」
『私の方で、全部チェックできればいいのですが。』
アーカイブのユノは言った。
『手足がないので。』
さぎりが笑う。
「そうだね。」
『お二人とも。』
「ん?」
『手が空いた時には、ぜひ手伝ってください。』
さぎりが頷いた。
「うん。分かった。」
ミオも。
「はい。」
その時。
小さな手が上がった。
「うん。」
ユノだった。
まっすぐ。
手を挙げている。
「アーカイブユノは視野が狭いので、私が記録を手伝うことになっています。」
一瞬。
誰も何も言わなかった。
そして。
アーカイブのユノが答えた。
『はい。』
少しだけ。
嬉しそうな声だった。
ユノの本能は。
「知ること。」
「残すこと。」
である。




