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木星の雨音  作者: ぴいちゃん


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39/62

第39章 ーー胸ポケットの意味ーー

https://x.com/pochidayo

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食堂の時間は思ったより長く続いた。


エウロパ基地の勤務員たちは気さくだった。


NOAHから来た少女。


そして十五センチのAI。


どちらも珍しかったらしい。


ミオは質問攻めにされていた。


「NOAHの中ってどんな感じだったんですか?」


「学校は?」


「娯楽は?」


「本当に二百年以上飛んでたんですか?」


ミオは困ったように笑いながら答えていた。


「あはは。」


その隣では。


ユノがテーブルの中央に立っている。


『質問は一人ずつお願いします。』


『処理能力には余裕がありますが、会話能力には限界があります。』


「AIなのにそこは限界あるんだ。」


「あるんだ。」


『あります。』


食堂に笑いが広がった。


「今は文化交流教室がヘスペリア3にもありますし。」


「希望を出せば、誰でも館内に入れますよ。」


「ガイドさんもいます。」


コーヒーの香り。


笑い声。


窓の向こうの木星。


エウロパ基地の夜は穏やかだった。


その時だった。


同席していた整備員が時計を見る。


「あれ。」


ハルを見る。


「主任。」


「ん?」


「そろそろ出発の時間じゃないですか?」


ハルの動きが止まった。


「やべ。」


周囲が笑う。


「あと何分ある?」


「四十五分くらいですかね。」


「まずいな。」


ハルは立ち上がった。


「行かなきゃだ。」


「またな。」


勤務員たちが手を振る。


「気を付けて。」


「また来てください。」


「今度は泊まっていけよ。」


ミオも立ち上がった。


「ありがとうございました。」


「楽しかったです。」


さぎりも頭を下げる。


「お世話になりました。」


ユノもぺこりと頭を下げた。


『楽しい体験でした。』


『感謝します。』


勤務員たちが笑顔で手を振る。


あの整備員はまた泣いている。


調理員に


「ごちそうさまでした。美味しかったです。」


お辞儀した。


「ありがとうございました!お粗末様でしたー。」


の声を後に。


四人は食堂を後にした。


そして。


数秒後。


ハルが時計を見た。


「もっと急ぐぞ。」


「え?」


「走る。」


「え?」


「いや飛ぶ。」


基地の通路を蹴る。


身体が前へ滑る。


さぎりも続く。


ミオも続く。


無重力に近い環境だった。


歩くより飛んだ方が早い。


ユノが必死に小走りで追いかける。


『待ってください。』


『待ってください。』


『歩幅に問題があります。』


「そりゃそうだ。」


ハルが立ち止まる。


そして。


ひょい。


ユノをつまみ上げた。


『あ。』


「ひとまずここ入っとけ。」


ぽす。


左胸のポケット。


『収納されました。』


「収納言うな。」


再び加速する。


通路を滑るように進む。


ミオが笑う。


「ユノ、大丈夫?」


胸ポケットから声が聞こえる。


『問題ありません。』


少し間。


そして。

挿絵(By みてみん)

『これはみなみくんです。』


「何?」


さぎりが言う。


「みなみくん?」


『みなみくんです。』


「何それ。」


『地球文化です。』


誰も分からなかった。


ユノだけが続ける。


『肩ならゆけろぼです。』


『頭ならぱいるだです。』


「顔に背中から大の字でぶつかるのはふぇどいんです。」


『胸ポケットはみなみくんになります。』


「いまだに何でそういうか何一つ分からない。」


さぎりが即答した。


『地球文化の知識不足です。』


「そういう問題なの?」


ミオも首を傾げる。


ハルは笑った。


「俺も分からん。」


『残念です。』


『二百年以上前の重要文化です。』


「絶対違うだろ。」


通路に笑い声が響く。


そのまま四人は滑るように進んでいった。


窓の向こう。


巨大なフライホイールが回っている。


その先では。


次の氷輸送船の射出準備が進んでいた。


帰る時間が近づいていた。


ヘスペリア-3へ。


自分たちの家へ。


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