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木星の雨音  作者: ぴいちゃん


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34/66

第34章ーーユノ15-2開発承認ーー

https://x.com/pochidayo

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ユノ15-2開発承認


二体目の十五センチユノ開発計画を管制へ提出してから数日後。


ハル主任の端末が、小さく通知音を鳴らした。


ピッ。


画面を見る。


《YUNO-15-2開発計画 承認》


一瞬、目を丸くする。


「おっ!」


思わず声が漏れた。


すぐに端末を操作する。


「ユノ。」


数秒後。


地球アーカイブのユノが机の上へ小さく映し出された。

挿絵(By みてみん)

「お呼びでしょうか、ハル主任。」


ハルは嬉しそうに端末を見せる。


「通ったぞ。」


「……。」


「二体目の開発計画。」


「管制が承認してくれた。」


ユノは静かに画面へ目を向ける。


そして、小さく微笑んだ。


「よかったですね。」


「ああ。」


ハルも笑う。


「これでようやく作り始められる。」


「はい。」


ユノは軽くうなずく。


「それでは。」


空中へ手をかざす。


淡い青い光が広がり、ホログラムの設計図がゆっくりと展開されていく。


「二体目YUNO-15。設計概要をご覧ください。」

挿絵(By みてみん)

設計図には、小さなユノの全身図が描かれていた。


外装はほとんど今の十五センチユノと変わらない。


「……食堂仕様なのか?。」


「はい。」


ユノが静かにうなずく。


ハルは図面を指で追っていく。


頭部の断面図。


口腔部。


喉。


胴体。


細かな注釈がびっしり書き込まれている。


ハルの指が止まった。


「……ん?」


もう一度見る。


見間違いではない。


「咀嚼機構?」


「はい。」


「歯ごたえ検知?」


「はい。」


「味覚センサー?」


「はい。」


「鼻部匂い分析?」


「はい。」


「喉越し解析?」


「はい。」


「消化シミュレーション?」


「はい。」


「満腹度??」


ハルはゆっくり顔を上げた。


「……お前。」


少しだけ間が空く。


「食べるのか。」


ユノは少しだけ首をかしげた。


「食べます。」


「どうやってだ?。」


ユノは設計図を切り替えた。

挿絵(By みてみん)

今度は二体目十五センチユノ専用ドックの設計図だった。


横には六本並んだ透明なシリンダー。


さらに、その背後には大型モニター。


「このモニターはハル主任が調達してください。」


「このシリンダーは?」


「本日の料理を投入します。」


「投入?」


「一人前の料理をここにそれぞれ投入します。」


「十五センチユノ用の量だけを切り分けます。」


「縮小じゃないんだな。」


「はい。縮小ではありません。必要量だけを切り分けます。残りはほぼそのまま配膳用の容器へ戻されます。」


「保存パンなどの固形物の場合。運が悪い人に当たります。」


ハルは思わず笑う。


「相変わらず資源に厳しいな。」


「木星圏では当然です。」


「だよな。」


ハルは思わず吹き出した。


「まさかユノから『食べます』なんて聞く日が来るとは。」


ユノも少しだけ笑ったように見えた。


「正確には、食文化を理解、記録するための分析機能です。」


「分析ねぇ。」


「口腔内には味覚・温度・食感センサーを搭載します。」


「ふむ。」


「喉では飲み込みやすさを測定します。」


「ほう。」


「胴体内部には分析チャンバーを配置します。」


「胃じゃないんだな。」


「胃ではありません。人体の消化を模擬し、満腹度、

必要胃酸量、必要消化酵素量、消化時間、吸収率などを解析します。」


ハルは腕を組む。


「つまり。」


「チズルさんの料理を科学的に分析します。」


「怒られないか?」


「評価ではありません。」


ユノは首を横に振る。


「より多くの方が、おいしく、安全に食べられる料理作りを支援します。」


ハルは設計図を見つめた。


「なるほど。」


そこには大型モニターの画面例も描かれていた。


味覚レーダーグラフ。


栄養成分。


香り分析。


食感分析。


喉越し。


消化シミュレーション。


満腹感予測。


数字が整然と並んでいる。


「全部数字か。」


「客観的評価です。」


「なるほどな。」


さらにページをめくる。


今度は行動仕様だった。


『来場者へ挨拶』


『顔認識』


『氏名記憶』


『会話支援』


『同席許可確認』


ハルが読み上げる。


「今日は○○さんのテーブルへ行ってもよろしいですか。ってなんだ?」


「はい。」


「許可された場合、ゆけろぼまたはトレーへ搭乗します。」


「ゆけろぼってなんだ?」


「肩に乗ることです」


「なんだそれ?。」


「そういうものです。」


ユノは少し笑う。


「同席し会話。」


「はい。」


「おすすめ料理の紹介。」


「はい。」


ハルは笑う。


「そこまでやれるのか。」


「アドバイザーです。」


「食事は一人よりも、誰かと一緒の方がおいしいと言われています。」


静かな声だった。


「私は、その時間をご一緒したいのです。」


「それに。」


「私が評価している数値と、皆さんの味の感想のすり合わせをする必要があります。」


「インタビューです。」


ハルは少しだけ黙った。


そして最後の一行を見る。


『利用者が「いただきます」と発声した場合、同時に「いただきます」と発声する。』


ハルは目を細めた。


「……でも、お前。」


「はい。」


「その頃には食べ終わってるよな。」


「はい。」


「じゃあ、なんで言うんだ?」


ユノは少し考えるように視線を伏せた。


「食事を始める皆さんと、同じ食卓を囲んでいるからです。」


「食事が終わったらごちそうさま。です。」


「いいじゃないか。」


「はい。」


「そして、皆さんの様子を観察します。」


「変に多く残してる方がいたら。」


「顔色を見ます。」


「ああ。」


「手の温度センサーは体温くらいは測れます。」


「それって医療分野じゃないのか?」


「いいえ。」


「体調が悪そうな方を気にかけることは、医療従事者でなくてもします。」


「すごいな。」


「これは食堂の機械じゃない。」


ハルはコーヒーを一口飲む。


「ヘスペリア3の、新しい住人だ。」


「嬉しいです。」


「あれ?」


「腹に入れた料理はどうなるんだ?」


「女の子にそういう事を聞いてはダメですよ?」


腕を組んだハルは複雑な表情で首を傾げる


「冗談です。」


ユノは設計図の表示を切り替える。


「農業リングに。」


「有機物分解発電プラントがありますよね。」


「ああ。」


「あれの応用です。」


「なるほど。そういうことか。」


有機物分解発電プラント。


ヘスペリア3で出た不要有機物を。


ヘスペリア3の回転エネルギーにより運用されている。


様々な工程を経て。


電力を抽出する。


数十トンの有機物は。


翌日には最終的に少しのガスと少しの酸素と。


わずか両手分ぐらいの灰のような物のみになる。


「この技術を応用してます。」


「プラントで使ってる運動エネルギーはどうする。」


「端末の電力を使用します。」


「すぐに電池切れしないか?」


「工程で得られるエネルギーのほとんどを回収し、端末の電力として利用します。」


「出た灰はどうする。」


「適時自分で捨てます。」


「ガスは?」


「女の子にそういう事を聞いてはいけません。」


ハルはまた複雑な表情をして首をかしげた。


「これは冗談で言ってるのではありませんよ?」


「デリカシーと言います。」


「なんか…ごめん。」


ユノは満足した様子で続ける。


ユノは設計図を最初のページへ戻した。


「でも、まだ外観の仕様が決まっていません。」


「このままではすっぽんぽんのつんつるてんです。」


「ああ、そうだったな。」


笑いながらハルが言う。


「チズルの意見を概ね聞いてある」


「髪。栗毛のツインテール。」


「服装。食堂のチズルの服をモチーフにする。」


「声。明るくよく通る女の子の声。」


「名前は?」


「決められない。」


「だから、お前が考えておいてくれ。」


「……はい。」


「では立体造型機用の完全な設計図の作成をします。」



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