第15章 ――帰ってきた場所――
新しい展開に入ります!
第15章
――帰ってきた場所――
私はミオ。
年齢は十九歳。
今、
私は窓の向こうに広がる木星を見ている。
大きい。
とにかく大きい。
初めて見るはずなのに。
ずっと知っていた気がした。
十一年前。
私は八歳だった。
NOAHの中で生まれ育った。
NOAHしか知らなかった。
狭い通路。
古い壁。
何度も補修された配管。
時々止まる空調。
決して豊かとは言えない食事。
それが私の世界だった。
その頃の私は知らなかった。
二百年以上前。
私たちの祖先が目指していた場所が、
本当に存在していたことを。
ある日。
地球文化アーカイブから通信が届いた。
最初は誰も信じなかった。
いたずらだと思った人もいた。
誤作動だと思った人もいた。
でも。
その通信の向こうには、
さぎりさんがいた。
最初は1日。
返事が届くまで1日。
会話一回で3日
そんな通信だった。
それでも。
私たちは話した。
何度も。
何年も。
雨の話。
海の話。
犬の話。
猫の話。
カレーの話。
地球の話。
木星の話。
ヘスペリア-3の話。
そして。
さぎりさんの話。
気が付けば。
私は毎日返信を待っていた。
やがて。
量子中継器が修理された。
会話は一瞬になった。
距離だけは変わらないのに。
声はすぐ届くようになった。
十一年。
長かった。
でも。
振り返ると短かった気もする。
その十一年の間。
NOAHは帰り続けた。
壊れた設備を修理しながら。
古い船体を補強しながら。
少しずつ。
少しずつ。
木星へ。
そして今。
窓の向こうに木星がある。
二十日前。
減速が始まった。
十日前。
エウロパが見えた。
三日前。
ヘスペリア-3の光が見えた。
その時。
私は泣いた。
理由は分からない。
ただ。
帰ってきた。
そう思った。
本当は来たこともない場所なのに。
帰ってきた。
そう思った。
窓の向こうで。
巨大なリング都市が回転している。
ヘスペリア-3。
私たちの祖先が。
二百年以上前に。
本来辿り着くはずだった場所。
船内放送が流れる。
『最終接近段階へ移行します』
『全乗員は着座してください』
誰も喋らない。
みんな窓を見ている。
子供も。
大人も。
整備員も。
農業区画の人も。
みんな。
見ている。
ゆっくりと。
本当にゆっくりと。
NOAHが接近していく。
そして。
軽い振動。
ごとん。
それだけだった。
二百年の旅の終わりは。
驚くほど静かだった。
誰かが泣き始めた。
それが一人ではなくなった。
やがて船内のあちこちから。
すすり泣きが聞こえた。
私は窓の向こうを見続けた。
接続通路の向こう。
その先に。
さぎりさんがいる。
十一年間。
声だけだった人。
一度も会ったことのない人。
でも。
ずっと知っている人。
もうすぐ会える。
そう思った瞬間。
心臓が急にうるさくなった




