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木星の雨音  作者: ぴいちゃん


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14/62

第十四章 ――最後の二十センチ―

本来、ここまでが第一部です、

まだまだ続くのでお付き合いください。

検疫開始から三十一日。


ついに。


その日が来た。


ヘスペリア-3中央港湾区画。


巨大な隔壁の前に、

人が集まっていた。


整備員。


保守班。


農業区画の人たち。


学生。


食堂のおばちゃん。


子供たち。


ハル主任。


そして。


さぎり。


透明隔壁の向こうにも、

同じように人がいた。


NOAH代表団。


技術者。


家族。


子供たち。


そして。


ミオ。


誰も騒がない。


誰も叫ばない。


ただ。


待っていた。


管制官の声が響く。


『最終検疫完了』


静寂。


『生物学的危険性なし』


静寂。


『移住許可発行』


静寂。


そして。


『隔壁開放』


低い駆動音。


ゴゴゴゴゴ……


二百年以上閉ざされていたわけではない。


たった一か月。


でも。


その一か月が。


あまりにも長かった。


透明隔壁が。


ゆっくりと上昇していく。


誰も動かない。


ミオも。


さぎりも。


ただ見つめている。


隔壁が上がる。


少しずつ。


少しずつ。


二十センチ。


十センチ。


五センチ。


そして。


完全に消えた。


静寂。


誰かが拍手した。


一人。


また一人。


そして。


港湾区画全体が拍手に包まれた。


ミオは立ち尽くしていた。


目の前にいる。


量子通信じゃない。


映像じゃない。


録画じゃない。


本物。


さぎりも動けない。


十一年間。


八歳だった少女。


通信の向こうで育った子。


毎週のように話した子。


遠すぎて触れられなかった子。


今。


目の前にいる。


ミオが、

ゆっくり歩き出した。


さぎりも。


少し笑いながら歩き出した。


周囲の音が遠くなる。


拍手も。


歓声も。


聞こえない。


見えているのは。


ただ一人だけ。


あと十メートル。


あと五メートル。


あと三メートル。


ミオが笑った。


涙でぐしゃぐしゃの顔だった。

挿絵(By みてみん)

さぎりも笑った。


同じだった。


そして。


二人は同時に走り出した。


黒いポニーテールが翻る。


金色のツインテールが踊る。


港湾区画の人々が、

思わず道を開けた。


誰も止めない。


止める理由なんてなかった。


二百年。


百八十億キロ。


十一年。


その全部を飛び越えるように。


ミオが飛び込む。


さぎりが受け止める。


次の瞬間。


二人は強く抱き合っていた。

挿絵(By みてみん)

言葉が出ない。


泣いている。


笑っている。


肩を震わせている。


でも。


何も言えない。


十一年間。


ずっと。


会いたかった。


それだけだった。


やがて。


ミオが小さく言った。


『……さぎりさん』


さぎりは泣きながら笑う。


「おかえり」


ミオは首を振った。


そして。


さぎりの肩へ顔を埋めながら言う。


『ただいま』


その瞬間。


港湾区画が歓声に包まれた。


誰かが泣いていた。


誰かが拍手していた。


食堂のおばちゃんなんて号泣していた。


ハル主任は腕を組みながら、

少しだけ目をこすっていた。


木星の光が港湾区画へ差し込む。


その光の中で。


二人は、

しばらく離れなかった。


遠かった。


本当に遠かった。


けれど。


もう。


手が届く。


触れられる。


隣にいられる。


2361年。


200年以上前に木星圏目指した人々は。


ようやく。


目的地への到達を果たした。


次章からは新展開!

楽しくかけています!

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― 新着の感想 ―
そんな大げさな❗
なにやら短い言葉の積み重ねで綴られた文章は詩の様で、一寸と不思議な雰囲気です。 15からはもう少し長い文章が綴られるのでしょうか? SF考証には一寸色々あるのですけど今回はいいにゃ❗
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