第101章ーー小鳥の絆ーー
良いお話になりました!
実は僕、昔は小鳥界隈でそこそこ…w
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朝食の後。
さぎりとミオとユノは、意気揚々とジュネスへ向かっていた。
目的は、さっきチヒロたちが持っていた、小鳥の柄のマグカップを手に入れることだった。
「あれ、可愛かったもんね」
ミオも楽しそうに歩いている。
そんなとき、さぎりの端末にメッセージが届いた。
「あ、チヒロからだ」
さぎりが画面を確認する。
『ジュネスの小鳥のマグカップ、もうないかもだって』
「えーっ!」
ミオが声を上げた。
「あれ、可愛かったのに」
「でも、あのマグカップ……例の雑貨屋さんが出してたんだって」
「そうなの?」
「うん。だから、雑貨屋さんに昨日のお礼がてら、行ってみようか」
「うん、そうだね。近いし」
二人は予定を変更して、ジュネスへ行く前に、例の雑貨屋へ向かうことにした。
ほどなくして、二人は雑貨屋の前に到着した。
「おはようございます」
店に入ると、昨日の雑貨屋のお姉さんが二人に気づいて顔を上げた。
「ああ、さぎりちゃん、ミオちゃん。ユノちゃん」
「ゆうべはおたのしみでしたね」
「……」
「……」
「……」
三人は顔を見合わせた。
もう、何度も聞かされた言葉だった。
「ふふっ」
「ははは……」
「…」
三人とも、思わず苦笑する。
「それでね」
さぎりが話を切り出した。
「ジュネスにあるっていう、小鳥のマグカップなんですけど……」
「ああ、あれね」
「いただきに来ようとしたんですけど、チヒロから、もう在庫がないんじゃないかって連絡があって」
「ああ、そうなのよ」
お姉さんが苦笑した。
「なんかね、二人の指輪の交換のあと、あっという間になくなっちゃったみたいで。ジュネスからも連絡があってね」
「そうなんですか?」
「うん。できれば早く、追加で置いてほしいって」
「ははは……」
お姉さんは少し困ったような、それでいて嬉しそうな顔をした。
「あれ、手書きだから、結構手間がかかるのよね」
「あ……なんか、ごめんなさい」
「いやいやいやいや」
お姉さんは慌てて手を振った。
「それで喜んでくれてる人がいるんだから、全然いいのよ」
そして、二人に向かって笑いかける。
「あなたたち、明日また来られる?」
「はい?」
「あなたたち用のもの、作っておくよ」
「えっ、本当ですか?」
「ありがとうございます!」
さぎりとミオが、ほぼ同時に頭を下げた。
「あ、それとね」
お姉さんが思い出したように付け加えた。
「妹の宝飾店にも行ってあげて。きっと喜ぶと思うわ」
「あ、私も行くわ。」
「はい」
「うん、わかりました。行ってきます」
3人は雑貨屋を出ると、そのまま向かいの宝飾店へ向かった。
「おはようございます」
店に入ると、
「あら、さぎりちゃんにミオちゃん、ユノちゃん」
奥から、おばあさんが出てきた。
そして、三人の顔を見るなり、にっこりと笑う。
「ゆうべはおたのしみでしたね」
「……」
「……」
「……」
二人は、また顔を見合わせた。
「……もう、何回聞いたか分からないね」
ミオが小声で言う。
ユノが数えていた。
「46回目です。」
「ふふっ」
さぎりも思わず笑った。
すると、おばあさんの後ろから妹も出てきた。
「あら、来てくれたのね。ゆうべはおたのしみでしたね。」
「あらユノちゃんは今日はそこなのね。」
ユノが答える。
「『だっこちゃん』です。」
「なにそれ。」
「地球の文化です。」
「『ぱいるだ』とか『ゆけろぼ』とか『みなみくん』とか『ふぇどいん』とかホント意味が分からないわ」
「昨日はいろいろありがとうございました」
さぎりが頭を下げる。
「いいえー全然いいのよ!」
「うん。でもそれでね……」
妹が、少し困ったような顔をした。
「今朝から、同じ指輪が欲しいっていう人が、たくさん来たのよ」
「えっ?」
二人が顔を見合わせる。
「そんなに?」
「うん。たくさん来てね」
妹は苦笑しながら続けた。
「それで、これは婚姻用で、婚姻促進用ということでヘスペリア-3から支給されている材料で作っているものだから、普通の人にはお渡しできませんって説明したの」
「はい……」
「そしたらね」
妹は、二人の顔を見ながら言った。
「『じゃあ、僕たち結婚します』っていう人が……」
「え?」
「二組もいたのよ」
「…………」
さぎりとミオは、しばらく何も言えなかった。
やがて、ミオが小さく聞き返す。
「……二組?」
「そう。二組!」
おばあさんが、楽しそうに笑った。
「あなたたちのおかげで、今朝から大変なのよ」
「ええ……」
さぎりは困ったように笑った。
そして、ミオを見る。
ミオも同じような顔をしていた。
「……私たち、そんなつもりじゃなかったんだけどね」
「そうよね」
さぎりも苦笑する。
けれど、二人とも、どこか嬉しそうだった。
「実はね」
宝飾店の妹、あかりが口を開いた。
「あの小鳥のデザイン、おねえちゃんもお母さんも三人とも大好きなデザインなのよ。」
「だから、いろんなものによく使ってるんだけど……」
あかりは、少し照れたように笑った。
「実はあれね、私たちのお父さんが昔、私たちに描いて見せてくれた落書きがモチーフになってるのよ」
「お父さんが?」
ミオが目を丸くする。
「そう。今の管制長よ」
「えっ、管制長さんが?」
今度は、さぎりも驚いた。
「うん。子どもの頃にね、私たち三人が『鳥を描いて』ってお願いしたら、お父さんがその場で描いてくれたの。それが、あの小鳥のデザインの元になってるのよ」
「へえ……」
ミオが感心したように、小さく声を漏らす。
あかりは少し遠くを見るような表情になった。
「最近、ヘスペリア-3では婚姻率が落ちてるっていう話があってね。お父さんも『なんとかしなきゃなあ』なんて言ってたんだけど……」
そこで、あかりは二人を見る。
「まさか、こんな形で、お父さんの昔の落書きがきっかけになって結婚する人が出てくるなんてね」
「…………」
さぎりとミオは、顔を見合わせた。
昨日、自分たちが交わした小さな指輪。
それが、ヘスペリア-3の人たちの心を動かしている。
そして、その指輪のそばにあった小鳥のデザインにも、そんな昔からの物語があった。
「なんだか……すごいですね」
さぎりが、ぽつりと言った。
「うん」
ミオも頷く。
「ただの小鳥じゃなかったんだね」
「そうなのよ」
あかりは嬉しそうに笑った。
「私たちにとっても、大切な小鳥なの」
昨日、自分たちが交わした小さな指輪が、思いもよらないところで、誰かの背中を押している。
ヘスペリア-3の中で、そんな小さな変化が、少しずつ広がり始めていた。




