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木星の雨音  作者: ぴいちゃん


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100/101

第100章ーー学校ーー

https://x.com/pochidayo

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「まあ、よく来てくれたな、モウブくん」


「えっと……これから、ざっとやってもらうことを説明するが……。チヒロとナナコちゃんは、どうする? 聞いていくかい?」


チヒロは少し考えると、首を横に振った。


「いえ。このあと十時から、ヘスペリア-3の学校の学長と会う約束をしてるんで。今日のところは遠慮しときます」


それからモウブのほうへ顔を向ける。


「モウブくん、何を教わったか、あとで教えてね」


「はい」


「じゃあ、ナナコちゃん。行きましょうか」


「はい、わかりました」


ナナコは素直に返事をすると、チヒロの後について工房を出ていった。


「さて、じゃあ行きましょうか。道案内がてら、学校まで連れていくわね」


「はい」


ナナコはチヒロの後について歩き出した。


二人は、先ほどまでいた第一食堂付近の駅へ向かった。


駅からトラムに乗り込む。


そこは無重力空間を走るトラムだった。


やがて無重力トラムを降りると、二人はエレベーターへ向かった。


エレベーターに乗り込み、無重力区画から下へ降りていく。


しばらくして扉が開く。


二人は先ほどまでいた第一食堂付近の駅へ戻ってきた。


挿絵(By みてみん)


「ここから一駅よ」


チヒロが言った。


「はい」


二人は再びトラムに乗り込む。


一駅。


ほんの短い移動だった。


やがてトラムが停止し、扉が開く。


ナナコが降り立った瞬間、その目の前に広がった光景に、思わず足を止めた。


そこには、巨大な敷地が広がっていた。


幅、約二キロ。


奥行き、約一キロ。


ヘスペリア-3の内部に設けられた、ひとつの巨大な教育施設だった。


建物群は低層で、周囲には広い空間が確保されている。


学校という言葉から想像するものとは、少し違っていた。


ひとつの建物ではない。


まるで、小さな街そのものだった。


「これが……学校?」


ナナコが呟く。


チヒロはその反応を見て、少し笑った。


「そう。これが、ヘスペリア-3の第一学校よ」


「広いんですね。本当に広い……」


ナナコは、目の前に広がる学校の敷地を見渡した。


「これじゃ、目的地まで行くのにも時間がかかりそう」


「そうね。だから、一応こういう広いところの移動用で、学校の中にはバスも走ってるのよ」


チヒロがそう言って、少し先の通路へ目を向けた。


「ほら、来た。あれ」


「え?」


ナナコもチヒロの指差す方向を見る。


すると、開放された車体の乗り物が、ゆっくりと二人の前を走ってきた。


屋根はない。


挿絵(By みてみん)


車体の両側には腰ほどの高さの手すりが設けられ、その内側には長いロングシートが向かい合うように配置されている。


座っている学生もいれば、手すりにつかまりながら立っている学生もいる。


「何あれ……面白い」


ナナコの目が輝いた。


「うん。ヘスペリア-3でも、学校の中か農業区画で使われてるぐらいかしら。あ、工業区画にもあるわね」


「そうなんですか?」


「農業区画では、農作物を移動させるために使ってるの。工業区画では、時々大きな機械を移動するときに使われてるわ」


モビリティは二人の前を通り過ぎると、少し先に設けられた停留スペースへ滑るように入っていった。


「この学校の中だと……確か四台あったわね」


チヒロが言った。


「四台も?」


「ええ。敷地がこれだけ広いからね」


ナナコはモビリティをじっと見つめていた。


「……乗ってみたいです」


「ふふっ」


チヒロは、そんなナナコを見て笑った。


「じゃあ、乗ろか」


「はい!」


二人は停留スペースから次の便に乗った。


「この形のバスは、多分ヘスペリア-3全体で百台ぐらいじゃないのかな」


チヒロが車内を見渡しながら言った。


「百台もあるんですか?」


「ええ。ただ、ベースになっている車両は同じなんだけど、使われる場所によって少しずつ形が違うのよ」


「形が?」


「そう。例えば農業区画で使われているものは、こんな手すりなんか付いてないわ」


チヒロは、二人の周囲にある手すりを指した。


「人を乗せる必要がないからね。荷台だけのシンプルな形になっていて、農作物を積んでトラムの駅まで運ぶの。そっちは『トラック』って呼ばれてるわ」


「トラック……」


「そう」


ナナコは興味深そうに頷いた。


「じゃあ、工業区画では?」


「工業区画のものは、もう少し特殊ね」


チヒロは少し考えてから続けた。


「荷物を吊り下げるための小さなクレーンが付いているの。そっちは『ユニック』って呼ばれてるわ」


「ユニック……?」


「ええ。大きな機械や、普通の荷台には載せにくいものを運ぶときに使うのよ」


「同じバスが、いろんな形になるんですね」


「そういうこと。ベースになる車両は同じでも、人を運ぶのか、農作物を運ぶのか、機械や荷物を運ぶのかで、必要なものが違うでしょう?」


「なるほど……」


ナナコは感心したように車内を見回した。


「じゃあ、今乗ってるのは人を運ぶためのバスなんですね」


「そう。学校ではこれが一番使いやすいのよ」


そう言って、チヒロはロングシートを軽く叩いた。


「立って乗る人も多いし、座って移動することもできる。学校の中は広いから、こういう形がちょうどいいの」


ナナコは嬉しそうに笑った。


「なんだか、もっと乗っていたくなってきました」


「ふふっ。まだ目的地には着いてないから、しばらく乗っていられるわよ」


「やった!」


挿絵(By みてみん)


ナナコは嬉しそうに外へ目を向けた。


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