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平和国家ユートリア ―人類の終着点―  作者: Kk


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第八十話 崩される

◆アルマ


なんだ……。


これは……。


アルマは。


理解できなかった。


ヴィクトールですら。


固まっている。


ヴィクトールが怒鳴る。


「何をしている!!!!」


顔を背ける。


だが。


ルミナスが。


さらに怒鳴った。


「背けるなぁぁぁ!!!!」


ヴィクトールがびくりと震える。


ルミナスは叫ぶ。


「性交は神聖なるものだ!!」


「お前が生まれたのも性交だ!!」


「それを穢らわしいものとして目を背けることは!!」


「許されない!!!!」


アルマは。


もう意味が分からなかった。


だが、ヴィクトールは。


少し気まずそうに。


男女を見ている。


すると。


ルミナスが不気味に笑った。


「おや?」


「あれだけ人を殺しておいて」


「あれだけ臓物を見てきたはずなのに」


「男女が交わるのは恥ずかしいのですか?」


ヴィクトールの顔が歪む。


ルミナスが続ける。


「処女ですね?」


空気が凍る。


「貴様ぁぁ……!!!!」


ヴィクトールが怒る。


だが、違う。


今までと。


怒り方が。


違う。


そこに。


気高さはなかった。


ただ。


感情だけが剥き出しになっていた。


ルミナスが静かに言う。


「見なさい、ヴィクトール」


「あれが」


「人の本当の欲です」


男女が。


互いへ溺れていく。


ヴィクトールは。


呆然と見ていた。


ルミナスが続ける。


「どうですか?」


「男女の欲がぶつかるのは」


「これが人の根底にある欲」


「人類を増やす行為です」


アルマは言葉を失う。


ルミナスはさらに言った。


「あなたが行っている戦争は」


「人類を減らす行為」


「本来の欲と真逆の行為だから」


「間違えた欲を求める」


「そんな居場所を求めてはいけません」


暴論。


だが、なぜか。


刺さる。


ルミナスが両手を広げた。


「さぁ、ヴィクトール」


「あなたも解放しなさい」


「本来の欲を!!」


その瞬間。


ルミナスが。


服を脱いだ。


「な……!?」


ヴィクトールが反射的に目を背ける。


ルミナスが笑った。


「おや?」


「あの“世界最強”が」


「この程度で目を逸らすのですか?」


ヴィクトールが何か言おうとする。


「ちが……」


その瞬間。


ルミナスが。


口づけした。


……!?


ヴィクトールが慌てて突き飛ばす。


「貴様!!」


「今すぐ殺す!!!!」


怒号。


ヴィクトールが攻撃態勢へ入る。


だが。


ルミナスは。


両手を広げたまま。


静かに言った。


「もう」


「偽りの自分から解放されなさい」


ヴィクトールが。


ハッとする。


周囲を見る。


兵士たち。


誰もが。


呆然と立っていた。


だが。


その目はもう。


尊敬ではない。


まるで。


子供が何をするかわからない。


そんな状況を見守る親の目だった。


ヴィクトールが。


もう一度ルミナスを見る。


そして。


小さく呟いた。


「確かに……」


「私は……」


「ただ仲間を殺しただけなのかもしれないな……」


アルマの顔色が変わる。


ヴィクトールが。


ゆっくり。


服へ手をかけた。


そして。


ルミナスの方へ歩き出す。


「ヴィクトール様!?」


アルマが叫ぶ。


だが。


その声はもう。


ヴィクトールへ届いていなかった。

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