表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平和国家ユートリア ―人類の終着点―  作者: Kk


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/91

第八話 壊れている

◆エルナ


私たちが離れてすぐ、後ろで爆発音が響いた。


レイナ……シオン……


胸の奥で何かが軋む。


だが足は止められない。


「……急いで離れた方がいいでしょう。エルナ」


ルークが淡々と言う。


「『オーバードライブ』」


私は二人を抱えようとする。


その瞬間。


「エルナ、ご安心を」


「また戻ってきますよ」


「彼女は」


「……?」


全てを見透かしたような発言。


「外を見れば」


「分かるでしょう」


「この世界がどれだけ」


「“壊れているか”」


ルークは呟く。


後ろでは巨大な爆発が起きていた。






◆レイナ


どれくらい歩いただろうか。


戦場の音はもう聞こえない。


静かすぎる。


……逃げた。


その事実だけが。


遅れて心に落ちてくる。


「……お姉ちゃん」


小さな声。


シオンが目を開けていた。


「ここ、どこ?」


普通の声だった。


さっきまでの異常さが。


嘘のように消えている。


「さっきの、覚えてる?」


「うん。いっぱい壊した」


悪びれない。


まるで日常の出来事のように。


この子は……


視線の先に村が見えた。


小さな集落。


「……あれ、村じゃない?」


「行こう」


今は考えるより。


休む場所が必要だった。


村の中は静かだった。


だが、その静けさは安心ではない。


怯えだ。


「おや……お嬢ちゃん」


「ケガをしているのかい?」


老婆が近づいてくる。


「手当をお願いできますか」


「……こっちへおいで」


老婆に案内され、家の中へ入る。


薄暗い部屋。


老婆はシオンの傷に手を当てた。


すると。


傷がゆっくりと塞がっていく。


回復の能力者。


こういう場所にも……


私は静かに外へ出た。


視線を感じる。


兵士だ。


「おい、こんなところに綺麗な女がいるとはな」


「……」


「服を脱げ。楽しませろ」


周囲の村人は目を伏せている。


助けない。


できないのか。


……なるほど。


この村には老人しかいない。


若い男は兵士へ。


女は消耗品。


兵士の体格は大したことはない。


殺せる。


「いいけど」


「ん?」


「その前に、あなたが脱いで」


「はは、話がわかるじゃないか」


兵士は剣を置き、服を脱ぐ。


その瞬間。


剣を拾う。


「なっ……」


心臓を一突き。


終わりだ。


「兵士様ぁぁぁ!!」


村人たちが叫ぶ。


一気に空気が崩れる。


混乱。


怒号。


恐怖。


「今の、見てたでしょ?」


私はただ問う。


だが誰も答えない。


老婆が外に出てくる。


その瞬間。


状況を見て崩れ落ちた。


「……ああ、なんてことを……」


ナイフを取り出し。


自分の首を切った。


「おばあちゃん……?」


血が地面に広がる。


村の空気が完全に壊れる。


逃げ惑う村人。


叫び。


崩壊。


そのとき。


「お姉ちゃん?」


シオンが立っていた。


「おばあちゃん」


「死んじゃってるよ?」


「……」


「みんな、苦しそうだね」


首を傾げる。


そして。


「私が殺してあげようか?」


自然に言った。


私は村を見渡した。


人の流れ。


建物の配置。


逃げ道。


すべてを確認する。


「……」


兵士を殺した。


情報は漏れる。


この村はもう“壊れている”。


「……大丈夫。私がやる」


指を鳴らした。


巨大な爆発。


一瞬。


静寂。


村が消えた。


音も、抵抗もない。


ただ一瞬で。


世界が空白になる。


風だけが通り抜ける。


その音だけが、やけに大きい。


シオンがぽつりと呟く。


「……きれいになったね」


レイナは何も答えなかった。


ただ一つだけ理解していた。


世界はとっくに壊れている。


村にはもう。


誰も立っていなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ