第七話 抱きしめる
◆シオン
生まれたときから兵器だった。
能力者だから。
両親は喜んだ。
能力者だから。
でも。
周りに人は集まらなかった。
能力者だから。
感情は、少しずつ消えていった。
そして、十歳で初めて負けた。
もう負けたくない。
次も負けそうになる。
胸の奥で、何かが燃える。
これが、最後の感情。
もう負けない……!!
サモン!! 全部、壊して!!
……パチン
「え?」
次の瞬間。
サモンの巨体が弾けた。
砕ける。
潰れる。
消える。
一瞬だった。
「……まだ!!」
魔法陣を展開する。
サモンが、再び現れる。
「やっちゃえ!!」
血が噴き出す。
視界が揺れる。
それでも。
負けない!!
サモンが、レイナへ向かう。
音が、鳴る。
……パチン
また。
次の瞬間、サモンは跡形もなく消えた。
「なんで……」
足が震える。
それでも。
「勝つしかないの……!!」
魔法陣を。
描けない。
血が溢れる。
力が、抜ける。
「……まだ……ま……だ……」
意識が、落ちかける。
そのとき。
「もういいよ、シオン」
抱きしめられた。
あたたかい。
やわらかい。
痛くない。
……なんで?
こんなの、知らない。
体の奥が、じんわり熱い。
苦しい。
なのに。
離れたくない。
初めて、そう思った。
視界が滲む。
涙が、止まらない。
「……あぁ……」
声にならない声が漏れる。
「うぁぁぁぁぁぁ!!」
シオンは、泣いた。
初めて。
人間のように。
◆レイナ
サモンは倒した。
なぜこんなことをしたのか。
分からない。
でも。
身体が、勝手に動いた。
そのとき。
「こいつらを殺せぇぇぇ!!」
怒号が響く。
敵兵が迫る。
だが、距離はある。
シオンに当たらない。
レイナは、静かに指を鳴らした。
◆バルゼイン王国・司令部
「中心部はどうなった?」
「現在、ガルムが交戦中とのことです」
「あの拳の能力者か……」
その瞬間。
轟音。
地面が揺れる。
「何事だ!!」
「中心部で巨大な爆発!!」
窓を見る。
その先にあったのは。
「……なんだ、あれは」
中心部が、消えていた。
黒く焼けた大地だけが、残っていた。
◆レイナ
何もない。
音も、匂いも、命も。
ただ、黒い地面が広がっている。
「……お姉ちゃん、強いじゃん」
シオンが、かすかに笑う。
そのまま、目を閉じた。
静かな寝息。
ただの、子供だった。
レイナは見下ろす。
軽い。
あまりにも、軽い。
こんなものを……兵器に。
歯を食いしばる。
ルークは、この子を捨てた。
視線を落とす。
小さな体。
温もり。
守る。
そう決めた。
レイナは、シオンを抱き上げる。
そして。
歩き出す。
どこでもよかった。
この世界から、離れるなら。
その足は、もう止まらない。
レイナは、一度も振り返らなかった。




